軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3「祐介くん超ピンチなんじゃね?」③

佐渡祐介は、両手両足を鎖で繋がれ市中引き回しの刑に処されていた。

罪状は、魔族と繋がっていたことと、王女ベアトリス・ブレスコットを辱めようとした罪だ。

異世界から召喚された勇者に民は期待していたが、それだけに裏切り者として祐介の扱いは最悪だった。

大人も子供も、祐介に向かい石を投げる。

魔力が封じられている彼は、石が当たり血を流す。時には膝をついてしまうが、騎士団長ランドルによって鞭を打たれ立ち上がらせられてしまう。

その都度、民から笑いが起こる。

――あまりにも不愉快な光景だった。

これからひとりの人間が処刑されようとしているのに、まるで娯楽でもはじまったとばかりの雰囲気だ。

「――けっ、これだから人間は」

王女ベアトリスのお付きの褐色メイドソーニャは、実は人間ではない。

魔王四天王である獣王ヴォールクより命じられて、ブレイバーズ王国に潜入しているダークエルフだ。

男女問わず綺麗どころを侍らすことを好むベアトリスに気に入られてメイドとなったことで、彼女の行いは魔王軍に報告されていた。

また、ソーニャは由良夏樹と面識があり、何度か言葉を交わしたことがある。魔族であることもバレていたが、彼にとってソーニャなど興味の対象ではなかったようで、密告されることも、殺されることもなかった。

ソーニャは、勇者を恐ろしい存在だと考えていたが、佐渡祐介は違った。

年頃の青年だった。

先代勇者のように恐怖と殺戮を撒き散らす呪いのような男ではない。

なによりも、人間よりも魔族の方がいいと平気で言う変わり者だ。

挙げ句の果てには、王女ベアトリスに「息が臭い」と言い放つ始末。

――ここで殺されるには惜しいと心底思った。

助けたいが、ソーニャは身動きができない。

王国最強の騎士である騎士団長ランドルは、魔剣を所持する騎士だ。

種族としてのスペックだけならばソーニャの方が上だが、魔剣を振るうランドルは魔族でも名が轟く実力者だ。

観衆の中、自らの正体をばらす真似をして、追われることになれば自殺行為だ。

ソーニャは、ベアトリス付きのメイドであるため、扇子を広げて高笑いを続ける彼女の背後に控えていることから、祐介までに距離がありすぎた。

そうこうしている内に、城下町の広場に設置されたギロチンの横に、祐介が立たされた。

騎士団長ランドルとベアトリスがギロチンの前に立ち、声高々に宣言する。

「この男は、勇者としてこの地に召喚されながら魔族と通じ、わたくしを辱めようとした極悪人です! わたくしの身は、亡き先代勇者様に捧げているのに、あまりにも酷い!」

ベアトリスの涙ながらの訴えに、観衆から非難と罵倒の声が上がる。

さすがに祐介の近くに王族がいるため、石が投げられることはない。

そもそも、ベアトリスが配下を使って民衆に石を投げるように誘導していたのだ。

「我が国の王女を辱めた罪! 魔族と繋がっていた罪はあまりも大きい! そこで、この異世界人をこの場で断罪する!」

勝手なことを、とソーニャは思う。

呼び出しておいて、不必要なら殺す。

人間は命の扱いが雑すぎた。

こんな扱いばかりしているから、先代勇者を本当の意味で味方にできなかったのだ。

「罪人よ、何か言いたいことはあるか?」

「あるとも」

「ならば言うといい」

ランドルに睨まれた祐介は臆することなく、目を背けない。

初老とはいえ、体格が良く威圧感があるランドルを睨みつけることさえする祐介は、大きく息を吸い言葉を発した。

「あなたたちはこれでいいのか?」

しん、と民衆が静かになる。

「人間と魔族が戦っている中、あなたたちは処刑を楽しんで見ているだけだ。まるで命を奪い合っている自覚がない!」

祐介は続けた。

「断言しよう。あなたたちでは魔族に勝てない!」

「なぜだ!?」

民衆の一人が叫んだ。

「あなたたちがどれだけ日焼けをしても、ダークエルフの褐色の肌は再現できない!」

「――は?」

「あなたちがどれだけ頑張って耳を引っ張ってもエルフにはなれない! 人魚にもなれない、ラミアにもなれない! 獣耳を生やすことさえできない! すべてにおいて、魔族に劣っている!」

「え? いや、あの」

「僕だって呼ばれるなら魔族側に勇者として呼ばれたかった! エルフさんダークエルフさんをはじめとした魔族ハーレムを築きたかった! それだけが、心残りだ!」

民衆は呆気にとられて言葉がなかった。

これから処刑される男の最後の言葉とは思えなかったからだ。

ソーニャは爆笑しそうになったが必死に耐えた。

「聞いたか、民よ! この男は、魔族崇拝者だ!」

「あ、ついでに言っておくと、このベアトリス王女は息が臭い!」

ソーニャはもう助けようと決めた。

ここまで根性のある男は見たことがない。

だが、騎士団長ランドルの方が早かった。

「ランドル! この男を殺しなさい! もう処刑などどうでもいいわ!」

「かしこまりました! 死ね、異世界人――め?」

魔剣を抜いたランドルが剣を振ろうとした刹那、この場を赤が支配した。

民衆が斬り裂かれ、バラバラになる。

即死した者はそのまま倒れ、即死できなかった者は何が起きたか分からず唖然としていた。

そして、祐介を殺そうとしたランドルは魔剣を抜いた姿で、縦に両断されていた。

どしゃり、と左右に嫌な音を立てて倒れると、血を内臓を撒き散らす。

「いやぁああああああああああああああああああああああ!」

ベアトリスが叫んだ。

その叫びは、肉体関係があったランドルが目の前で酷い死に方をしたせいか。それとも、自身の両腕を斬り落とされていたせいか。

ソーニャはこの隙を見逃さなかった。

地面を蹴り、ベアトリスの鳩尾を蹴り飛ばすと、祐介の枷を忍ばせていた魔剣で斬り解放する。

「な、なんで」

「話は後だ、今は逃げるぞ!」

ソーニャは祐介を抱き抱えると、大きく跳躍して逃げ出した。

「まさかのお姫様抱っこに、胸の高鳴りを感じちゃう!」

「お前余裕あるな!?」