作品タイトル不明
52「他の人たちの動きなんじゃね?」
「春子さん!」
「誠司さん!」
綾川誠司は、離婚して以来、会うことはもちろん、連絡さえしていなかった元妻由良春子と再会した。
だが、決して喜ばしい再会ではない。
「……こんな夜分に申し訳ありません。杏のことでまたご迷惑をかけることになるなんて」
「謝罪なんていいんです。積もる話もありますが、まずは杏ちゃんを探しましょう」
「ありがとうございます」
涙ぐむ誠司に春子が優しい声をかける。
離婚した関係ではあるが、愛情がなくなって離婚したわけではないのだから。
「夏樹が学校の方を見に行ってくれています。一登くん、覚えているかしら。彼も河川敷を探してくれるそうです」
「……一登くんのことはもちろん覚えています。杏をいつも気にかけてくれて、彼まで力になってくれるなんて感謝しかありません」
「そして、こちらが、我が家に滞在している太一郎さんとリヴァ子ちゃんです。ふたりと、他の家族も杏ちゃんのことを探してくれていますから、きっと見つかりますよ」
「……太一郎さんまで……、リヴァ子さんもどうもありがとうございます!」
誠司は思いがけず太一郎ことサタンと再会したことに驚いている。
「なに、困ったときはお互い様だ。さくっと娘さんを見つけようじゃないか」
「僕も若い子の代表として行きつけの場所があるから、そこら辺を見て回ろうかな」
サタンとリヴァイアサンは、夏樹が中学校で杏を誘い出そうとしていることを知っている。
ふたりは、新たな神々に関わるつもりはないので、春子と誠司を中学校から遠ざけることを役目にしている。
ここにはいないが、ジャックとナンシーは宇宙船に乗り、夏樹が力を出すのであれば宇宙的な結界で中学校を覆う役目のため、空にいる。
銀子は、父のもとに向かい、もしかしたら向島で大きな霊的衝突が起きる可能性があると忠告に。
小梅は、水無月家に銀子と同じく事情を話に向かっている。また、可能であれば、天照大神の協力を取り付けようとしていた。
――なお、夏樹の希望により、中学校に杏以外の神や魔族が来ても素通りさせるようにお願いされている。
当初は、小梅はもちろん、みんなが反対したが、夏樹はおそらく異世界で戦うことになる神と魔をひとりでも殺しておきたいと考えていた。
ただし、杏に関しては、決めかねているらしい。
無理もない。
いくら義理の妹であったことなど忘れるほど、どうでもいい存在だったとしても、一度は義父として優しく可愛がってくれた誠司の娘だ。
殺しておしまいにはならない。
誠司が悲しむ結果は、夏樹は望んでいないのだ。
同時に、誠司は父親として杏にどんな形でも生きていてほしいと願うだろうが、彼女が一線を越えてしまった場合は誠司のことは忘れ、手にかけることも視野に入れている。
今まで戦ってきた神や魔族、鬼と違い、なんともやりにくい相手だった。
そんな夏樹をサポートするために、それぞれ動き出していた。