軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

50「面倒なことを聞いた気がしね?」①

「す、すまない、由良殿。チェンジとはどういう意味だろうか?」

老人が少し動揺しながら、夏樹に尋ねてきたのではっきり言っておいた。

ここで監視を断るのは得策ではないだろう。

知られたら困ることはあるが、仮にグレイと天使の存在がバレても都では融通が利かないだろうし、なんなら襲いかかりそうだ。ジャックたちはさておき、小梅の場合はかなり力を持っているので都程度なら消し飛ばされてしまう可能性がある。それは望まない。

第一印象のよかった澪ならば、まだ安心できるという判断だった。

「クラスメイトだから監視しやすいのはわかるんですけど、都さんとは相性が悪いというか、突っかかってきた人だし、できたらお話のわかるお姉さんのほうが助かるんですが」

「――ふ、ふふふふ」

夏樹の発言に、笑い声をもらしたのは当主である茅だった。

続いて、先ほどまで話をしていた老人も笑みを浮かべる。

「承知しました。それでは、学校内では接触しない程度に都を、他の場所では澪でいかがでしょうか? 澪は高校生ですので、日中そばにいることはできませんゆえ」

「そうでしたね。では、それで。ただ、干渉はやめてください。あくまでもそちらが勝手に監視しているだけでしたら、俺は気にしませんので」

「わかりました、そのようにします。都、澪、いいですね」

都はとても嫌そうに、澪はあまり感情を出さずに頷く。

これで話が終わりかと思った時、

「待たれよ!」

ひとりの老女が不満を顔に貼り付けて大きな声を上げた。

「なにか?」

「なにかではない。聞いていれば、星雲相談役に口の利き方がなっておらず、挙句の果てに澪などを監視者にするだと?」

「私は彼を好ましく思っている。勝手なことを言わないでいただこう」

夏樹の口の利き方と、澪に関して不満があるのか老女は火がついたように口を開いて、大きな声で続ける。

「だいたい、何処の馬の骨ともわからぬ小僧になぜこうも謙る必要がある。我らは水無月家ぞ。神も味方にいるのだ。未知数な力であろうと、潰してから言うことを聞かせればいい!」

「そのような愚かなことはしないと事前に話し合ったでありませんか」

「私は納得していない!」

「ならば、退出を。お客さまに無礼です」

「なにが無礼なものか! だいたい、監視者に澪だと? このような落ちこぼれでは、一族を恨んで虚偽の報告をするやもしれん。いや、この小僧と一緒になってなにかをやらかす可能性もある!」

「――黙れ!」

老女の言葉を、星雲相談役と呼ばれた老人が怒声で遮ろうとする。しかし、老女は止まらなかった。

「いいえ、言わせていただきますとも。都様のような次期当主という優れた方ならいざしらず、生贄になるしか使い道のない落ちこぼれの澪が一族のためになにができるのか。いや、逆恨みをして小僧をいいように使おうとする可能性も捨てきれぬ!」

「もういい加減に黙れ!」

星雲相談役の霊力の篭った怒声で、老女が気を失った。

「由良夏樹殿。大変申し訳なかった。さぞご不快だっただろう。しかし、この者の言葉は一族の総意ではないことだけはわかっていただきたい」

「当主として、一族の者が勝手なことを言ったことを心から謝罪申し上げます」

「いえ、気にしていませんけんど……生贄ってどういうことですか? あまり、無視できない言葉なんですけど」

まさか生贄という言葉が飛び出してくるとは思いもしなかった。しかも、澪が生贄にされるというのだ。

関わらないのが一番だと思っていながら、無視できなかった。

(さっき神とか言っていたけど、神への生贄ってこと? うわぁ、現代でまだそういうことする人いるんだー。ひくわー。きんもー)

異世界でも生贄に選ばれた少女がいた。善意で、神を騙る悪い精霊を倒してあげたのだが、「余計なことをするな!」と生贄に選ばれていた少女に怒られてしまったことがある。他にも、ドラゴンに生贄にされた少女を助けろと言われて送り込まれると、村で奴隷のように扱われていた少女がドラゴンと恋に落ちていて「あ、お邪魔しました」と謝罪したこともある。ちなみに、村にはドラゴンを退治したと伝えてある。

そんな出来事があったので、もし澪自身が望んでいるのなら大きなお世話なんだろう。

(――とてもじゃないけど、生贄になることを望んでいる顔をしていないんだよなぁ)

澪を覗った夏樹は、肩を落とす。

生贄をするしないは知ったことではないが、自分に知らせないでほしかった。知ったらモヤモヤするではないか。

家庭を壊した元義妹や、悪態ばかりつく幼馴染みとは違い、まだ悪感情を抱いていない澪が望んでもいないのに命を散らす――それは気持ち悪い。

なによりも、人を生贄にしなければいけないような神など碌でもないと相場は決まっている。

にやり、と夏樹は笑うと、少し嫌がらせをしてみることに決めた。