軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44「マークされてるとかやばくね?」②

「え? ちょ、警察は三原優斗を知ってるの!?」

「……あー、そういう反応しちゃうっすよね。じゃあ、順々に説明していきますっけど、夏樹くんは霊力を持たず、霊能関係にも無縁でした。だいたいの人がこんな感じです。でも、中には一般の方でも霊能関係者っているんすよ。ちょっと俗っぽい話っすけど、スポンサー的な感じとかっすかね」

「そう言われると、警察でも秘密裏とはいえ部署があるんだから、知っている人は知っているって感じかー」

「知らなくても生きていける世界っすけど、なんかに巻き込まれたり被害に遭ったり、急に力に目覚めたり、様々っす。んで、まあお父さんとかのお知り合いでこっち関係の方の娘さんが年頃でしてね。どうもおかしな男に引っかかったんだけど、女の子に好意を寄せられまくっていてちょっとおかしい、なにか特別な体質なんじゃないか……ってことで」

「あー」

どうやら霊能関係者のご家族も優斗の魅了に当てられたようだ、と納得する。

「んで、調査を少々。というか、お父さんは前から三原優斗には目を付けていたっすよ」

「そうなの?」

「気を悪くしないでほしいんすけど、妹さんがいろいろあったようじゃないっすか。その時に、いろいろ調べて、院にも調べてもらったことがあるんすよ。精神感応を得意とする術者にっす」

「そ、それで、結果は?」

「……問題なしってことでした」

「――は?」

夏樹は耳を疑った。

自身の手で優斗に触れた瞬間、間違いなく魅了を感じた。

優斗の本質は魅了ではなく、潜在能力はさておき表に出ている力は弱い。とはいえ、魅了する力があるのは間違いなかった。

しかし、院では、問題なしと結論が出ている。

(院って、くっそ無能ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!)

「えっと、夏樹くんの顔を見れば、めちゃくちゃ不満なのはわかるんすけど、報告書を見る限り霊能力はもちろん、真っ先に疑われた魅了とか、洗脳とかのそういう力は持っていないっす。実際に、何人か逆ナンさせたり、接触を図ったり、デートまでしてみたらしいっすけど、問題ないという報告が上がっているっす」

「……そこまでしたんだ」

「ちょっとお偉いさんの娘さんがってことで、念入りにやったみたいっすね。ただ」

「ただ?」

「潜在能力は高いみたいっすね。どれだけ高いのか、その潜在能力が目覚めるのか、その辺りは不明ですが」

「……俺は優斗から魅了を感じ取ったんですけど」

夏樹の言葉に、銀子は顎に手を置いた。

「夏樹くんが言うのなら、そうなんでしょう。調査は二年前なので、変化が起きている可能性もありますからね。でも、一応、封印術を施しているんすよね」

「……待って、待って、それってどういう意味!?」

「言葉通りっす。魅了、洗脳とかいう危ない力はなしと判断されたみたいっすけど、眠っている力があったので目覚めないようにロックをかけたって感じです。といっても、封印術だって絶対じゃないですから。例えばっすけど、私が夏樹くんに封印術をしても力の差が大きいので意味ないっすよ。報告書を見た限り、ベテランの方が封印したみたいっすけど、三原優斗の潜在能力が大きすぎるのであれば、封印も外れた可能性が……いえ、そもそもちゃんと封じられていなかった可能性もありますねー」

銀子は調査と封印を二年前と言ったが、その時期の前後も優斗はいつも通りの優斗だったはずだ。

いつも通り、女の子たちに囲まれ、男子から顰蹙を買っていた。先輩の想い人まで虜にしたとかで、巡り巡って夏樹に先輩から苦情が来て喧嘩になったこともある。

体感的には八年前なので、詳細までは思い出せないのが悩ましい。

(うーん。封印術が効いていないっていうか、意味がなかったっていうか、そんな力は感じなかったんだけどなぁ。優斗のことをちゃんと調べもしていないから断言できないんだけど、警察とか院が問題なしの判断なら放置でいいのかな? いや、問題あったら俺じゃなくて丸投げしたいんだけど、うーん。困る)

「良くも悪くも、調査前と調査後に全然変化がなかったみたいなんで、問題なしって判断の後押しになったみたいっすね。女の子に囲まれているのも、単純にモテるからじゃないかっていう感じっすよ。個人的には、力の有無関係なく人として問題あるじゃねーかって思ったんすけど、専門的な方が問題なしと言ったらなんもできねーっすからね」

「それは、そうですね」

「報告書を読んだ限り、第一印象は好意的だったらしいっすよ。それが、魅了か魅了じゃないかまで知らねーっすけど、でも、いい子くらいにしか思わなかったみたいです。私が気になったのは、三原優斗本人が自分は異性にモテるという自覚がしっかりあることっすかね。全員じゃなくても、好意を向けてくる女の子がいるなら、そこからコツコツと自分の努力で堕とそうとするみたいっす。マメなやり取り、女性を褒める、プレゼントなどなど、とにかく相手が喜びそうなことを徹底的にやるみたいっす。霊能云々ってよりも、ただのたらしっすかね」

でも、と銀子が続ける。

「あくまでも中学生の範囲っすね。子供が頑張って可愛いって感じっすよ。口説かれても、相手は大人だったんでそこで終わりっす。それ以上の気持ちにはならなかったようです。念の為、接触者に何かしらの力の影響がないかチェックしてもこちらも問題なしでした」

「ってことは、初対面で好意を抱く程度の力はあるのかもしれないけど、あくまでもきっかけにしかならず、あとは自分でコツコツ頑張ってハーレムを作ったってことでオーケー?」

「力はなしと判断されていますけど、ざっくりとそんな感じでいいと思いますけどね。私は斬ることが専門なんで、わかんねーんすよ。話を聞く限りお近づきになりたくないんで、興味もないっつーか。お父さんが調べていたから覚えていただけで。もしかしら、もっとなにかあるかもしれないので調べておくっすか?」

「もし、できるなら。いやー、でもそこまで興味あるかって言ったら悩んじゃうなぁ」

「あはははは。なんすかそれ。ただ、勘違いしないでほしいんすけど、体質的に魅了ではなくとも引き寄せる力を持つ人っているんすよ。カリスマでもフェロモンでもなんでもいいんすけど。霊能ではなく体質的な問題で。それを意識してもしていなくても、人間の力じゃ限界があります。実際、魅了持ちっているんですけど、長くは続かないっす。これが淫魔とか、魔族のサキュバスとかならドギツイ影響がありますけど、人間の力なんて大したことありません」

銀子の言うことはわかる。

実際、異世界でサキュバスの魅了を食らったことのある夏樹だからこそ、触れてようやく優斗にわずかながら魅了があるとわかった。逆に言うと、ちゃんと気をつけないと気づかなかったくらいだ。

「だけど、もし、万が一……三原優斗が些細な力でも自覚があって、そのせいでハーレムができているとしたら、基本的に女の子の方も相手に興味や好意があるんじゃないっすかね」

「やっぱりそこかー」

「年頃の女の子なら、イケメン、大人びている、お金を使ってくれる、同級生と違う紳士的な対応をされたら恋愛までに発展せずとも悪い気はしないっすよ。あとは三原優斗の頑張りがあったとかじゃないっすかね」

「それはあるかもしれない。あいつマメだからなぁ」

「変に先入観は持ってほしくないんですけどー、潜在能力の高さがどこに向かっているのかは気にしてもいいかもしれないっすね。先祖に人外の血が混ざっていると先祖返りして強い力を持つこともあります」

「……少なくとも人間の範疇だったと思うんだけどなぁ」

一度、改めて優斗の力を探ってみるのもひとつの選択肢かもしれない。しかし、そのせいで力を自覚されても困る。

「申し訳ないっすけど、力を使って人を殺す馬鹿もいるんで、私たちはそっちの対処が優先となるっすよ」

「いえ、そうですよね。わかっています」

「力がなくても、弱みに付け込むとか様々な方法で好意を抱かせることも、依存させることも、洗脳だってできます。夏樹くんの場合は家庭が壊れていますけど、全部が全部三原優斗が原因かどうか不明です。嫌な言い方っすけど、その時にわからなかったら、もうわからないっす」

「はい。そこはしょうがないってわかっていますし、当時はさておき今は特別気にはしていません」

「と、いろいろ言いましたけど、三原優斗の現状がわからないんで、手は出さないで欲しいっす。万が一、本格的に悪さをしようとしているなら……警察官としては駄目なんすけど、連絡だけはしてくださいっす」

「ありがとうございます!」

結局、優斗のことは曖昧なままだ。

しかし、ひとつだけ引っかかることがある。

(今の優斗が魅了を持っているとして、いや、持っていないとしても、なぜ杏が急に優斗におかしくされたなんて言ったんだ? 失恋がきっかけ? でも、ハーレムだったのに今さら女の子がひとり増えただけでショックを受けるものか? もしくは、優斗が興味を失ったのか、いや、ない。杏のことで俺に突っかかってきたもんな。なら、杏になにかきっかけがあったってことか? あー、駄目だ。わかんね。一登が大変そうだし、調べてみようかと思ったけど、優斗にも杏にも興味が持てない)

夕食後、一登から杏に関して大変だったとメッセージが来ていたので銀子に相談してみたのだが、今後どうすればいいのかさっぱりだ。

(明日は水無月家に行かなきゃならないし、機会があれば一応ちくっておこう)

「すみません、変な話しちゃって」

「いえいえ、全然構わないっすよー。おねーさんっすから、相談くらい余裕っす。さてと、真面目な話もしたんで――お部屋チェックでもして気分転換しますか!」

「ちょ、お部屋チェックってなに!?」

「エロ本をどこに隠しているのか探す、宝探しゲームみたいなものっすよ!」

「いやぁあああああああああああああああ!」

「楽しそうな気配がしたので参上じゃぁああああああああああああああ!」

「増えたあぁああああああああああああああああああ!」

部屋を漁り始めた銀子に、小梅が部屋に飛び込み乱入してくる。

「ちょ、酒臭! やめて、そこは駄目、本当に駄目。そこには禁断の、異世界が崩壊するレベルの呪物が」

「ほほう。夏樹くんはお姉さん好きっすか。実は、私ってお姉さんキャラっすよね?」

「……足フェチじゃのう。実は、俺はかなりの美脚なんじゃが?」

「いやぁああああああああああああああああああああああああ!」

異世界から帰還した夏樹は、この日、ちょっと泣いた。