軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

90「河童勇者メリーさんじゃね?」②

泡を吹いたおそらく安倍家の当主を地面に転がすと、夏樹はバチバチと放電した。

「ちょ、なっちゃん……それはやばい!」

円が止めようとするが、遅かった。

「――雷帝の雄叫び」

轟音と衝撃、そして蒼雷が安倍家を飲みこみ破壊の限りを尽くした。

けたたましい音を立てて雷が屋敷を丁寧にバラバラにしていく。

そして、最後には屋敷に火がつき燃えはじめた。

「――ふう」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおい! なにいい仕事したみたいな顔してんだよ! 俺ら鬼だってここまでしねえよ! なんなんだ、てめぇは!?」

星熊童子が夏樹の胸ぐらを掴んで振り回す。

「ただの中学生です」

「ただの中学生がこんなことできるわけねえだろ! つーかやるにしても躊躇いがねえのがこええよ! なあ!?」

星熊童子が同意を求めるように他の面々に問うが、みんなびっくりして返事がない。

例外として、

「――とぅくん。夏樹のこの強引なところ嫌いじゃないんじゃが」

小梅が頬を赤らめ、

「――さすがマイプリンス! 私の辛い過去が詰まった汚物を綺麗にしてくれたのね!」

きららがうっとりし、

「……懐かしいなぁ。一度スイッチ入ったらとんでもないことするんは変わってないんやねぇ」

円が懐かしむように笑顔を浮かべていた。

星熊童子は顔を引き攣らせて理解した。

「――このガキにちょっかいかけた時点で、姉貴の運命は決まっていたんだなぁ! 姉貴側じゃなくてよかった! まじでよかった!」

夏樹の活躍によって退治された安倍康平は、東雲の手によって捕縛された。

東雲たちの母親である女性や年寄り連中が現れ、口汚い罵倒を繰り返していたが、きららと音叉による前後からのラリアットと、円のドロップキックにより沈黙。その後、捕縛された。

「クソ親父たちは穏健派に連れとくよ。利用されて腹立てとる子も多いんから、懐柔したり、逃げ出したりすることはまずないやろ」

東雲はそう言い残すと、穏健派の霊能力者が運転してきたワゴン車の後ろに両親と老人たちを押し込んで自らも乗った。

「霊能力者として終わらせたるから、変な心配はせんでええよ。打ち上げの会場が決まったら、連絡してや」

にこやかに手を振り、東雲が去っていく。

「……あのさ」

「どうしたんじゃ?」

「よく考えたら、人様の家を燃やすのってよくないことじゃないかって」

「今さらすぎるじゃろう!?」

「由良ぁ! なんで行動する前に、それが考えられなかったんだ!?」

「夏樹くんっ、僕がいうのもあれだけど、もっとちゃんとしようよ!」

唐突な夏樹の反省に、小梅と千手、祐介が思い切り突っ込んだ。

「気にすることはないで、なっちゃん。ボクら、この家に楽しい思い出なんぞなんもないし、私物も全部マンションに持ってっとるから」

「そうだぜ! それに、昔世話になった人たちも兄貴が引き抜いてマンションのほうで世話になってるしな!」

「この家にはクソのような両親と老害しかいないので問題ないわ、プリンス」

円、音叉、きららのフォローを受けて、夏樹は気にするのをやめた。

「ならいいか! よーし! 酒呑童子のおっちゃんのおすすめの店で打ち上げだー!」

「いえーい!」

夏樹の暴れっぷりに驚いた一同であったが、すぐに切り替えてしまった。

人間と天使と鬼は、仲良く打ち上げに向かうのだった。