軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41「お泊まり会ってテンション上がらね?」①

青山銀子の車に夏樹たちは乗り込んで、由良家に向かっていた。

青山署長が、銀子よりも頼りになりそうな警察官を複数名連れてきてくれたおかげで、現場を引き継いだものの、さすがに「天使ルシファー」と「宇宙人」の存在には顎が外れんばかりに驚いていた。

青山署長は夏樹の肩にそっと手を置くと「やらかしすぎ」と泣きそうな声で言ったのだが、別に好き好んで夏樹もやらかしたわけではない。

ジャックの場合は、婚約者ナンシーを拐った人間が悪いし、ルシファー・小梅の場合は魔族と勘違いしたなら仕方がない。

一通り、問題も丸投げしたので帰ろうと思ったところ、宿のない小梅がついてくると駄々をこね、ジャックとナンシーもご一緒したいと言ったので銀子に送ってもらっていた。

急に三人も連れて帰って、しかもふたりは宇宙人なんだけど、と頭を抱えていると、なんとジャックとナンシーは人間に擬態できるそうで、さっそくしてもらった。

すると、金髪碧眼のイケメンと、美女が現れたではないか。

小梅もモデルのような美人だし、銀子も笑顔がよく似合う美人だ。

ひとりだけフツメンの夏樹は、ちょっと居心地が悪かった。

「――この車狭いんですけど」

「レトロカーに文句言わないでほしいっす! 五人乗りなんですよ、一応!」

銀子のコンパクトカーはお世辞にも快適ではなかった。

運転席に銀子が、助手席じゃないと酔うと主張した小梅がその隣に。夏樹は、なぜかジャックとナンシーに挟まれて後部座席だ。

「というか、宇宙人と天使ってバレなくても、外国の方を三人も連れて帰って平気かなぁ?」

「お父さんの話だと、夏樹くんのお母様なら問題ないみたいっすけど、どんなお母様っすか? 私は何回かご挨拶したくらいなんで、あんまりわかんないっすよねぇ」

「いやぁ、どこにでもいる普通の人だよ?」

「本当にそうっすかねぇ?」

微妙にガタガタする車に揺られていると、思い出したように銀子が話し始めた。

「そういえば、夏樹くんからもらった魔剣太郎はやばいくらい最高っすよ」

「だっさい名前じゃな! ネーミングセンスなさすぎじゃろ!」

「放っておいてください! でも、もともと持っていた魔剣が言うこと聞かなくなっちゃったんすよね」

「……片方だけに名前つけたからじゃない?」

冗談めいたことを言った夏樹に対し、銀子は「ふむ、そうかもしれないっすね」と真剣に考え始めた。

「魔剣太郎、略してマンタ!」

「大海原で悠々と泳ぐ海洋生物が思い浮かぶね」

「沖縄いきたいのー!」

「もう一本は使った感じが女の子なので、魔剣花子で。略してマン――」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「ぎゃぁあああああああああああああああ!」

とんでもない単語を言いそうだったので、夏樹だけではなく小梅までが叫んでしまった。

すると、銀子がなぜかにんまりと唇を吊り上げた。

「あれぇ? なんで急に大きな声を出したっすかぁ? もしかして、私がなにか変なことを言おうとしたとか誤解しちゃったすかぁ? あー、やだやだ、思春期の中学生と、意外にすけべな天使ちゃんは」

「ちょ、ま」

「き、貴様!」

「あれー? じゃあ、なにを考えて叫んだんっすかねぇ? そのかわいい唇と、ちょっと強気な態度で、お口にしてみてくださいよ。ほらほらぁ!」

「……なんて人だ! こんな変な人異世界にもいなかったよ!」

「貴様が誤解するようなことを言おうとするからではないか! マンタからきたら、もう答えはひとつじゃろう!」

「その答えを聞きたいんっすよ! 早く早くぅ!」

銀子に対する印象をいろいろ修正している夏樹を挟んだジャックとナンシーは、

「人間は楽しい生き物だな。こんなにも賑やかだ」

「ソウネ、アナタ」

「ふふふ」

「フフフ」

いちゃいちゃしていた。

しばらくして、銀子のセクハラを受けながら、由良家に車が到着した。

「ただいまー!」

「こら! こんなに遅くなるなら連絡しなさい! 心配したでしょう!」

「あ」

「久志くんから、夏樹がちょっと人助けしているって聞いたから、よかったけど、あまり心配させないでね!」

「ごめんね、お母さん」

母に怒られたのは、体感で六年ぶりだった。

不謹慎だが、少し嬉しくて涙が出そうになった。

「あらあら、そちらの皆様が夏樹と知り合った海外の方? ささ、どうぞ。夕食の支度をしてあるので、召し上がってください」