軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

67「急なラブコメじゃね?」③

「いやぁあああああああああああああああああああああああああああ!」

「あ、あの、祐介くん?」

「らめぇえええええええええええええええええええええええええええ!」

「そんな叫ぶと酸欠になってまうよ?」

絶叫を繰り返す祐介に、夏樹と東雲が心配するが、彼の絶叫は止まらない。

肺が壊れてしまうのではないかと不安になる。

「うっさいんじゃぁああああああああああああああああああああああああ!」

心配よりもやかましさが勝った小梅が、俊敏に祐介の背後に回ると腹に手を回し、そのままバックドロップをした。

ごすっ、となにか嫌な音がしたが、祐介が静かになったのでよしとしよう。

一応、夏樹は回復魔法を祐介にかけておくことにした。

「さて、現実に戻るとしようか」

鼻と口からだくだくと血を流して呆然としている千手と、女の子座りをして頬を赤くして唇を抑える虎童子。

まごうことなきラブコメだった。

「……あのさ、しののん」

「なんや?」

「もしかして茨木童子もこんな感じの鬼なの」

「……全然っ、ちゃうよ!」

「めっちゃ力強く言うなぁ」

「金童子は知らんけど、熊童子、星熊童子、虎童子は酒呑童子殿とどこか似とるね。せやけど、茨木童子はタイプが違うんよ」

「……そっか。一応、聞くけど、茨木童子だけは絶対に殺すからね」

「君が殺さへんかったら、自分が命にかけても殺したるよ」

「ならいいさ。さーて、じゃあ、このラブコメ展開をなんとかしますか!」

「……できるとええねぇ」

東雲が指差すと、憤怒の形相でこちらを睨んでいる星熊童子がいた。

細い肉体だが、筋肉質であることがわかる彼女は、拳を思い切り握りしめていた。

「てめぇら……一体どういうつもりだ?」

「うん?」

「熊童子の身体を弄り、肉球を舐め! 俺の足を舐めて! 虎童子に至っては初接吻を奪われたんだぞ! お前たちは俺らをどうしたいんだよ!」

「なんかごめんね!」

「なーんで謝ってるんじゃ」

殺すつもりでお互いに戦いを始めたはずが、ぐだぐだだ。

祐介のせいで変な方向に進んだなと思えば、突然の千手がラブコメってしまうので、夏樹は動揺し、また申し訳なさを覚える。

今まで異世界で殺伐とした戦いをしてきたが、こんな展開になったことがないので、どう対処していいのかわからないのだ。

「謝ってすむ問題じゃねえよ! とりあえず、これを書いてもらおうか!」

星熊童子が取り出したのは、一枚の書類だった。

「……なあにそれ?」

「婚姻届だ! そこの男には、責任をとって虎熊童子と結婚してもらう!」

「なーに、しれっと人間社会で結婚しようとしとるんじゃ、こいつら」

「べ、べべべ、別にこの間、参加した部下の結婚式に憧れたとかねーし!」

「……自分で言っちゃってるぅ」

「しまった! ――くっ、殺せ!」

「なんで!? 急に!?」

熊童子も個性的だったが、星熊童子も負けていない。

「と、とにかく! 初接吻を奪ったその男にはきちんと責任取ってもらうからな!」

決定事項とばかりに言う星熊童子に夏樹は困った顔をして東雲を見た。

「あのさ、鬼ってこんなにピュアなの? ピュアなのは 一心(ぴゅあ) さんだけでいいから」

「自分に言われても困るし。あと、 一心(ぴゅあ) とかいうキラキラネームが知り合いにおることに動揺を隠せへんよ!?」

「さあ、困った」

「なにを言っとるか! そんなん本人たちにお気持ちを聞けばええじゃろうて!」

意識を失っている祐介以外が、千手と虎童子を見る。

「あ、あたいは……その、責任取ってほしいかなって。きっといい奥さんになるから!」

長年生きる鬼が乙女のように恥じらいながらも、頑張って決意表明をする姿に、夏樹たちは「――とぅくん」と胸が高鳴った。

「――あら。私がいない間に、おかしなことになっているわね」

だが、唐突に、冷や水を浴びせられたような冷たい霊力が、声と共に夏樹たちを襲った。