作品タイトル不明
37「名前って大事じゃね?」
「あ、起きた。こいつ元気だなぁ。どうやったら殺せるんだろ。聖剣使ったら死ぬかな?」
不思議生物でも見るように、夏樹は興味を宿した視線を向ける。
全力ではないとはいえ、真っ二つにしても、焦がしても、ピンピンしているのはなかなか生命力が強いのだろう。
さすがルシファーというビッグネームを名乗るだけはある。
「あ、ああ、俺の美しい翼がぁあああああああああああああ!」
そんなルシファーは、自分の身体と一緒に純白の翼まで焦げていることに絶叫する。
すぐに修復を試みるが、肉体はさておき、翼は白くはなったが元の純白を取り戻せていなかった。
「……くそぉ、力がないんじゃぁ!」
「えっと本当にこれ、天使さんじゃないっすか?」
恐る恐る改めて銀子が尋ねてくるので、夏樹ははっきり告げた。
「だから、ルシファーだって」
「堕ちた天使!? 聞き間違いだと思いたかったっす!」
「違うわい! 俺はゴッドの孫ルシファー家の末っ子じゃ! ちゃんとした天使じゃ! 堕ちとらん!」
自分の力を神力と言っていたことや、夏樹を魔族扱いしたことからわかっていたが、やはり彼女は天使らしい。
「俺っ子天使とか需要ありますねぇ! んで、なんでそのルシファーさんが地上にいるっすか?」
「くそ親父が堕天して魔王になりやがったから、クソ親父の配下の魔族をぶっ殺して回っているんじゃ! あんのクソ親父のせいで、ルシファーさんちの太一郎くんったらグレちゃって、なんてご近所の視線が痛いんじゃ! なーにが、サタンじゃ! おどれの名はルシファー・太一郎じゃろうて!」
(俺っ子天使に需要があるかどうかはさておき、このお姉さんなんつった? ルシファーって家名なの? ゴッドって、あのゴッドでいいの? つーか、なんでサタンの名前が太一郎なんだよ! ああ、もう、どこから突っ込めばいいのかわからない!)
夏樹はそっと銀子に視線を向けて小さな声で聞いてみた。
「あの、サタンって」
「……私たちじゃ一生かけても会えないでしょうけど、魔族のトップっすね。おそらく」
「そのサタンさんの名前が太一郎でいいの?」
「いやー、そこは知らねーっす。サタンとかゴッドとか、ちょっと関わりたくないかなって。ファンタジーはファンタジーを得意とする夏樹くんにお任せするっす」
「別にファンタジーが得意なわけじゃないけど、まあいいや。気にはなるし」
父親の文句を言いながら、羽の毛繕いをしているルシファーに夏樹は尋ねてみる。
「あのさ、なんでお名前が和名なの?」
ルシファーは、その質問が気に入らなかったのか、夏樹を睨みつけた。
「そんなんゴッドが日本文化にハマってて、――君たち、今日から和名ね。これペナルティだから拒否権ないので。とか言いやがったんじゃ! どんなペナルティーじゃ! 逆らったら罰せられるし!」
「パワハラゴッド! ゴッドはパワハラだなぁ!」
「ほんとそれじゃ! あのクソジジィ、孫娘が可愛くないんか!」
「ちなみに、君の名は?」
ここまで話を聞くと、目の前のルシファーの名前も気になる。
彼女は嫌そうな顔をしていたが、絞り出すように名乗ってくれた。
「…………ルシファー・小梅じゃ」
「可愛くていいじゃん!」
「――ほえ?」