作品タイトル不明
30「異世界召喚されかけたんじゃね!?」①
「京都ぉおおおおおおおおおおおおおお!」
「着いたんじゃぁあああああああああああ!」
京都駅を出た夏樹は小梅と一緒に大きく背伸びをして、叫んだ。
当たり前だが、近くにいた誰もが、ぎょっ、とした顔を向ける。
「……これは恥ずかしい」
「そ、そうだね」
全力でおのぼりさんしている夏樹と小梅に、千手と祐介は恥ずかしいと距離を取った。
海外モデルのような小梅はさておき、生まれも育ちも日本人の夏樹はちょっとない。
小梅に対しては、視線を向けた人たちも「うわ美人!」「足長っ!」と感嘆の声が響くのに対し、夏樹には「うわぁ」と痛々しい子でも見るような視線が向けられている。
「せめて学生服を着ていれば修学旅行でテンション上がった中学生で通ったんだけどな」
「私服じゃちょっと無理だね。あ、海外の方に写真撮られてる」
「なんであいつはドヤ顔で撮影に応じてんだよ」
「肩組んで、フレンドリー」
「さすがコミュ力まで勇者」
「同じ勇者なのに、僕とは違うなぁ」
「いや、あんなのがふたりもいたらやべえだろ」
「そう、だね」
千手と祐介が乾いた笑いをする。
そんな時だった。
「ちょ、ま、なんか観光客の方々が!?」
「おい、夏樹! な、なんじゃ、くぉら! おどれら、なんで勝手にポケットにおまんじゅうをいれてくるんじゃ! お小遣いなどいらん! やめ、やめい! ポケットぱんぱんになるじゃろう!」
団体の観光客の波が夏樹と小梅を飲みこんだ。
千手たちが「あ」と声を上げたときには、小梅と夏樹の姿は消えてしまった。
「……あのさ」
「……うん」
「……目的地とかそういうの決めてたっけ?」
「……さあ」
「あいつら迷子になりやがったぁあああああああああああああああああ!」
「嘘でしょうぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
■
「はぁ、はぁ……すげえな、おじちゃんおばちゃんの波に飲まれたと思ったら、ポッケがお菓子と小銭でパンパンになっているんだけど。あとここどこ!?」
ポケットから饅頭を手に取り口に頬張ると、裏路地を歩く。
「なんか懐かしいな。はっきりと覚えていないのに、昔に円ちゃんと一緒に走った記憶が蘇るな」
幼い円とアイスを食べたり、ラムネを飲んだりしたことを思い出し懐かしむ。
なぜ忘れていたのだろうか、と不思議だ。
「なんていうか、懐かしいのと切ないのが一緒に来るなぁ」
鬼が自分と円を襲わなければ、どうなっていただろうと考え、想像ができなかった。
ひとつだけ言えるのは、復讐に囚われる円がいないことはいいことだ。しかし、そんな未来はこなかった。
「京都に来たんだから円ちゃん……じゃなくて円くんと話をしな――――あ」
考え事をしながら歩いていたせいだろう。
注意散漫となっていた夏樹は、路地を右手に曲がると同時に、トラックが眼前に現れた。
「あ、やべ」