作品タイトル不明
26「未知との遭遇とかやばくね?」③
「アリガトウ、チキュウノショウネンヨ」
「お礼はいいんだけど、もっとわかりやすく喋れない?」
「シバシ、マッテホシイ」
手を離した宇宙人は、自分の喉に触れ「あー」「うー」とまるで調節ができるかのようになにかしている。
しばらくすると、再び宇宙人は夏樹に向けて声を発した。
「これでよいだろうか、地球の少年よ」
「すごく素敵なお声!」
感情の籠らない無機質な機械音のようだった声が、テノールな素敵な声になっている。
(これがイケボ……とぅくんってしちゃう)
「ごほん。よし、会話がちゃんとできるようになったところで、質問に答えてくれ」
「了解した」
「まず、これなに?」
夏樹は空を指差す。
会話の間に探っていたが、どうやら一部の範囲をなにかが包んでいるようだった。
「さすが力を持つ少年だ。この力は隔離結界だ。君だけを、結界内に取り込んでいるため周囲は君や私を感知できず、君と私も周囲の人々を感知できない」
「どうやるの?」
「……宇宙の不思議パワーだ」
「まじかぁ。宇宙の不思議パワーならしかたないかぁ」
覚えられるなら覚えてみようと思った。
「次に、あんたに闘う力はないのかな? 傷つけちゃダメって言っていたけど?」
「我々に戦う技術はあるが、戦いを好まない。また、地球人を傷つけると罰則がある。無論、婚約者のためなら罰を受ける覚悟はあるが、この星の力と私の所持する力では相性の問題があり、出力的な問題で被害が大きくなってしまう」
「それで、俺ってこと?」
「そうだ。私が調べたところ、この辺りで一番力を持っているのが君だ」
「まあ、自分強いですから。宇宙人から頼られてもしょうがないですけど!」
ルールがあるのなら、仕方がない。
話している限り、誰かに危害を加えることをよしとしていないのがわかる。
婚約者を奪われて焦っているが、短慮な行動を起こさないよう自制しているようだ。
「……ここだけの話、私と婚約者の両親は母星でそれなりの地位にいるため、私がなにかしてしまうと私の父だけではなく、婚約者の両親にまで迷惑がかかってしまう」
「そこまで聞けば大丈夫だ。婚約者を助けに行こう。場所は?」
「感謝する。婚約者が囚われている場所は、この町の郊外にある『河童・つちのこ研究会』なる施設だ」
「そんなふざけた施設があるのか!? いや、ファンタジーな世界ならいるかも」
非常に気になる組織だが、すべきことからしていこう。
夏樹は自転車にまたがると、親指をくいっとする。
「いくぜ、乗りな!」
「船では目立つのでありがたい。では、失礼して」
宇宙人は礼を言い、自転車の荷台に跨ろうとしたが、夏樹が止める。
「馬鹿野郎! 宇宙人が自転車に乗るときは、前のカゴって決まってるだろう!」
「そのような作法があったとは失礼した。……少々手狭だが、なんとかなるだろう」
器用にカゴの中に収まる宇宙人。
若干、前が見にくいが、理想的な光景だった。
「よし、宇宙的結界を解いてくれ」
「しかし」
「大丈夫、俺は空が飛べるから」
「おお! やはり君に頼んでよかった!」
夏樹と宇宙人は拳と拳をぶつけた。
「そういえば、あんた名前は?」
「そうだった。名乗ってもらったのに、失礼をした。私の名は、ジャック・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻だ」
「なげぇ! あと、最後なんで花巻!?」
「親しい友人はジャックと呼ぶ」
「よくわかんないけど、よろしくな、ジャック!」
「ああ、よろしく頼む、夏樹!」
宇宙人と友人になった夏樹は、自転車のペダルに力を込めた。
「では、結界を解く!」
「おう!」
結界が解けると同時に、ふたりを乗せた自転車が空に浮く。
「ナビを頼むよ!」
「任せてもらおう!」
宇宙人と自転車に相乗りして、向島市の空を駆けた。