作品タイトル不明
28「涙で前が見えないんじゃね?」
「え? なんすかこの展開? 待ってくださいっす! 魔剣花子はちゃんとした決闘に勝った上でもらったんす! そりゃ、大金払うから返してくれって連絡が来てもガン無視しましたけど!」
「ふーむ。小梅様的には大事なものを賭けて決闘して負けたんじゃから、悪いのはそっちのおっさんじゃな」
「でしょでしょ! つーか、その後、次期当主の座から降ろされたのも、婚約者に振られたのだって、私何にも関係ないっすから! あんたのお家事情なんて、初めて聞いたっすよ!」
当時を知らないが、話を聞く限り、同意の上で決闘して魔剣を得たのなら、銀子を責めるのは違う気がした。
「うーん。それじゃあ、銀子さんは悪くないかな? よくわからなくなってきたぞー!」
「いや、そうじゃねえだろ。とりあえず、嘘でもいいから頭下げておけば、向こうだって引っ込みがつくんじゃねえのか?」
「あー」
「ま、もう遅いだろうけどな」
千手の言葉に、夏樹、蓮、祐介がなるほどー、と納得した。
しかし、すでに千手が「嘘でもいいから頭を下げておけ」と言ったので、今さら銀子が謝罪しても無理だろう。
「――嫌っす! 女の子は簡単に頭下げちゃいけないっすよ! しかも、当時ピチピチのJKに無様に敗北したおっさんに、なんで謝罪しなけりゃならないんっすか! あれっすか、自分が強くてごめんなさーい、空気読めずに勝っちゃってごめんなさいーっす! って、ことでいいんすか?」
「……なーんで、おどれは火種にガソリンをぶち込むんじゃ? 俺様でもそこまで……いや、するかもしれんが」
絶対謝る気がない、私は悪くない、と言う銀子の主張も間違ってはいないのだろうが、言い方が悪すぎる。
征四郎はついにプルプル震えていた。よく見れば、目尻にうっすら涙が浮かんでいるような気がする。
「俺の味わった地獄はそれだけじゃない! 婚約者は、俺との婚約解消を一方的にした次の日、弟と結婚しやがったぁあああああああああああああああ!」
「うわぁ」
「なぜ、次期当主だった俺は婚約者止まりだったのに、弟とはすぐ結婚しているんだ! あいつはまだ次期当主にさえなってないんだぞ!」
「……それは、あの、なんといいますか、夏樹くん的には中学生なのでそんなディープなお話聞かされても困ると言うか、どう反応していいのかって」
「しかも、もう子供もできて生まれているからなぁあああああああああああああああああ! 弟はまだ当主になってませーん! うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
「あ、壊れちゃった……」
口にこそしなかったが、銀子ではなく弟と元婚約者に復讐に行けばよかったのではないかと思う。
蓮、祐介を相手にしてまだ立っていられるのなら、神剣の影響があったとしても強さを手に入れていたことは間違いない。ならば、身近な復讐から始めていれば、溜飲は下がっただろうに。
「あー、神奈。俺が言うことじゃねえが、そんな女と結婚しなくてよかったじゃねえか。どうせ、元から弟と出来てたんだって」
「そうだよ! いい出会い探そうよ!」
千手の言葉に、夏樹が同意する。
「今度、飲みに行こう?」
「えっと、僕の働いているお店に今度食べにおいでよ」
祐介と蓮も、征四郎をかわいそうに思ったのか、慰めの言葉をかけた。
「私よりも、弟と婚約者のほうが悪い気がするっすけど、なんかごめんなさい?」
「い、生きていれば悲しく辛いこともあるじゃろう! ファイトじゃ!」
銀子と小梅でさえ、征四郎の境遇を哀れに思い、謝罪と元気づける言葉をかけた。
「それでも俺は好きだったんだあああああああああああああああああああああ!」
涙を流し、絶叫した征四郎に、夏樹たちも貰い泣きしそうになった。