軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25「大きな犠牲じゃね?」

「ふん、ふふーんふん、やっぱり春はビールっすよねぇ」

「なーに言っとるんじゃ。春夏秋冬ビールばかり飲んでいるじゃろうて。その内、天照大神みたいなビール腹になること間違いなしじゃな?」

「照子ちゃんには悪いっすけど、私は動いているんで、あんな樽みたいにならないっすから!」

「……友達のくせになんつー酷いことを言うんじゃおどれは」

青山銀子とルシファー・小梅は酒屋で買ったビールを手に持ち河川敷を歩いていた。

夏樹がゴッドと会いにいって夜になっても帰ってこず、春子が心配しても困るのでリリスに尋ねてみると、なんでも夏樹が召喚された異世界に同じく召喚された青年がトラウマ抱えて引きこもっているのでゴッドの要請で会いにいっているらしい。

イベントに愛されるにもほどがある、と破天荒な小梅と、お気楽な銀子でさえ変な顔をしてしまった。

一登に頼んでアリバイ作りをしてもらい、銀子と小梅、帰宅したナンシーと春子と夕食を食べた。

春子は社交ダンス教室に行き、三人になったのでナンシーから、夏樹たちは宇宙へドライブに、と聞いた銀子と小梅が「いいないいなー!」と羨ましがり、夏樹ばかりずるいから酒を飲むぞ、となった。しかし、冷蔵庫にビールは少なく、春子の分まで飲んでしまうほど図々しくないので酒屋に向かったのだ。

まだ咲いている桜を眺めながら、夜風を浴びてふたりは散歩をする。ナンシーは、ドラマに夢中だ。

「それにしても、なーんで夏樹くんは毎日イベントばかりっすかね」

「しかも、一日に複数のイベントじゃ。忙しすぎるじゃろ」

「ラノベじゃないんだから、そんなイベントも慌ててこなくてもいいでしょうに」

「それじゃよなぁ」

数日前まで、一般人をしていたと聞かされて半信半疑になってしまいそうだった。

異世界で酷い目に遭ったのだから、帰還した後くらいゆっくりできればいいのに、と思いつつも、ふたりもなんだかんだとイベントを運んでくる側なので、口が裂けても言えやしなかった。

「――にしても、じゃ」

「そうっすね」

ふたりの視線の先には、異能バトルよろしく河川敷で戦いを繰り広げている三人の青年の姿があった。

ひとりは剣を振り回し、ひとりは強力な蹴りを放ち、ひとりは地面を操っている。

「ファンタジーを隠す気ないのう。いや、俺様も周囲に気を遣ったりはせんのじゃが、あそこまで堂々とはできんのう」

「というか、ひとりは小林蓮くんじゃないっすか」

「ああ、あのまもんまもんの連れじゃな。……アルフォンスのところで修行中だろうに、なーんで、河川敷でバトっとんじゃ? あれか? 友情でも育んでおるんか?」

「いやいや、夕陽がないのに友情は育めませんって」

「おっと、そうじゃった、俺様としたことが」

はっはっはっ、と素面なのに酔っ払いみたいなノリで大笑いする天使と警察官。

「……しかし、元気なのはいいんじゃが、うるさい。逮捕してくるんじゃ、銀子!」

「そんな簡単に逮捕なんてできるわけがないじゃないっすか!」

「権力を使うんじゃ、権力を!」

「権力というのならゴッドの孫の小梅さんのほうが権力あるでしょうに!」

「ゴッドはなぁ、神なんじゃが、神と信じてもらえんからなぁ……後光が眩しいだけの怪しいなにかじゃ」

「ゴッド的にいいんすか、それ?」

銀子はビールの入ったビニール袋片手に、もう片方の手に魔剣花子を握りバトっている三人へ近づいていく。

「あー、もしもしー。世間の目を気にせずバトっているところ申し訳ないっすけど、やりすぎっすよ! ちょっと、場所変えるか、ゲームで決着つけるとか、もっとなんとかならないっすかー?」

「もっと他に言い方があるじゃろう」

銀子と小梅の登場に、三人の動きがぴたりと止まった。

「あ、ルシファーさんと青山さん」

「誰?」

小林蓮は、ふたりに気づいたのだが、もうひとりの青年は首を傾げた。

そして、

「あ、あああああああ、青山銀子ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

古びた剣を握っていた男が、銀子の名を呼び突進してくる。

その速さは、人間を超越していた。

「え、ちょ」

魔剣の使い手として、それなりに名が売れている銀子であるが、男の動きに完全に反応しきれていなかった。

天性の勘で、反射的に半歩引いていたので、男が薙いだ剣に銀子が斬られることはなかったが、その代わりのようにビニール袋に入っていた缶ビールが斬られ、液体を飛び散らせた。

銀子と小梅には、ビールの悲鳴が聞こえ、飛び散る液体は赤く見えたという。

「「ビールぅうううううううううううううううううううううううう!?」」