作品タイトル不明
93「霊能学校に行く意味なくね?」①
「あー、霊能学校っすかぁ。銀子さん的には夏樹くんは行く必要はないって思うっすねぇ。あれ? 前にもこんな話しませんでしたっけ?」
帰宅した夏樹と小梅は、ゴールデンウィークに霊能学校の見学を月読に頼まれたことを話し、短い間でも通った経験がある銀子に話を聞いた。
以前も似たような話をしたことはあるのだが、その後にイベントが多すぎたので夏樹の記憶の中に残念ながら霊能学校の情報は残っていない。
おそらく、夏樹自身が興味がないのだろう。
「というか、夏樹くんが何を学ぶっすか? 半分以上の生徒が実践経験皆無っすよ。良くも悪くも良い家のお坊ちゃんお嬢ちゃんたちっすからねぇ。プラスアルファで、一般人枠があるっすけど」
「実践経験ないの? 天使と戦ったり、土地神と戦ったり、七つの大罪の魔族と戦ったり、規格外な能力を持つ人間と戦ったり、雷神と戦ったり、すさすさと戦ったりしないの?」
「しないっすねぇ! ざっくりとはいえ、よくもまあ一ヶ月にこれだけ戦ったっすねぇ!」
「本当よねぇ。なっちゃん、さすがにおこよ! おこ! で、せめて土地神くらいと戦ったりするでしょう?」
「普通は土地神と戦わねえっすよ! みずちさんが例外だったってだけっす。基本的に土地神を祀る家も少なくなりましたっすからねぇ」
「じゃあ何と戦うの!?」
由緒正しい霊能力者の一族の人間ならば、一般人の自分よりもよほど戦っていると夏樹は思っていた。
しかし、違うらしい。
正直、ショックだ。
「うーん、低級の悪魔や悪霊、人によっては犯罪者の霊能力者と戦うこともあるんじゃないですかねぇ。あとは、穢れた場所の浄化や、前線で戦う人の補佐などっすね」
「…………それ、役に立つ?」
「立ちますっす! 夏樹くんだって、異世界で剣の基礎からやったでしょう?」
「偉そうなことを言った騎士に教わったんだけど、普通に嬲られたよ。実践形式だったから」
「ひえっ」
「聖剣さん手に入れてから殺したけどね」
「ぴえっ」
「そっからも前線、前線、前線だよ!」
「それは異世界がおかしいっす!」
人が苦労して異世界で生き延びたというのに、こちらの世界の霊能力者たちはのんびりふんわりした戦いしかしていないことに段々腹が立ってきた。
「言っておくっすけど、低級の悪魔や悪霊って学生には大変なんすよ」
「えー、でも銀子さんは余裕だったでしょう」
「そりゃまあ余裕っすよ!」
「じゃあ、やっぱりよくわからん偉そうな一族どもがボンボンを甘やかしているだけじゃねーか!」
「――甘やかしていないなんて一言も言ってねえっす!」
「なん、だと?」
夏樹は震えた。
まさか、人々の平和を担う霊能力者の若き世代が、甘やかされているのか。
「別に擁護したいわけじゃないっすけど、生まれてくる子が必ずしも才能に溢れているわけじゃないんすよ。なので、優れている才能を持っていても、いなくても、血を絶やさないように、死なないように、大事に育てていくっす。まあ、そのせいで調子乗っちゃっている子や、霊能力者様が守ってやっているんだぞ、という問題児が増えましたっすけどね」
「教育失敗してるじゃん!」
「ま、旧家なんてそんなもんっすよ。現場出れなくて、霊能学校の教師になったり、一般人としての日々を願ったり、家で特に何もせず踏ん反り返っているだけだったり、とみんながみんなうまくいくわけじゃねえっす」
「世知辛いわー」
夏樹は改めて、霊能学校に行く理由がないと判断した。