軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

86「千手パッパは有能な予感じゃね?」①

叫んだ挙句、気絶してしまった千手を虎童子が担ぎ、夏樹たちも一緒にマンションへ向かった。

「おかえり、可愛い息子千ちゃん、可愛い娘とらぴー。おっと、マイサンのブラザーたちじゃないか。ささ、お上がりなさい」

「……千手さんのパパ、会うたびに面白くなっていくなぁ」

「千手はイラつきそうじゃがのう」

気絶していなかったら全力で肯定していただろう。

愉快な父と、元気いっぱいな虎童子に振り回される千手の姿が容易に想像できる。

「それで、私の可愛い千ちゃんが気絶して運ばれてきたってことは――戦争だな?」

「千手さんのパパ、めっちゃ悪い顔してる!」

「おっと、水無月家を潰そうと頑張っている時の私が出てしまったようだ」

「こんな愉快なおっさんがどうして水無月家を追いこめていたんか全く不思議じゃ。雲海おばあちゃんとか、このおっさんにやりたい放題されていたんか!?」

「デトックスされる前の私はね、悪党だったからね。きりっ」

「今は全力で愉快じゃのう」

「うん、愉快な千手さんのパパだね」

とりあえず千手をベッドに寝かせ、虎童子が添い寝した。

夏樹と小梅は、康弘にアイスティーを出してもらってリビングに移る。

「それでなっちゃんたちはまた「帝国」なのか?」

「うん。あいつら、そのへんからにょきにきょき生えてくるから対処が面倒」

「いっつも後手んじゃもんなぁ」

「なるほど。しかし、異世界帰還者は力がある以外は特徴がないからねぇ。帰還後に犯罪を犯す、なっちゃんみたいに霊能関係と接触するなどしているといいんだけど。共通点が異世界帰還だけだと基本的に他人でしかない。「帝国」がどうやって仲間を集めているのか知らないが、人を探すことに長けた人間がいると思いたいね」

「やっぱりそうだよね。そいつを殺せば、これ以上人員が増えることはないんだろうけど。ただ、新たな神々も同じだしなぁ。どちらにも人を探せる人間がいると考えると、戦うのがめんどい」

「――じゃよなぁ!」

「だよねぇ」

例えば、夏樹のような異世界から帰還した人間を探すことのできる能力者がいるとして、そのような貴重な人間が表立って出てくるとは考えづらい。

さすがに異世界から帰還した人間だって限られているはずだ。その中でも、戦力として使える人間はさらに少ない。

奥に引っ込んでいる人間を引き摺り出すよりも、ひとりひとり潰していった方が早い気がする。

特に「帝国」は組織が大きいとは思えないので、時間もそうかからないはずだ。ただし、最初のひとりを見つけるのが難しい。

新たな神々に至っては論外だ。

人間、神、魔族、新たな神々、他種族などが加わっているのならその範囲は多岐にわたる。ならば、中心となる者を潰した方が絶対に早い。

ただ、ちょいちょい話を聞く限り、トップだけではなく、中級程度の奴らも思うように行動しているという。

それらを考えると、やはり組織ごと潰すのは難しい。そもそもちゃんと組織として成立しているのかさえ夏樹は怪しんでいる。

「まあまあ、なっちゃん。おじさんね、最近、ようやく七森家の権力を取り戻したの」

「あ、一応、そういうことやっていたんだ」

「やっていたのよ。秘書の森山田に半分くらい任せちゃったけど、すっきりすっきり」

気さくなおっさんだから忘れそうになるが、七森康弘は七森家当主だ。

院に所属する歴史ある一族の長なのだ。

「そんなわけで新たな神々は無理でも、異世界帰還者らしき者は捜索させているよ。しばらく行方がしれなかったとか、急に変な言動になったとか、ね」

夏樹や祐介みたいに、異世界に行って帰ってきた時間が同じの場合もあるが、わかりやすいところから探していくのが一番らしい。

「千ちゃんもいろいろあるし、パパ本気出しちゃおうかな」

きりっ、と表情を引き締めた康弘はかっこよかった。