作品タイトル不明
68「千手さんにコンタクトじゃね?」①
――深夜。
――七森千手は、自室のベッドの上で汗をかいてうなされていた。
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!」
千手は海にいた。
ざざぁん、と波内際にいつものスラックスとシャツという姿だ。
靴下はいておらず、裾が波で濡れていた。
「……どうして常夏の海にいるんだよ。絶対に、由良案件だろう。俺は覚えているぞ、由良が海の勇者としての源である海の神と出会ったのが常夏のビーチだって言っていたからな。ついでに、大地、陽キャ、風、炎の神々もいたんだろう! 今さら俺がこのくらいで慌てふためくと思ったか!」
とてもよく響く声だった。
叫んでから、気づく。
千手の首には「レイ」がかけられていた。
「……この野郎。どうしてハワイに行くと首にかけてくれる花の首飾りが俺に装備されてんだよ! ああっ!? ここはハワイか!? んなわけがねえだろ! おちょくってんのか!?」
「あ、あの、怒らないでください」
「――っ」
背後から声が聞こえて、振り返ろうとしてできなかった。
千手の顔を背後から両手で挟むように掴まれていた。
ぴくりともしない。
顔に伝わる手のひらの感覚で女性であることがわかるが、まったく顔が動かない。
そのせいで、声以外把握できないのだ。
千手は内心、緊張したものの、背後にいる人物の正体を把握していた。
「――あんた、風の神だな」
「――っ、どうして」
「俺を舐めるなよ。由良に力を与えている海の神は人見知りだと聞いているし、登場もホラーだ。由良とまともにコミュニケーションが取れていない神が俺にいきなり接触してくるわけがねえ。そうなると、由良にコンタクトをとったものの内側に置いて行かれた間抜けな神が風の神だ」
「さすがです、ツッコミの勇者殿」
「ツッコミの勇者じゃねえから!?」
「え!?」
「驚くんじゃねえよ! 驚くのは俺だから! なんで「帝国」にも「神」にも俺はツッコミの勇者として認識されているんだよ! 俺は由良と出会う一ヶ月前までツッコミなんかしないクールなお兄さんだったんだよ!」
「えっと、自分でクールって言う人は、だいたいクールじゃないって」
「うるせえよ! それで、なんで俺をここに呼んだんだよ! ここ、由良の心の中だろ!?」
「そうですけど」
「そうですけど、じゃねえから! 由良も来ているのか?」
「いえ、夏樹くんは眠っていますね」
「じゃあ、なんで俺を呼んだの!? 本当になんで呼んだよ!?」
全く理解ができなかった。
夏樹もいないのに、勝手に彼の心の中に呼ばれる理由がまるでわからない。
「佐渡祐介さんのところには大地の神が、三原一登きゅんのところには炎の神が会いに行きました」
「――まじか」
「はい。私、風の神は――特に会いに行く人はいなかったのですけど、なんだか仲間はずれみたいなので、七森千手さんをこちらにお呼びしました」
「ふざけんな!」
「綾川杏さんと悩んだんですけど、いきなり女の子を呼んだらびっくりさせてかいわそうかわいそうだと思ってあなたにしたんです」
「ふざけんなぁあああああああああああああああああ!」