作品タイトル不明
52「なっちゃんだってたまにはちゃんとしたこと言うんじゃね?」
「なっちゃんね、コンビニ行こうとしたらガープさんがカッコつけている気配がしたから来ちゃった!」
「小梅ちゃんね、コンビニでアイス買おうと思っとったんじゃけど、痛々しい奴の叫びが聞こえちゃったから来ちゃったんじゃ!」
「……月読先生ね、不死の力がどうこうって聞こえたから……これ、やめません? 恥ずかしいんですけど」
「頑張って、月読先生!」
「……月読先生ね! 不死の力って聞こえたから来ちゃった!」
頑張った月読に、夏樹と小梅が拍手する。
月読は恥ずかしかったのか、顔が真っ赤だ。
「アマイモン、おひさー! 杏もおひさー! よう、ガープ」
「俺だけ扱いが違う! ガープさんと呼べ!」
「嫌だよ」
「素直!」
「んで、あのいろいろキマった感じの子は誰かな?」
急に現れた夏樹、小梅、月読はふざけているようで獅子山から一切警戒を外していない。
強い弱いではなく、彼の力が異質であると感じ取っているのだ。
「よくわからねえが、松島明日香の婚約者らしい」
「誰だよ、それ!?」
「……うーん、そこからかぁ。ガープさん困っちゃうなぁ。杏、バトンタッチ!」
「え!? 杏が!?」
杏は無茶振りされたと悩むが、ガープよりも杏の方が付き合いが長い。
異世界でアマイモン一派にも接触してきた明日香だが、彼女の言動と性格から相入れず放置だった。
「えっとね、お兄ちゃん」
「うん」
「松島明日香さんは、自称お兄ちゃんの幼馴染みで、自称彼女で、三原優斗の取り巻きに見せかけて学校のバスケ部の男子を食べまくっていたやばい子で、異世界でお兄ちゃんに倒された奴!」
「――っ、頭が」
「お兄ちゃんの脳が拒否しているの!? ほら、水無月都さんとお兄ちゃんが月読先生に密告して行為中がバレて転校扱いになった人だよ!」
「駄目だ、思い出せない」
「……ガープさん、駄目だった」
「まじか!」
残念ながら夏樹の脳が松島明日香を思い出せなかった。
もしかしたら思い出す以前の問題で、記憶されていない可能性もある。
しかし、その追求は杏たちにはできなかった。
「えっとね、まとめると、お兄ちゃんにちょっかい出していた杏のもっと強化版みたいな人に毒された人がそこの獅子山くんなの!」
「杏さん、自虐すぎじゃない!?」
「いいの! 事実だから! それで、その獅子山くんは新たな神々に不死をもらったみたいで、松島明日香を殺した私たちを殺すんだって!」
「説明サンキュー!」
松島明日香を思い出せずとも、現状を把握できればいい。
夏樹は急に人が増えたせいで硬直している獅子山の前の前に立った。
お互いに間合いの距離に詰めた夏樹は、獅子山に顔を近づける。
「こんばんは、獅子山くん。松島明日香だっけ、その人、俺がぶっ殺したらしいよ?」
「……知っている! 知っているぞ、由良夏樹ぃ! 明日香の婚約者としてお前を殺す」
「中学生なのに結婚の約束なんかして、やめとけ。どうせ一年くらしたら別れるって」
「……お前、愛を知らないのか?」
「愛、愛ねぇ。愛か……う、頭が」
「哀れな奴だ。愛を知らずして、何を理由に生きる? 誰もが俺と明日香のような高潔な愛を持つことができないとわかっているが、人として最低限の愛を持つくらいしようと思わないのか?」
「御高説どうもありがとうございましたぁ! お礼に、なっちゃん、全力で殺してあげるねぇ!」
散々、言いたい放題言われた夏樹はイラつきを隠さずに獅子山の顔面を殴った。
獅子山の身体は縦に一回転して、再び夏樹の前に立った。
鼻が陥没し、大量の血が流れている。
「おお、すごいな。くるっと一回転しちゃったよ! じゃあ、次は横にどうぞ!」
拳が再び拳が獅子山の顔面を捕らえ、横に数回転して地面に倒れた。
倒れた獅子山はぴくりと動かない。
気絶したようだ。
「あのね、アマイモン、ガープ、仮に不死だったとしても気絶させて運ぶとか、気絶している間に、どこかに封印するとかやりようがあるでしょう!」
「あ」
「――あ」
「こんなやべー奴とまともに戦ったって時間の無駄だよ!」
珍しく夏樹がまともなことを言ったので、小梅と月読、杏は拍手してしまった。