作品タイトル不明
27「高い店って緊張しね?」
月読命と素盞嗚尊によって死の神は預かりとなった。
死の神は協力的であるので、すぐに解放されるだろう。
「由良夏樹様、皆様。わたくしの行動のせいでここまでのことになってしまい申し訳ございませんでした。このお詫びはいずれさせてくださいませ」
「あー、うん。あんまり気にしなくていいよ。ありすさんだって悪意があったわけじゃないんだし」
「そうじゃのう。何方かと言えば、裏切り者のせいじゃろうて」
「そう言っていただけると助かります」
倉庫から離れた潮風の香りがする港の一角で、ありすは夏樹たちに謝罪していた。
とはいえ、夏樹たちは気にしていないし、ありすも月読ファミリーの仲間に加わったのだから、細かいことは気にしなくていいと思っている。
「ま、問題のある奴らは片っ端から倒し、一番厄介だった死の神とももう戦わずに済んだんだ。結果だけ見れば、悪くないだろ。百合園も過ぎたことを気にするな。あんたじゃなくて、「帝国」と新たな神々が悪いんだ」
「……七森様、そう言っていただけると助かります」
「おう」
千手的には、「帝国」の人間が少しでも減ったことに安堵している。
そして、死を司る神と今後戦わなくていいと考えただけで心から安心する。
正直、夏樹のような規格外な人間ではなく、あくまでも一般的な範疇にいる千手には新たな神々は荷が重すぎるのだ。
「……あの、結局、どこにも人外娘さんがいなかったんですけど」
「佐渡ぃ、初めからそんな要素はどこにもねえよぉ!」
「がーん!」
祐介が膝をつき、俯いた。
地面にポタポタと涙が流れている。
正直、ドン引きだ。
「でも、夏樹くんたちが無事でよかった」
「とらぴーお腹減った!」
「パパも!」
一登は夏樹たちの無事を安心していたが、虎童子と七森康弘は自由な発言をしている。
夏樹たちは笑った。
「一登たちも、加勢しに来てくれてありがとう! ついでだから、昼ごはん食べたら「帝国」を襲撃しようぜ!」
「由良ぁ! イベント拒んでいる奴が自分からイベント始めようとするんじゃねえよぉ!」
「夏樹くん、僕ももうお腹いっぱいだよ」
「人外娘がいるなら付き合うけど……きっといないんだろうなぁ」
結局、「帝国」への襲撃は中止となった。
「まあええじゃろう。とりあえず、腹が減ったんじゃ!」
「では、わたくしにご馳走させてくださいませ」
ありすが小さく手を上げた。
「ええんか!?」
小梅が驚きながらも、ちょっと嬉しそうだ。
「ええ、もちろんですわ。わたくしがよく行く料亭に行きましょう」
「…………え? 今、料亭って言ったんじゃが?」
「料亭」という単語はあまりにもお高そうだった。
庶民派天使は緊張に震える。
「ちょうどよく多聞がマイクロバスに乗って迎えにきてくださいました」
「たもんたもん! 皆様をお送りしようと、リムジンではなくマイクロバスで戻ってきましたでたもんまもん! ささ、たもんたもんとお乗りください!」
「相変わらず語尾が強いのぉ!」
とはいえいつまでも港にいても仕方がないので、夏樹たちはマイクロバスに乗ってありすの案内で、向島市にあるとある料亭に向かった。
想像していたように、庶民な夏樹たちには一生縁がないのではないかという素敵な料亭で、料理はめちゃくちゃ美味しかった。
でも、一体おいくらなんだろう、と気になって気になって、きまずかった。