作品タイトル不明
15「ガチで戦うんじゃね?」③
雷に絡め取られ、身体中を貫き斬られた死の神は絶叫した。
全身を雷で斬り刻まれているのだ、神であっても耐えられないのだろう。
夏樹は静かな目をして死の神を見る。
「由良夏樹ぃぃいいいいいいいいいいいいいい!」
死の神は夏樹の名を叫びながら、身体に絡む雷を引きちぎっていく。
雷によって指が爆ぜるが知ったことではないと再生してまた雷を引きちぎる。
死の神は知らないが、この雷はもがけばもがくほど死に近づいていくのだ。
夏樹が星槍を高く掲げると、今まで以上の魔力を発した。
「――煌めけ、蒼穹の星槍」
夏樹は思い切り星槍を振り下ろした。
今、できる全力の一撃が死の神を襲う。
彼を拘束する雷ごと死の神を消し飛ばした。
雷は一筋の閃光となって倉庫の半分を死の神と共に吹き飛ばす。
「あ、やべ」
閃光が倉庫を超えてさらに港に向かう。
途中建物があることに気づいた夏樹は、自身が放った閃光を操ろうと力を込める。
――が、それよりも早くいつの間にか張られていた不可視の結界に閃光が激突し、轟音を立て、地面を揺らした。
「これきついぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「ぐっ、あぁああああああああああああああああああああ!」
結界を張り夏樹の一撃を受け止めてくれたのは素盞嗚尊と月読命だった。
しかし、神々であっても、一撃を止めるには厳しいようだ。
無理もない。完全な受け身で、ただ耐えるだけの結界である以上、負担は大きい。
「素戔嗚、結界は任せて夏樹くんの一撃を相殺してください」
「え、でも、兄ちゃん」
「少しなら耐えられます! 早く!」
「あいよ!」
素盞嗚尊は倉庫の中から結界を生む月読から離れると、倉庫の外に出て夏樹と蒼穹の星槍から繰り出された一撃に結界を挟んで向き合った。
そして、剣を構えて神力を込めた。
「――天叢雲剣ぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」
金色の光を解き放った天叢雲剣の一撃は、結界を破り、蒼穹の星槍の一撃を完全に相殺した。
「――ふう。毎日プランク三十秒やっていた甲斐があったな」
笑みを浮かべて親指を立てた素盞嗚尊に倉庫の中にいる全員が拍手をした。
「――ふざ、けるな! 私は、負けていない。まだ、戦える。まだ、死んでいない!」
死の神はまだ、生きていた。
下半身が消え、上半身も左腕がない。
それでも、目を血走らせて這いずってくる。
「私は、あの子を救わなければならない……だから、由良、夏樹を、殺し、金を得て、あの子に、治療を」
夏樹は蒼穹の星槍を下ろした。
真面目に話を聞こうと思ったのだ。
初めから助けたい子がいるということは言っていたのだが、その代わりに夏樹の命を奪われてはたまったものではない。
だから戦った。
夏樹は自己犠牲をするような愚か者ではない。
自己犠牲をするくらいなら、もっと別のことを考える。
そもそも夏樹が気に入らないのは、人の命を奪って誰かを救おうとしていることだ。
自己犠牲は嫌いだが、それほど救いたい人がいるのなら、まず自分を犠牲にしてみろと言いたい。
もしくは、「助けてくれ」と言えばいい。
たった一言を言えず、命を奪おうとしてくる死の神を夏樹は心底嫌悪した。
「――もうあんたも力はないだろう。話してみろよ」
夏樹にとって、これが最初で最後の慈悲だった。