軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9「合流じゃね?」

月読と素盞嗚は爆発した倉庫に向かい走った。

「夏樹くん! みなさん!」

「なっちゃん! 俺の大親友なっちゃん! そして俺のファミリーたち! 無事か!」

倉庫の屋根は吹き飛び、海に浮かんでいる。

力が上に逃げたので周辺には細かなアスファルトの破片が飛んでいて、近くに停まっていた車の窓ガラスが割れ、破片で車体に凹みがあった。

倉庫の中に入ると、瓦礫に覆われており、誰がどこにいるのか視認できない。

月読がそれぞれの力を探ろうとした時、

「だらっしゃぁあああああああああああああ!」

瓦礫を蹴り飛ばし血だらけの夏樹が現れた。

彼の背後には結界に覆われた小梅たちがいる。

全員怪我はないようだ。

むしろ一番大怪我をしているのが夏樹だった。

「がるるるるるるるるるるるるるるるるるるるっ」

「な、夏樹くん?」

「マイベストフレンドなっちゃん?」

瓦礫の上に四つ這いになって着地した夏樹が、獣のように唸っている。

「気をつけるんじゃ! 今の夏樹は、ガチの殴り合いしたせいで野生に帰っとる!」

「どういう意味ですか!?」

小梅の説明を理解できず月読が叫ぶ。

「近づくと噛まれるんじゃ!」

「どういう意味ですか!?」

やはり月読は理解できなくて叫ぶ。

すると素盞嗚尊が前に出た。

「兄ちゃん、俺に任せてくれ。前世から来世どころか未来永劫親友のなっちゃんなら、俺を噛むなんてことはなはずだ!」

「素盞嗚……私にもそれはフラグだってわかるんですけど! ちょっと、やめなさい!」

月読が止めたが、弟は聞かなかった。

「なっちゃん、俺が来たぜ!」

「がぶっ!」

「痛いっ!」

「ぐるるるるるるるるるるるるるるるるるっ」

差し出された素盞嗚尊の手を夏樹が思い切り噛んだ。

「怖くない、怖くないよ……怯えないで……っていてぇえええええええええええええええええ! めっちゃ本気で噛んでるぅうううううううううううううううう! ――っ、まさか俺を信頼しているからこそ全力で噛んでいるんじゃないか!? つまりこの痛みは親友の証!」

「……そんなことないでしょう。ほら、夏樹くん、噛むのをやめなさい」

「がう!」

月読に注意されて、夏樹はゆっくり噛むのをやめる。

しかし、警戒は続けているようだ。

「ええ加減に正気に戻らんかい!」

翼を広げて飛び立ち、一回転した小梅が夏樹の頭に踵落としを決めた。

「がぺっ」

「ちょ」

「――あ」

綺麗に踵落としを喰らった夏樹が瓦礫の上に倒れた。

一分ほど静かにしていると、むくり、と起き上がる。

「――っ、小梅ちゃん、みんなは無事か? 月読先生? すさすさも、来てくれたんだね!」

「おう、正気に戻ったんじゃ。安心せい、奴らはお姉ちゃんの結界の中で守られておるぞ」

「よかった。――んじゃ、みんなで死の神をフルボッコにしようぜ!」

「……ちょっと待ちなさい!」

「いやいやいや、なっちゃん! 野生に戻ったのはなかったことになってるの!?」

「野生に戻るって、生まれてこの方、シティボーイのなっちゃんが野生に帰るわけがないでしょう!」

「いや、向島市は決してシティとは言えねーんだけど。いや、良い街だと思うけどさ!」

夏樹たちがいつも通りにやりとりをしていると、瓦礫の中から死の神が現れた。

上半身の衣服は破れているが、傷は綺麗に再生している。

「やってくれたな、由良夏樹!」

怒りを宿した死の神に、夏樹はにんまりと笑った。