作品タイトル不明
1「自分を特別だと言う奴ほど痛々しくね?」①
「……柏原保、あなたのことは聞いています。「帝国」内でも幹部クラスであると」
「月読命様のご認識していただき光栄です」
「しかし、なぜ同じ「帝国」の人間を殺したのですか?」
亡骸を前に、月読の声が硬くなる。
「ああ、彼らは「帝国」の人間ではありません。先日、少し揉めてしまいましてね。なんでも自由に力を使いたいようです。我々は、極力力を使って目立つようなことをするなと言いつけているのですが……所詮は心の弱い、たまたま異世界で力を得ただけの人間です。どしても力を使って自分が特別であると示したいようです」
「だから殺した、と?」
「その通りです」
「しかし、私の知る限り、あなたたち「帝国」はそれなりに好き勝手にしているようですが?」
実際、「帝国」のトップである「皇帝」は己の好きなように力を振るい、命を奪っている。
目の前の保も、七森千手に接触し、勧誘が失敗すると攻撃をした。
お世辞にも、目だないようにしているとは思わない。
「そう言われてしまうと、困りますね。きっと我々の言葉は、月読命様に通じないでしょう」
「参考までに言ってみてください」
「……では、お言葉に甘えまして。――私たちは特別なので自由にしていいのです」
「なるほど。確かに、通じませんね。何を言っているのかまるで理解できない」
結局のところ、柏原保も自分が選ばれた人間であると思い込んでいるようにしか見えない。
月読からすれば、本当に選ばれた人間というのは「由良夏樹」のような存在だ。
たまにいるのだ。
様々なトラブルに愛されてしまう人間が。
そして、「由良夏樹」だけではなく、彼の周りにいる人間、魔族、神、そして宇宙人を含めた彼らこそが「選ばれた者」なのだろう。
「とても残念です。私たちは選ばれた人間であり、これからの未来を切り開く者なのですが」
先ほどから素盞嗚尊が口を押さえて膝をついている。
必死に笑いを堪えているのがよくわかる。
月読も真面目な空気なので笑うことはしないが、自称選ばれた人間で、未来を切り開くなどと言われたら正直吹き出してしまいそうだ。
「ひとつ参考までに聞かせてください。あなたたちが選ばれた人間だと言いますが、何に、誰に選ばれたのでしょうか?」
「――無論、この世界に」
月読は頬の内側を噛んで笑うのを耐えた。
しかし、素戔嗚尊はついに「ぶはっ」と吹き出してしまった。