軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

79「嫌なことを丸投げする奴は仲間じゃなくね?」①

小梅と花子を乗せたリムジンは、向島港にあった。

「……なーんで隠れ家とかこそこそ集まる場所って港なんじゃろうか?」

ありすと多聞は車内にはいない。

「帝国」の仲間たちと会う予定をしていたので、小梅たちがついてきたのだ。

ありすは仲間たちと会う前に夏樹と接触した上で、今後の方針を決めようとしていたようだが、小梅と花子に説得されてひとりで抱えるのではなく、助けを求めることとなった。

だが、仲間たちが何も考えておらず、ありすに丸投げしているのであれば、きちんと話し合うべきである。

小梅と花子としては、そこまでが妥協できるラインだ。

話し合って、それでもありすに何もかも押し付けようとするのであれば、いくら助けてと頼まれても助けたいとは思わない。ありすだけ助ければいい。

「知らないわよ。あ、でも、港って人の出入りもあるし、物も移動できるから悪さするにはいいみたいよ」

「ほう」

「海外ドラマでやっていたわ!」

「……海外ドラマでの知識を披露されても、俺様にはフィクションかノンフィクションかわからんのじゃが」

「きっとノンフィクションよ。ま、私みたいなスーパー天使からすれば、港ごと吹っ飛ばせばいいだけの話なんだけどね」

「まったくじゃ。むしろ一箇所に集まるとか、攻撃してくれと言っているようなもんじゃろうて」

姉妹の物騒な話を、聞きたくなかったが聞いてしまったリムジンの運転手が「はわわわわわ、この方たちバイオレンスっ!」と怯えているが、小梅たちは気づいていない。

「さてと、ありすと多聞はどうなったかしら」

「さあのう。多聞はたもんたもん言っとる印象しかないんじゃが」

「……彼女はどうしてまもんまもんみたいな感じになっているのかしら」

「俺様が知るわけないじゃろうて」

「水無月家に、八咫柊ちゃんがいるのよね」

「あー、おったのう」

「そっくりなんだけど姉妹かしら?」

「俺様の記憶じゃと、柊は別に語尾がひいらぎひいらぎではなかったはずなんじゃが」

「別に喋り方で姉妹かどうかを判断しているわけじゃないよ!?」

水無月家の八咫柊と眼帯をしていることや、顔立ちがよく似ているため八咫多聞が血縁者ではないかという話をしながら小梅と花子はリムジンを降りてありすのもとに向かった。

「――というわけで、わたくしは助けを求めることにしました」

ありすは夏樹や小梅、花子の直接的な名前は出さず、自分ではもう「帝国」にも「新たな神々」にも対応しきれないので助けてもらうこと提案した。

しかし、ありすと同じ境遇の少年少女たちの反応は鈍かった。

「あのさ、ありすさん。ありすさんに私たちはお願いしたよね。なんとかしてくれって」

「はい。わたくしはできる限りのことをしました。その上で、無理でした」

「それってさぁ、努力不足ってこと? もっと頑張れなかったの?」

ありすの「帝国」に所属するのは十人だが、この場に集まっているのはありすを含めて五人だけ。

残り五人は連絡すら取れない。

身を隠しているのかどうかさえわからない。

いつものありすであれば、必死になって探したのかもしれないが、今は不思議と気にならなかった。

「……わたくしが、悪いとおっしゃるのですか?」

「違うの?」

ありすに突っかかるのは、茶髪をショートカットにした十五歳ほどの少女だ。

ジーンズに、パーカーといったラフな出立である少女の耳にはいくつものピアスがつけられている。

「違います。わたくしはすべきことをしました」

「はぁ。意味わかんない、ありすさんって私たちのリーダーでしょ? ならちゃんと責任をとってよ」

「責任とは?」

「私たちの身の安全の保障をなんとかするとかさ」

「ですから、それを話すために」

「だから、私はさ! ありすさんに任せたんだから、大丈夫って報告を聞きたいの。困ったことになりましたとか、失敗しましたとか、そういう話はいいから。助けを求めるのならありすさんがやって、私たちのことをなんとかしてって話なの!」

「――――っ」

「お前たちは、ありす様に何もかも丸投げするでたもんたもん!?」

心無い少女の言葉に、ありすが沈黙し、多聞が激昂した。

しかし、少女は知らないとばかりに鼻を鳴らす。

「え? だって、ありすさんがリーダーでしょ? 「帝国」のやり方についていけないからって私たちと一緒に離反したんだから、新しい「帝国」のリーダーとして導く義務があるじゃん」

「……一緒に悩んでくださらないのですね?」

「だーかーらっ、それはありすさんの役目でしょう?」

「ならば、戦うと決めたら戦ってくれるのですか?」

「あのさ、戦うって言うのなら前の「帝国」と変わらないじゃん。それが嫌だから離反したんでしょ? なら、それはありえないじゃん」

ありすは拳を握りしめた。

気づかないふりをしていたが、仲間だと思っていた人たちは、ただ面倒ごとをありすに丸投げしていただけだったのだと、気づかないふりをしていた真実に気づいてしまった。

「おうおう、酷いのう。あれも嫌、これも嫌とはとんだわがままさんじゃろうて。俺様もわがまま美少女じゃが、おどれほど理不尽なことは言わんぞ!」