軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

71「大金って目の前にあるとビビらね?」②

「さあ! いくんじゃ! 今すぐいくんじゃ! 帝国? なんじゃそれ? 美味しいんか!? この小梅様のスーパー小梅パンチでぶっ飛ばしてくれる!」

一千万円を前に、小梅のテンションは上がりまくっていた。

帝国など怖くない。

「俺様は、正義のために戦う美少女天使なんじゃからのう!」

「とても頼りになりますわ!」

「――たもんたもん」

ありすと多聞は、想像以上に小梅がお金に食いついてきてくれたことに内心でガッツポーズをしていた。

異世界帰還者とは交流があるありすだが、天使という超常の存在と会うことは初めてだった。

由良夏樹を含めて、彼を取り巻く人々は異質と言えた。

情報を集めれば集めるだけ、ありすは頭を悩ませた。

それでも、「金」というわかりやすいもので動かせることは大いに助かる。

金で人を動かすと、金が無くなったときに何も残らない。

できることなら、信頼や情で力になって欲しかったが、ありすには小梅たちと関係を構築する時間がなかった。

それもそのはず、ありすが異世界から帰還したのが二年前だが、当時は良くも悪くも由良夏樹の名こそ轟いていたが、彼が現在親しくしている人たちの名はまったく上がらなかった。

唯一、夏樹と共に聞こえてくるのが、向島四大天使である三原一登だ。そんな彼も、悪名高い三原優斗のせいで苦労しているという情報の方が多いくらいだった。

現在の、夏樹は異世界から帰還した勇者であり、周囲には天使をはじめとした超常の存在がいる。

彼に何が起きたのか情報を精査して遡ってみると、霊能力者の一族である水無月家と接触を持ったのが一ヶ月ほど前だった。

もともと様々な場所で由良夏樹が出没し、大暴れしているので、裏稼業の人間ではなくともグレーゾーンな場所にいる夏樹だったが、本格的に「こちら側」に足を突っ込んだのは最近であるとありすは結論付けた。

由良夏樹を取り巻く情報は、冗談かと思うものばかりだ。

おそらく、誰かが情報に手を加えることで真偽不明にしているのだとアリスは推測している。

例えば、由良夏樹が山を消し飛ばしたといういくら勇者としての力があったとしても常識的にやらないだろうという情報がはじめに出てくる。

次に、ビルを破壊した、というやはり非常識な情報があった。

他にも、夕方の河川敷で河童と戯れている。急に「ギャラクシー」と叫ぶ。詳細は不明だが「ぬらぬら」と叫ぶ老人と追いかけっこしていた。ハリウッド俳優顔負けのイケオジと追いかけっこしていた。宇宙船から降りてきた。美脚が大好き。と、どれも胡散臭いものばかりだ。

間違いなく夏樹の勇者としての力を隠すために、理解不能な情報を流しているとしか思えなかった。

ありすには、時間がない。

「帝国」の一員として「皇帝」に従うか、新たな神々に利用されるかどちらかを選ばなければいけない時間がもうすぐそこまで迫っている。

ならば、由良夏樹の情報が掴めずとも、第三勢力と接触するべきであるとありすは判断した。

無論、無条件に由良夏樹を信用しているわけではない。

しかし、あの由良春子の息子なのだ。

それだけで賭けてみる価値はあった。