軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61「相手を知ることって人間関係で重要じゃね?」①

風の神がホラーさんを立たせると、砂を払ってあげてビーチチェアに移動した。

ふたりは夏樹をちらちら見ながら話をしている。

不思議なことに、ホラーさんも風の神とは会話が成立するらしい。

「……暇だな。女性のお話をジロジロ見るのは紳士じゃないし。――っ、そうだ! 釣りをしよう!」

くわっ、と目を見開いた。

あの陽キャの神である海の神が作った空間だ。

なぜか自分の中に大きなマヒマヒもいるので、釣り道具がどこかにあるのではないかと思う。

「……釣竿はどこかなー。あれ? もしかして、ビーチではなく外にあるのかな?」

思い返せば、風の神が焼きそばを買いに行くことのできる施設があるはずだ。

夏樹の中にそんなものがあること自体がかなり怖くはあるのだが、確認したいとも思ってしまう。

あと、焼きそばを焼く人がいるということは、もうひとりくらい夏樹の中に誰かが潜んでいることになる。

「……釣竿の前に、俺の中に不法侵入と不法滞在キメてる奴を暴くしかないな! ――義政先生の名にかけて!」

正直、怖い。

もし、まったく知らない人がいたらどうしようと不安だ。

そもそも海の神、炎の神、大地の神、風の神だってまったく知らない神なので驚いたのは言うまでもないが、姿を見せずに焼きそばを焼き続けていた「誰か」がいることがめちゃくちゃ怖い。

「最悪、ウィジャボードアタックをするしかないな」

しっとりとしたウィジャボードを握りしめると、夏樹はビーチから出ようとする。

「ちょちょちょちょちょちょ、待って! 待ってください! どこに行くつもりですか!?」

「え? ビーチの外だけど」

「…………それはやばいです」

「――――やばいの!?」

風の神の言葉の意味がわからない。

なぜビーチの外に行くのがやばいのか、不明だ。

ここは夏樹の中である。

心なのか、夢なのか、それともどちらでもあるのかあやふやではあるが、それでも夏樹の中であることはかわらない。

むしろ、夏樹の中に「なにかやばい」ものがいるのだか、あるのだかしている方がよほどやばい気がする。

「夏樹くんにはまだ早いです。今は、その時じゃありません」

「俺の中に何が起きているの!? 誰かいるの!?」

「……私には何かを言う権限がないんです」

「どういうこと!?」

「それでも、唯一言えることは、ビーチから出てはいけないということです!」

「……逆にビーチから出たい欲求が強くなったんだけど、どうすればいい?」

「我慢してください! ほら、お姉ちゃんとお話が終わったので、ビーチの外のことは忘れましょう! ほらほら、こっち来てください!」

「いや、ちょ、そこまで言われて確かめないのはなっちゃん的にちょっとありえないというか」

「いいから来るの!」

夏樹は砂浜をずるずる引きずられて、ホラーさんがいるビーチチェアの前に正座させられた。

「いや、熱いよ!?」

「椅子はお姉ちゃんと私が使うので、我慢してください。男の子でしょう」

「だ、男女差別だ! 男女平等じゃないと組織に狙われるよ!」

「なんですか、組織って。とにかく、お姉ちゃんと話をしました。お姉ちゃんは凄まじい人見知りですが、頑張って夏樹くんと話してくれるそうです。ただし、ウィジャボードは禁止です」

「……大地さんがくれたウィジャボードなのに」

「なんで愛着もっているんですかね!?」

「それは俺も不思議」

仕方がないので、夏樹はウィジャボードをそっと砂に埋めた。

「お姉ちゃんは言葉が足りないことがあるので、私がサポートします」

「お願いします」

「はい。では、どうぞ、お姉ちゃん!」

「…………………………………………………ご趣味は?」

「なんかお見合いみたいなこと言い始めちゃった!?」