軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「さまたんが平和じゃね?」

――青森某所。

「マモンがいないだけで空気が引き締まるっていうか、いい感じに農業に集中できるんだけど!」

「本当よねぇ」

早朝から畑の手入れをしていたさまたんと愛ちゃんは、「まもんまもん」とやかましい奴がいないだけで静かで良いと感じていた。

まもんまもん、とうるさいのはさておき、動画配信のために常にカメラを装備していたので、おかしなことはできないと緊張していた。

そのカメラがないだけで、のびのびとできる。

「――思い返せば、少し動画を撮ることにムキになっていたきがする」

「さまたん?」

「私はもともと、恩人であるおじいちゃんとおばあちゃんから譲り受けた畑を守っていきたいと思っていたのと、ちょっと記録を残したいと動画を始めただけであって、動画配信者として生計をたてたかったわけじゃないんだ」

「……動画の収益絶好調だけどね」

「……それね。本当に、そうなんだよ。最近だと真面目に農業の話を聞いてくれる人も増えて、マモンと違って私のファンも増えてくれて。……第一のファンはかずたんだけど!」

「はいはい」

「この間なんて、さまたんグッズ作りませんか、って。いらないだろ、私のポップな絵が入ったタンブラーとか、さまたん、と書かれたTシャツとか!」

「需要あるかもしれないわよ?」

「マモンでさえ、まもんまもんと言いながら神より信仰を集めるわけにはいかないでまもんまもんと断っていたぞ」

「……うん、確かに、魔族のくせに崇められまくっていておかしな方向に進んでいるわよね。噂だと、数人いた動画の神がみんな「まいりました、まもんまもん」と言って消滅したらしいとか」

「なにそれ!?」

「しらね!」

さまたん的には、かつては魔族というだけで蛇蝎の如く嫌われていた時代があったというのに、今は人間が柔軟だなぁ、と感心してしまう。

中世の時代の欧州を思い出すと、魔族であると疑われたら最後だった。

さまたんによくしてくれた人も、魔族に魅入られたなんだと理由をつけて殺されてしまった。

そんな経験があったから、現代までずっと孤独でフラフラしていたのだが、日本でこうして生活し、動画配信までするとは思わなかった。

「動画の神とかいるなんて、……ある意味、いい時代なのかもしれないわね」

「言っておくけど、日本だけが極端に受け入れる器が広いだけだからね」

「それは、わかる」

多方面で大らかであるのが日本だ。

それに甘えたり、利用したりしようとする者もいるにはいるのであるが、日本の大らかさに救われている者も多い。

その筆頭が神や魔族だろう。

「……だからって、まもんまもんグッズとかさまたんグッズはやりすぎだと思うんだけどなぁ。私、サマエルだよ? ググったら出てくるレベルのやべー魔族だよ?」

「マモンもサタンも、リヴァイアサンも、みんな同じだけど、やりたいように生きてるじゃない」

「あいつらがフリーダムすぎるんだよ! 私は根が真面目なんだよ!」

「贅沢な悩みねぇ。いっそ、さまたんの時代が来たぜっ、てやりたい放題すればいいのに」

「それができたら苦労しないよ。――って、おい! 周平! お前、その頭につけているカメラは何だ! 朝早くから頑張っているなって感心していたけど、マモンに頼まれて動画回していただろ! ちょっと、こっちこい! 怒らないから! さまたん、怒らないからこっちに来なさい! あ、こら、逃げんなぁああああああああああああああ!」

よく働く青年――周平がカメラを装備して仕事をしながらこちらを撮影していることに気づき、さまたんはダッシュした。

「青森って平和ねぇ。いずれ私もここから出て、やることをやらなきゃいけない日が来ると思うと、ちょっと残念ね。――なんて意味深なこと言ってみたりして! みちゃったりして!」

――今日も青森は平和だった。