軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

100「下駄箱にラブレターってもう古くね?」

由良夏樹は通学路を慌てて走っていた。

「遅刻しちゃう!」

すでに遅刻しているのだが、ノリは大事だ。

まだ間に合う、と思っていないと、足が進まない。

遅刻したことをはっきり自覚してしまうと、遅刻したなら今日はサボっちゃえ、と考えてしまうのだ。

「まったく、毎日がイベントで忙しいなぁ! いつもなら一登から連絡あったのに、今日は用事で休むって言われていたのを忘れていたよ。――つまり、死の神が悪い! あの神めぇ、次にあったら絶対に殺す。絶殺!」

とりあえず死の神のせいにしながら学校にたどり着いた。

すでに閉まっている校門をひょいと軽々と飛び越えると、下駄箱で上履きを履き替え、硬直した。

「――ラブレター、だと」

夏樹の下駄箱には、ハートマークのシールが貼られている可愛らしい便箋が入っていた。

まさか、と思いながらも周囲を窺ってからそっと便箋を手に取る。

宛名はない。

もしかしたら、ラブレターと見せかけて、中にカミソリが入っているかもしれないので油断はできない。

まさか自分が令和ではまずないラブレターを受け取るというビッグイベントを経験できると思うと、自然と胸が高鳴る。

恐る恐る便箋を開くと、そこには、

――放課後の個別指導のご案内について。

と、学校の神こと萌乃萌葱の名が書かれていた。

「はぁ」

夏樹はがっかりすると、便箋を丸めて近くにあったゴミ箱に投げ入れた。

「無駄な時間を使ったじゃん。早く授業授業っと」

「うをぉおおおおおおおおおおおおおい! なぜ捨てる!」

「あ、萌葱先生だ。ういーっす」

「おはようございます、だ」

「おはようごじあーまもんまもん」

「急に動画の神の語尾を真似するな! 怒るぞ!」

「いつの間にか、マモンさんが動画の神になっている件について」

下駄箱の影から、萌乃萌葱が現れた。

「なぜ私からの手紙を捨てた!? 酷いぞ!」

「いや、いたずらかと思って」

「名前まで書いたのに!?」

「だって、個別指導が伝説の木の下って、いたずらか、いかがわしいことされるかのどっちかじゃないかなって」

「わ、私は教師だぞ! 誇りある教師が生徒に対していかがわしいことなど、七割くらいしか考えていない!」

「ほぼいかがわしいこと考えてるじゃん! エッチじゃん! 思春期の中学生だって、五割くらいだって!」

「いや、思春期の中学生は九割スケベなことを考えているだろう。なぜ男子たちは辞典に載っている身体の仕組みにマーカーを引くんだ?」

「あれ、本当になんでだろうね!? 俺はやったことないけど、どんな意味があるんだろう!?」

言われてみれば謎すぎる。

「それはそれとして、私の個人指導の前に――月読先生が職員室でお待ちだ」

「何もしてないのに、怒られるの!?」

「……怒られる前提でいる時点で、何かしら心当たりがあるのではないのか?」

「ぎくっ」

「私もそれなりに生きているが、ぎくっ、って口に出した人間を初めてみたぞ!」

「あの、僕、授業に出ないと死んじゃう病気なので、月読先生には三ヶ月後の放課後にお伺いしますとお伝えしてくだ」

「なぜ三ヶ月後なんだ? ほら、早く来い!」

逃げようとする夏樹の襟首を萌葱が掴むと、ずるずると引きずり始めた。

「助けてぇ!」