軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

94「勇者でもホラー展開は怖くね?」①

「あー、怖かった!」

夏樹はシャワーを浴びていた。

まだ早朝で、小梅たちは起きていない。

朝食の支度をするサタンや、農作業をしていたので早起きが日課になっていたマモンは起きて行動しているが、みんなは夢の中だ。

夏樹はこっそりシャワーを浴び、寝汗を流していた。

――断じて漏らしたからシャワーを浴びているわけではない。

実際、出ちゃうかと思ったのは内緒だ。

シャンプーをして、身体を泡だらけにしながら夏樹は考える。

夢の中に出てくる彼女は何者なのだろうか。

とにかく怖いしか印象に残らないが、夜の海と彼女の言動から、もしかしたら夏樹が持つ「海」の力なのかもしれない。

夏樹は異世界で「聖剣に選ばれた勇者」であるが、それ以前に「海の勇者」である。

ただし、夏樹に宿る「海」の力はあまりにも強すぎて制御ができなかった。

聖剣さんこと、「蒼穹の星槍」である星子が制御を手伝ってくれることで初めて力を使うことができる。それでも万全な状態ではない。

何よりも、星子が海の力を使うことを嫌がるので使わなかった。

異世界において、意思疎通のできる星子と二人三脚で戦ってきたので、夏樹としても彼女の意に反して海の力を使うことはしなかった。

実際、夏樹は星子の本来の姿である「星槍」を開放せずに魔王と、彼女を操っていた魔神を倒しているのだ。

そして、地球に帰ってきてからも、海の勇者としての力は数える程度しか使っていない。

いくつか限界を超えて肉体が支払う代償を無視しなければ倒せなかった茨木童子との戦いで、星子のサポートを受けて海の力を使ったが、あれだって一部の力だ。

もし、夢に出てくる彼女が海の勇者としての力であり、その力を使うことでさらに強くなることができるのであれば――。

(って、考えるけど、それ以上にレベルアップの方が気になっちゃう! ちゃんとレベルアップしたなーって思ったら、急にツンデレだったし! 王道みたいなツンデレだったし! 星子さんとか青春すみれさんとかレベルアップの声さんとかなんでみんな王道ツンデレなの!? ファンタジー業界でツンデレ流行っているのかな!?)

レベルアップを告げてくる声が、日に日に感情を持っていることも、急にツンデレになったことも気になる。

夏樹的には、そもそも自分のレベルがいくつなのか教えて欲しくてたまらない。

もしかしたらレベルアップに応じてパワーアップしている可能性もあるのかもしれないが、それを確かめることができないことが残念でならない。

一度は幻聴かと思ったレベルアップの声も、同じ勇者の一登や杏にも聞こえたと言う。ならば幻聴ではない。

「……うーん、こういうことって誰に相談していいのかわからないしなぁ」

魔王サタンは信じてくれないし、月読もそんなことがあるのかと驚いていた。

ゴッドはあまり役に立ちそうではないので、自分でなんとかするしかない。

もしかしたら、ツンデレからデレデレになるかもしれないのだ。

「その内、俺の隠された力と一緒にわかるかもしれないから、楽しみにしておこう!」

切り替えは大事だ。

いつまでも答えが出ないことを考えていても仕方がない。

夏樹は、身体中の泡を落としてから、気合を入れるために、ぱぁんっ、と尻を叩く。

タオルを手に取り、頭から身体まで順番に拭いていく。

髪を乾かそうと、浴室から出た夏樹は鏡の前に立ち息を飲んだ。

「――ひゅっ」

夏樹の首には絞められたような手形のアザがくっきりと残っていた。

――夏樹は、その場で気絶した。