作品タイトル不明
74「ジェイソンさんには不思議がいっぱいじゃね?」②
ジェイソンの説明が続く。
「なっちゃんのようなボーイは、まだ身体が大人になっていない。しかし、力は大人どころか神や魔に匹敵している。そりゃ、身体の中の流れが乱れてしまうだろう。一度、整えてもらった形跡はあるが、その後にもっと強くなったんじゃないか?」
京都で茨木童子との戦いの後に、安倍晴明から力の流れを整えてもらったことを思い出した。
しかし、その後に、夏樹はかつて自分が召喚された異世界にて、師匠との再会、アマイモンとの限界を超えたバトルの果てに更なる強さを手に入れた。
「……心当たりはあります」
ジェイソンはそんな夏樹をマモンと戦うことで、整わせてくれたのだ。
しかも、その願いは、悠久とも言える時間の果てに役目を終えて消滅した師匠からの頼みだったと言う。
夏樹は感動で涙が止まらなかった。
「師匠……別れた後にも俺のことを思ってくれるなんて、師匠! 師匠ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「……夏樹くん、叫べばいいと思ってない?」
「一登ったら、素直に一緒に喜んであげればいいのに。師匠と弟子の絆……素敵よね」
「あれぇ? 変なの俺だけぇ?」
杏も感動したのか、涙をハンカチで拭っている。
一登は自分の感覚がおかしいのではないかと不安に思ったようで、頭を抱えていた。
「さてと」
ジェイソンは、コートからサングラスを取り出すた。
「ジェイソンさん?」
「すべきことは終わった。大きくなったボーイと積もる話もあるんだが、それは今度にしておこう」
「ですが!」
「――強くなったな。ボーイ。だけど、もっとボーイなら強くなれる。俺には見えるぜ、ボーイの輝かしい未来が」
「……ジェイソンさん、どうも、ありがとうございました!」
「おうよ! じゃあな、なっちゃん、マモン、かずたん、杏。――あばよ!」
ジェイソンはコートを翻して河川敷を登っていく。
夕日に照らされたジェイソンの姿を夏樹は生涯忘れないだろう。
「――ジェイソンさん、どうもありがとうございましたっ!」
夏樹が大きな声で感謝を伝えた。
一登、杏もお辞儀する。
ジェイソンは振り向くことなく、軽く腕を振った。
夏樹たちはジェイソンの背中が見えなくなるまでずっと見送った。
気づけば、夕日が歪みかけていた。
「……いろいろあったけど、そろそろ帰ろうか」
「……そうだね。青春すみれさんから始まって、放課後の襲撃、死の神、ジェイソンさんとマモンさんって……イベントたくさんありすぎだよ。夏樹くん、一日一イベントにしてくれないかな」
「あのね? 俺が望んでイベントさんを出迎えているわけじゃないからね! 向こうが勝手に来るの! くーるーのー!」
だけど、疲れた。
本当に疲れた。
帰って晩御飯食べて、お風呂に入ったら、ベッドでゆっくり眠りたい。
できれば、ずっと寝ていたい。
起きたらまたイベントが待っているはずだから、起きたくない。
「とりあえず、帰ろうか。マモンさん、飯どうする?」
夏樹がマモンに声をかけたとき、
「――あら、夏樹?」
「――げ」
母春子と遭遇してしまった。