作品タイトル不明
56「神様にひれ伏したくなるのは仕方がなくね?」①
向島市第一中学校の会議室に、由良夏樹と愉快な仲間たちがいた。
「えー、会議の進行は七森家歴代当主の中で一番トイレの中にいた時間が長くて有名な七森康弘が行います」
「どんな自己紹介だっ!」
「ちなみに、今、元気よく叫んだ七森千手の父親です。あ、千手の隣にいるのは息子の婚約者の虎童子さんです」
「虎童子でーす。きゃっ、あたいったら親公認!」
「――もう、いや、このノリ」
長テーブルを正方形に並べそれぞれ座っている。
「――解せぬでござる」
テーブルに四方を囲まれるように夏樹だけが、真ん中に座らされていた。
夏樹の呟きは誰も拾ってくれない。
「かかか。七森家の当主殿も愉快になったものだ。それとも、それが素だったかな?」
「いろいろデトックスされたんだ。今の俺は、綺麗な康弘くんだ」
「かかかかか。やはり愉快だ。七森家を良くも悪くも院の中に轟かせた男らしい」
この場には、加座間家当主の加座間源蔵と、「ショタエルフは侍らせてえ」さんこと川崎沙也加もいる。
他にも、一登、杏、祐介、千手、虎童子、征四郎、義政といういつもの面々に、青春の神こと青春すみれもいる。
小梅は「死の神なんぞに興味ないんじゃ!」と言い、銀子は「オールスターと顔を合わせたくねえっっす!」と言ってこの場に来ない。
そう言いながら、実際は、母春子に万が一危害が及ばないように職場を張ってくれるようだ。
夏樹としては、そちらの方がありがたかった。
「えー、静かに。静かに。それでは、この会議を主催してくださいました、我らの神! 三貴神の一柱! 月読命様の入場です! 拍手をお願いします!」
康弘が拍手すると、一同が拍手する。
会議室の扉が開き、権藤と萌乃萌葱を連れて引き攣った顔を月読命が現れた。
「……とてもやりづらい」
神を迎えるというよりも、芸能人でも出迎えるようなノリで拍手の中に登場した月読はとてもやりづらそうな顔をしていた。
権藤が苦笑し、なぜか萌葱はドヤ顔をしている。
月読は普通に会議をしたいと訴えたのだが、康弘が威厳は大切ですと取り仕切った結果がこれだ。
夏樹は特に何も考えずに拍手をし、一登たちは苦笑している。
千手は自分の父親がしでかした失態を理解して天を仰ぎ、なぜか虎童子がぴたりと寄り添う。
沙也加は月読を無遠慮にガン見し「――アリね」となにか琴線に触れたようだ。
そして、加座間源蔵は、念願叶って拝謁できた月読命というビッグネームな神を前に、
「ははぁ!」
老体に鞭打ってその場にひれ伏したのだった。