作品タイトル不明
55「小梅ちゃんと花子さんは不満じゃね?」
「まったくっ、なんとかなったようじゃな! スーパー天使な俺様がいれば死の神なんぞワンパンじゃったのに、なんで止めるんじゃ、クソ親父!」
「ていうか、私のシマで好き勝手やってくれた死の神を潰すのは土地神の仕事なんですけど。真面目に仕事するのを邪魔するって、マジでクソ魔王!」
「……パパ、娘二人が辛辣で心折れちゃうっ!」
「きんもー」
「きも」
ルシファー・小梅とルシファー・花子。そして魔王サタンこと、ルシファー・太一郎は由良家の上空で夏樹たちの様子を伺っていたのだ。
死の神の出現は、巧妙に隠されていたが小梅や土地神業をしている花子は気づいていた。
すぐに夏樹たちの助けになろうと駆けつけようとしたのだが、止めたのはふたりの父親であるサタンだった。
「パパ、辛い。でも挫けない。男の子だもん!」
器用に空中で体育座りをする父親に向ける娘たちの瞳は絶対零度だった。
本当に心が折れそうになるが、必死に耐えた。
「んでじゃ、なーんで俺様たちのことを止めたんじゃ」
「それ相応の理由はあるんでしょうね」
「相手が死の神だからな」
サタンが娘たちを止めた理由は簡潔だった。
しかし、娘たちは懐疑的だ。
「死の神と言ったって、死神ってわけじゃないでしょう? 終末の騎士の死ってわけでもないでしょうし」
「そうじゃそうじゃ! 新たな神々がなんぼのもんじゃ!」
「そう思うのは無理もないんだがなぁ」
魔界を統べるサタンにとって、死の神は恐れる相手ではない。
その気になれば、この場から殺すことはできた。
だが、しない。
いや、できない。
サタンの力を解放すれば、周囲の人々に害が出る。
魔界から人間界に来るにあたり、サタンは厳重に己に封印を課している。
無論、その封印があっても死の神を殺すことは容易いが、力の制御が曖昧になるのでやはり周囲を巻き込むことになる。
他にも理由はあるが、今のサタンは魔王としてではなく、太一郎個人として過ごしているので新たな神々と戦うつもりはない。
興味もない。
飲み仲間の愛の女神こと愛ちゃんのようなフレンドリーに接してくれる神なら歓迎だが、実力差もわからずに戦おうと思うような愚か者と関わる必要はないのだ。
「月読の奴が関わるなと言っていたしなぁ。それに、小梅も花子も万が一って場合がある」
「はぁ? このビューティフル天使の小梅様があんな三下に負けるわけがないじゃろう!」
「そうよ! いくら死を司るからって、そこまでは過剰反応じゃない!」
「まったく、我が娘ながら猪突猛進だなぁ。いいか、新たな神々は日々成長している。まだ奴らにピークはない。ま、そりゃ俺たちも同じだが、奴らは生まれたばかりの神だからこそどんどん強くなる。だからこそ、万が一があるんだぜ」
サタンもサマエルと戦っていた頃に比べると相当強くなった。
だが、それ以上に、生まれたての神は成長する。
小梅も花子もまだまだ伸び代はあるが、成長速度だけなら新たな神々の方が早いだろう。
何よりも怖いのが、小梅や花子が戦うことで「新たな神々を成長させてしまうこと」だ。
余計なことをしない主義ではあるが、余計な面倒ごとはもっと嫌いなので今回だけは娘たちを止めたのだ。
「……ま、心配せずともああいう危うい奴はいずれ誰かに倒されるさ」