作品タイトル不明
41「警棒と麺棒って似てね?」①
――ごしゃっ、と音を立てて黒服の頭部が潰れ血飛沫が舞った。
夏樹の顔に、血が跳ねる。
「あ、やべ」
手加減はしていたが、想定外にダメージを与えてしまったようだ。
夏樹は即死こそしていないが、頭部が潰れて痙攣する女性にヒールを施した。
みるみる彼女の頭部が回復する。
「え? え? え? なにが」
「ごめんね、力加減間違えちゃった。じゃあ、やり直しってことで!」
「お、お願いします、もうやめて、やめてください。なんでもします。なんでもしますから」
彼女の判断は早かった。
自分たちの命は夏樹の掌の上であると理解した。
しかも、夏樹は自分たちの命をなんとも思っていないのだ。
「え? 今、なんでもするって言った?」
「……夏樹くん、ほどほどにね。もう可哀想だからやめてあげて。襲撃された側としては思うことはあるけど、甚振るならいっそ楽にしてあげた方がまだ慈悲があるんじゃ」
「そう、だね。一登の言う通りだ。俺が間違っていたよ。ごめんね、今すぐ楽にしてあげるからね」
「――ひ」
黒服たちが失禁する。
涙と鼻水を出して、地面に額を打ちつけた。
「お願い、します。命だけは、命だけは、助けてください」
「もう、二度と、はぐれとして仕事はしません」
「この街にも近づきません、どうか、どうか」
夏樹は返事をしなかった。
顔から感情を消して、冷たい顔をしていた。
一登も杏は何も言わない。
青春すみれは夏樹の言動に口をあんぐり開いたまま動かない。
「とりあえず、うるさいから携帯出して」
「ど、どうぞ」
「どうも。――はい、こちらギャラクシー河童警察第三地球日本向島支部」
「――なにそれ!?」
フリーズしていたすみれが叫んだ。
夏樹の言動に慣れている一登と杏は特に驚くことなく、電話の相手を気にしていた。
「何をふざけたことを、早く報告をしろ! 由良夏樹を捕らえたか!?」
「お前が加座間吉座か」
「――っ、誰だ!?」
「三代目ギャラクシー河童勇者だ」
「なんだそれは!? 意味がわからん! いいから、報告をしろ!」
「上から目線だな、あんた。なんかきらーい!」
「きさっ、誰に向かって口を聞いている!」
「だから、加座間吉座でしょう?」
「俺が雇い主だと理解しているのなら、その口の聞き方を――いや、誰だ、貴様!?」
「だから、三代目ギャラクシー河童勇者だって」
「もぉおおおおおおおおおおおおお! ふざけるなぁああああああああああ!」
スマホの向こうで激昂している声が、スピーカーにせずとも聞こえてくる。
夏樹は、スマホのマイク部分を手で押さえると、冷たい表情から一転して笑顔になった。
「ねえねえ、一登、杏さん、すみれさん、敵のおっさん面白いからちょっと遊んでみようぜ!」
いたずらっ子な顔をした夏樹に、一登たちはどこか安心したように大きく息を吐き出した。