作品タイトル不明
19「この展開は、古くね?」②
由良夏樹は困惑していた。
これほど困惑したのは、異世界召喚された日のことだろうか。
それとも、自称幼馴染みがいたことを知った時のことだろうか。
とにかく困惑していた。
――目の前にはフランスパンを一本加えて尻餅をついた少女がいる。
制服は夏樹たちの学校のものだ。
クラスメイトの顔さえまともに覚えていない夏樹は、目の前の少女が誰かわからない。
(それよりも、なにこの平成初期の漫画みたいな展開?)
咥えていたフランスパンを手に持ち振り回しながら、真っ赤になって怒っている少女のスカートの間からイチゴ柄の下着が見える。
紳士な夏樹は視線を逸らすが、少女は見たことか、と言わんばかりに捲し立ててくる。
「ほら! 今見た! ちらっと見た!」
「見てませーん!」
「嘘つかないでよ! 私の水玉柄パンツを見たでしょう!」
「いや、イチゴ柄だったけど」
「ほーら見たじゃない!」
「くっ、おのれ」
ドヤ顔をする少女にいらっとする。
まさか誘導尋問を受けることになるとは勇者でもわからなかった。
「というか、いい加減立ちなよ。ほら、手を貸すから」
「はい」
「……なんでフランスパンを渡されたんだろう?」
差し出した夏樹の手に少女はフランスパンを渡す。
その意図が分からず二度目の困惑をしてしまう。
「はい、ありがとう」
「あ、はい」
立ち上がった少女は夏樹からフランスパンを受け取ると、もぐもぐ食べ始めた。
「……食べ歩きはダメだよ?」
「最近の子って小さいこと気にするのね」
「君だって最近の子だろうに」
「いいの! それよりも、あんたの顔を覚えたからね! パンツの中身を透視しようとガン見した責任はちゃんと取ってもらうからね!」
「ガン見してねえから! 向島市で一番紳士と噂されている俺がそんなことするわけないでしょう!」
「ふんっ。自分で紳士って言う奴ほどいやらしいのよ! って、こんな変態に関わっている時間はないんだったわ」
少女はそう言うと、まだ食べきっていないフランスパンを咥えて再び疾走する。
夏樹は少女の背中を見送り、疲れた様につぶやいた。
「なぁに、あれぇ?」
令和の時代にはありえない展開に、脳が処理しきれなかった。
「ねえ、夏樹くん」
「なに?」
「ガン見したの?」
「してないよ!?」
「お兄ちゃん、透視できたんだね。勇者だもんね」
「俺にそんな能力ないから! ちょっと、やめてぇー!」
一登と杏の誤解に泣きそうになりながらも、なんとか夏樹は学校にたどり着いた。
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「あっ! あんたは朝の私のパンツを覗いた奴じゃない!」
「――Jesus」
ホームルームの始まりと共に現れた少女に指を指され、夏樹は泣いた。