軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35「またビッグネームじゃね?」②

「……こんにちはー」

恐る恐る玄関を開けた夏樹は、硬直した。

二十代前半の青年がいた。

美青年という言葉は彼のためにあるようなほど、美しい。

それでいて、長い光り輝くブロンドヘアが青年の美しさを際立たせている。

「こんにちは。突然お尋ねしてしまい申し訳ありません。私はミカエル。神界の幹部でありゴッドのあまり忠実ではない大天使です」

「……忠実じゃないんだ」

夏樹を驚かせたのは、またしても訪れたビッグネームではない。

息を呑むほどの美青年であることも違う。

――ビッグネームの大天使ミカエルがグレーの上下スウェットとサンダルで訪ねてきたことに驚愕していた。

「もっと外行きのお洋服はなかったんですか?」

「私はプライベートはラフに生きると決めています」

「でも、ほら、一応お外に出るんですから」

「ふふふ。私は知っていますよ。人間たちはちょっとコンビニくらいならジャージやスウェットで行くのでしょう?」

「神界からウチまでちょっとコンビニ感覚で来ないでくださいよ。ああ、もう、とりあえず上がってください」

「ありがとうございます」

いつまでも大天使を玄関に立たせておくのも気が引けるので、上がってもらうことにした。

ルシファーから始まり、サタン、ルシフェル、月読、そしてミカエルまで来てしまった。

夏樹も異世界の勇者であり、由良家は混沌と化していくような気がしてならない。

「げっ、父上」

茶の間に通すと、誰よりも早く反応したのがミカエルの息子アルフォンスだった。

「げっ、ではありません。アルフォンスが襲撃されたと聞いたので迎えに来たのです」

「ガキじゃねえんだし、心配しなくても」

「人間たちに迷惑をかけているではありませんか。あなたはそもそも正規のルートではなく、独自のルートで神界に上ろうとしたからこんなことになるのですよ」

息子に対して小言を始めたミカエルだったが、視線が集まっていることに気づき咳払いすると、みんなに向かって礼をした。

「みなさん、こんにちは。アルフォンスがお世話になっています。私はミカエル。ゴッドのあまり忠実ではない大天使です」

ミカエルはどうやらゴッドに思うことがあるようだが、夏樹は触れないことにした。

「おおっ、叔父上ではないか! 久しぶりじゃのう!」

「お久しぶりですね。小梅は相変わらず元気そうでなによりです」

「俺様は元気と美人だけが取り柄じゃからな!」

特に問題なく挨拶をする小梅に対し、銀子は「まーたビッグネームが来ちゃったっす。もうお腹いっぱいっす」とげんなりし、一登も「え? ミカエルってあのミカエル!? すげぇ! つーか、なんでスウェット着てるんだよ? 俺、同じの持ってるんだけど!」と驚きとツッコミを入れている。

「えっと、あの、ミカエルさんはアルフォンスさんをお迎えに来たってことでいいですかね?」

「はい。あなたの貴重な血を分けていただいたようで、心から感謝しています。こんな息子ですが、私にとって唯一無二の存在ですので」

「……父上」

「いやー、お礼はいらないです。知り合いを助けるのに理由はいりません」

「……それでも、ありがとうございます」

深々とミカエルが夏樹に頭を下げた。

仮にも神界の幹部であるミカエルがただの人間に頭を下げるのは大問題な気がするが、ミカエルのような天使が上にいるのならきっと神界もいいところなのだろう。

「できることなら君とはゆっくりお話をしたかったのですが、今回はアルフォンスを迎えに来ただけですので帰らなければなりません」

「あ、そうなんですね。じゃあ、今度ゆっくり遊びに来てください」

「ええ、約束しましょう」

夏樹に向かいミカエルは笑顔を浮かべた。

続いて、ミカエルは一登に向く。

「三原一登くん、息子を助けてくれたことに感謝します」

「いえ、そんな」

「これは私からのお礼です」

ミカエルが髪を一本抜くと、一登の右手に巻きつけた。

「あの、これは?」

「あなたに危険が訪れたとき、引っ張ってください。その瞬間、ミカエル的バリアーが発動しますので」

「……ミカエル的バリアーって……ありがとうございます」

「いえいえ」

続いてミカエルは銀子を見た。

「青山銀子さん、あなたの持つ魔剣はまだ力が完全に解放されていません。ぜひ真価を発揮してくださいね」

「ちょ、まじっすか!? ありがとうございます! 頑張るっす!」

「きっと面白い力に目覚めるはずです。頑張ってくださいね」

最後にミカエルは小梅を見た。

「小梅、いい人を見つけたみたいですね。叔父として安心しています。婚約関連はガブリエルにちゃんと言っておきますので、ご心配なく」

「うむ!」

「ただ魔族に関しては面倒でしょうが、頑張って対処してくださいね」

「夏樹がいるから余裕じゃ!」

「……なるほど。楽しみです」

全員に声をかけると、身支度を整えたアルフォンスと一緒に玄関に向かう。

「それではみなさん、さようなら。今度遊びにきますね」

「ええ、ぜひ」

「夏樹、一登世話になったな、またくるぜ!」

「その時はご飯よろしく!」

「あ、俺もまた食べたい!」

「まかせろ!」

笑顔で挨拶を交わすと、ミカエルとアルフォンスは翼を羽ばたかせて消えた。

――後日、本当にミカエルが遊びに来るとは思わなかった。