作品タイトル不明
70「イベントはいつだってこっちを見ているんじゃね?」
「というか、都さんパパが何をしに向島に戻ってきたんですかね?」
夏樹の疑問に、月読は首を左右に振る。
「詳細は私もわかりませんが……七森家が少し関わっているそうです」
「七森家……どこかで聞いたことがあるようなないような」
「…………七森千手さんのご実家です」
「あー! 千手さんの! そうだ、千手さんは七森さんだったね。てっきりツッコミさんだと勘違いしていたよ!」
「彼が聞いたらキレのよいツッコミをしてくれたでしょうね」
千手がこの場にいたら、ツッコミだけではなく夏樹を殴るくらいはしていたかもしれない。
「……夏樹くん、そりゃないよ」
「杏でも七森さんの名前覚えているのに」
一登と杏がどことなく責める視線を向けているが、夏樹は気付かぬふりをした。
「えーっと、どうして七森家が関わっているんですか? 確か、千手さんのパパ見たけど、そういうことするタイプには見えなかったんだけどなぁ」
夏樹の会った七森康弘は、長年の停止から解放されたことをきっかけに色々「出して」しまったので、気さくなおじさんになっている。
だが、その前は、グレーゾーンなことを得意として「院」での立場を確実のものにしようと悪巧みをして、土地神みずちの件で大変だった水無月家と敵対してもいた。
「家同士の問題の口を出すつもりはありませんが、何かしらのトラブルを抱えてきていることは間違いないでしょうね」
「というか、なぜ花子さんが月読先生に連絡を?」
「ルシファー・花子は水無月俊平を知らないので不審者だと思って殴り飛ばしたようですが、あとで都さんの父親とわかったそうです。雲海殿から間違いなく夏樹くんたちがなんやかんやあって巻き込まれるはずだから注意喚起をするように言われたそうで……伝言係として連絡がきました」
「えっと、お疲れ様です」
「ありがとうございます」
まさか雲海も、花子が月読命を伝言係にするとは思っていなかっただろう。
「私個人としても、都さんは大事な生徒ですので何かあれば手を貸します。いつでも頼ってください。ただし、表立って何かはできませんので、そこはご理解くださいね」
「安心してください、月読先生。都さんの許可があれば、俺がとりあえず三等分に斬ってやりますよ!」
「とりあえずで斬ってくっつくわけじゃないので、駄目です」
「……はい」
「以前から思っていましたが、夏樹くんは面倒臭いとすぐ斬ろうとしてませんか?」
「………………そんなことありますん」
「やっぱりしてますね」
隠し事ができない夏樹が抗議の声を上げた。
「だって! 新たな神々とかみんなが次から次へイベント抱えてやってくるから! さくっと片付けられることはさくっと片付けたいんですよ!」
「気持ちはわかりますけど……勇者の試練だと思って」
「漫画に出てくる勇者だって、俺ほどイベント量多くないはずですよ!?」
「…………」
異世界から帰還してまだ一ヶ月も経っていないのに数々のイベント経験した夏樹の言葉は、月読を黙らせてしまった。
「えっと、夏樹くん。今度、ラーメン奢るよ!」
「あ、杏も、ハンバーガー奢るね!」
「気遣いが悲しい!」
月読は眼鏡を外して、そっと涙を拭う。
「夏樹くん、午後はサボっても先生怒りません」
「やったー! とはなりませんからね! 先生公認でサボって学校の外に出た瞬間、絶対にイベントに巻き込まれる未来しか見えないですから!」
――夏樹の予想通り、放課後イベントに巻き込まれるのだった。