軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「まもんまもんなおだしじゃね?」

――青森某所。

七つの大罪の強欲を司る魔族マモンは、スーツの上にエプロンを身につけてひたすら野菜を刻んでいた。

「まもまもまもまもまもまもまもまもまもまもまもんっ」

とんとんとんとんっ、と包丁が心地よいリズムを奏でる。

マモンが刻む野菜は、近所の方からお裾分けしてもらった茄子とみょうがと生姜、さまたんが育てたきゅうり、最後に大葉も細かく刻んでいく。

「まもん……さすがに人数分をまもんまもんと刻むのは大変でまもんまもんね」

「……マモンさん? こんなにたくさんの野菜を刻んでどうするんですか?」

マモンの背後から顔を出して声をかけたのは、真門亜子だった。

お世話になっている近所のおばあちゃんのお孫さんであり、マモンと結婚を前提にお付き合いをしている女子高生だ。

可愛らしいが快活な彼女は、マモンのハートを虜にしている。

最近では、さまたんチャンネル、まもんまもんチャンネルのスタッフのひとりとして手伝ってくれているのだ。

「これはこれは、亜子さん。近所の皆様からまもんまもんとお野菜をいただきましたので、だしを作ろうかと思いまもんまもん」

「おだし大好きです!」

だし、とは茄子とキュウリをベースに、薬味と好みの野菜を刻んで、醤油や鰹出汁で味付けをする山形県の郷土料理だ。

最近では、スーパーでも売っているし、ご家庭でも簡単にできるので、暑くなってくると人気のおかずとして好まれる。

ご飯にかけて食べることはもちろん、素麺や蕎麦の薬味として入れたり、冷奴に乗せたり、酒のつまみとしてそのまま食べたりと用途は幅広い。

さっぱりしたパスタとして食べることもできる。

野菜にみょうがや生姜の薬味が入っているので、栄養もあって健康にも良いのだ。

「皆さんの分もまもんまもんと作りますので、ぜひ持って帰ってお召し上がり下さいまもんまもん」

「ありがとうございます! マモンさんって、お料理も上手で、気配りができて……その、素敵です」

「――ぽっ。こ、このマモン、褒められ慣れていないまもんまもんなので、もっと褒めてくださいまもんまもん」

「もうっ、マモンさんったら!」

亜子ははにかみながら、エプロンを身につけると野菜を刻むお手伝いを始めた。

「シンプルでも美味しいのはもちろんでまもんまもんですが、とろみが欲しい時にはオクラや昆布を入れてもよいでまもんまもん。まもんまもん的には、とろろ昆布や刻み昆布を入れるとおかずとして味が濃くなるので好きでまもんまもん。もちろん、あっさり感は消えまもんまもんなので問題なくお召し上がりできまもんまもん」

「せっかくなのでいくつか作り分けしてみますか?」

「ナイスまもんまもん! そうでまもんまもんですねぇ、めんつゆで味付けしただけのものと、とろろ昆布を入れたものを作り分けまもんまもんしましょう」

「はーい」

亜子も手際良く野菜を刻んでいく。

刻んだ野菜をめんつゆと昆布で味付けし、タッパに入れたら冷蔵庫で寝かせよう。

常温でも美味しいが、冷たいのも美味しい。

熱々の白米の上に、冷たいだしをかけると、何杯でもご飯は食べられるのだ。

「……せっかくマモンさんの料理だったんですから、動画に残しておけばよかったですね」

「ふふふっ、このマモン。強欲な魔族ですが、できる魔族でもありまもんまもん。こんなこともあろうかと、スマホで録画しておきまもんまもん!」

「さすがです、マモンさん!」

「いえいえ、それほどでもあり――まもんまもん!」

マモンと亜子が作っただしは好評だった。

そして、動画もいい感じに視聴された。

亜子は顔を出さないように編集したのだが、「声が可愛い!」「顔が見たい!」というコメントが多く、マモンが静かにいらっとしたのはここだけの話。

翌日。

「……お裾分けでまもんまもん」

「……お前な、堂々と青森から出てくるんじゃねえよ。でもありがとうね。おだし大好き!」

サタンにもお裾分けしていたマモンだった。