作品タイトル不明
間話「月読先生も大変じゃね?」③
月読命は、放課後の職員室で大きなため息をついていた。
「無事に修学旅行先に受け入れてもらったと思ったら、次は進学問題ですか。やれやれ、夏樹くんは何もしていないのに、周りがこれでは困りますね」
「おっ、また由良夏樹案件で困っているのか?」
「萌葱先生、そんなワクワクした顔をしないでください。深刻な問題です」
「……学力が足りないってことはないだろう?」
「学力は問題ありませんよ」
夏樹は勉強はできるほうだ。
授業で聞いていれば平均くらいの点数は取れる。
それ以上でもそれ以下でもないが、困ることはない。
「じゃあ、何が問題なんだ?」
学校の神――萌乃萌葱が不思議そうに尋ねると、月読は眼鏡を外し、眉間を揉んだ。
「霊能関係の学校からぜひとも我が校にとお誘いがあるんですよ」
「……それはいいことではないのか?」
「いいことではあるんでしょうが……今更、夏樹くんが十代の子供たちと一緒に霊能力を学ぶ姿が想像できません。まず、彼は霊能じゃないですからね」
萌葱も想像ができなかった。
学校の神である萌葱でも、霊能関係の学校と関わったことはない。
人間に倒されるほど弱い神ではないが、人間を傷つけたくない。特に、学生と戦うなど、学校の神としてはあってはならないことだ。
「霊能学校に関して知識がないのだが、どういう学校なのだ?」
「そのまま霊能力者を育てる学校と思ってくれて構いません。表向きは普通高校ですので、勉強もしますし、高校卒業と変わりませんよ。ただ、プラスアルファとして霊能関係の訓練、任務があります」
「……芸能学校みたいな感じか?」
「あなたがそれでわかりやすいのであれば、はい。構いませんよ」
苦笑する月読だが、そう萌葱の例えは間違っていない。
一般的な学業よりも霊能関係に重きを置いているのだ。
「院は、東京校運営していますね。一応、分校として各地に小さな学校があります。また、別組織ですが、京都、東北、四国や九州にも例の学校はあります」
「ほう。それで、由良夏樹はどこからお誘いがあったんだ?」
「全部です」
「……はぁ?」
「噂というのは怖いですね。全部の学校から、ぜひ我が校に、と」
「なるほど。霊能学校はきっと移転でもしたいのだろうな。それで由良夏樹を使って現在の土地を更地にする計画を」
「立てているはずがないでしょう!」
夏樹の進路に、月読はしばらく頭を悩ませそうだった。