作品タイトル不明
11「堕天使って聞くと左手が疼くんじゃね?」②
光が収まると、身体の大半を失った花粉症の神が地面に横たわっていた。
顔も半分しかなく、身体も上半身が少し残っている程度だ。
――それでも死んでいない。
「はぁ……はぁ――っ、疲れるんじゃ!」
小梅の翼は純白に戻っている。
「これで死なんとか、面倒じゃのう! ちょっと待ってるんじゃ、魔王サタンを偽る専業主夫を連れてくるから、そっちに殺してもらうとええ!」
小梅は息を切らしているが、余裕はあるようだ。
対して、花粉症の神はもう喋る力も残っていないらしい。
このまま押せば殺せると小梅が確信する。
――だが、できなかった。
「混ざり物の天使に負けるとは情けない」
「ええ、本当に情けないわね」
「これがわたくしと同じ存在とはがっかりですわ」
「そう言ってやるな、相手が悪い」
「んじゃ、次は俺が相手かな」
「もうやめておきましょう。時間の無駄です」
「きひひ、由良夏樹もいるじゃねえか。ぶっ殺そうぜ!」
「愚かな。力量差がわからないのか」
「そんなことよりも、早くすべきことをしようよぉ」
九人の男女が花粉症の神の周囲に現れたのだ。
「――な」
ずっと見ていた。
警戒もしていた。
だというのに、瞬きをした瞬間に彼らがいた。
「なんじゃお前――ら?」
全員の顔が小梅を見る。
男女の違い、髪型の違い、衣服の違いはあるが、皆同じ顔をしていた。
「……なんなんじゃ、おどれら……双子を通り越して十人とかびっくりじゃろう!」
「ルシフェー・小梅。それは誤解だ」
「私たちは、全員が花粉症の神」
「私が彼で」
「彼が私で」
「私たちが私たちだ」
「意味がわからん!」
困惑する小梅に、花粉症の神たちが声を揃えた。
「――花粉症の神はどこにでもいる。何人でもいる。殺すことは不可能だ」
「きんもー!」
光の槍を投げる。
奴らの言葉が嘘かどうかどうでもいい。
ただ、殺し損ねた花粉症の神だけは殺しておこうと思った。
「無駄なことを」
女神が光の槍に神力をぶつけて相殺する。
「彼女を殺しても、花粉症の神が消えることがない。表立って行動する神が変わるだけの話。無意味なことをするな」
「……そっちが喧嘩売ってきたから買っただけなんじゃがな!」
「ならば謝罪しよう。この花粉症の神は、UMAを新たな神話に招こうとして少々無理強いをしてしまった」
「この地にUMAの代表格であるモスマンたちを追いかけたものの、謎の人物に寝取られの神と剣の神が殺されたことで後に引けなくなったのだろう」
「ちょ、ま、寝取られの神とかおるんか!? えぐいじゃろうて!」
「人の想いが神を産む。不思議なことではない」
「……人間ってたまーに怖いんじゃ」
ちょっと小梅が引いている間に、男神が花粉症の神の無惨な肉体を拾い上げる。
「今回はそちらの勝ちだ。UMAはとりあえず追いはしない。他にすべきことができてしまったので、後回しにしよう。謝罪を伝えておいてくれると嬉しい。同時に、我々につかなければ、古き神を滅ぼした後に、君たちの居場所はないとも」
「ほう。新たな神々ごときが俺様たちを滅ぼせるとでも思っとるんか?」
「無論」
「上等じゃ! 今、決着をつけて………………あ」
小梅の動きが止まる。
花粉症の神々が不思議そうな顔をした。
彼らは気づいていない。
十人の花粉症の神の中に、ひとり追加されていることを。
「――こんにちは! 遥か彼方なギャラクシーから現れた河童の守護聖人にして河童大神様に仕えしギャラクシー河童勇者男爵だよ!」
「おどれはいつから爵位持ちになったんじゃ!?」
雷の剣を担いだ由良夏樹がにこやかに名乗った。
そして小梅が突っ込んだと同時に、思い切り剣を振り下ろした。
「よくわかんないけど、敵が増えたのならみんな殺せば問題なしっ! 星槍さんいないけど、今の俺ならこのくらいはできるんだよーってことで、――神鳴りの剣」
雷が花粉症の神々を襲った。