作品タイトル不明
57「祐介くんは勝ち組じゃね?」
大地の勇者佐渡祐介は、ミイラのようにカッサカサになっていた。
「……もう僕はユニコーンさんには乗れないね」
そんなふざけたことを言う祐介は、念願かなって婚約者として異世界から地球に連れて帰ったソーニャ・シラーと無事に結ばれたのだ。
祐介を慕っている、いつの間にか魔法少女になってしまった妹佐渡ひなたに関して問題は残っているが、なぜかソーニャと母優香が小一時間ほど三人で話をすると、なぜかニコニコとご満悦な顔となって、祐介に親指を立てた。
一体、自分の知らぬところでどんな話をしたのかわからないが、それからひなたはソーニャのことを「お姉ちゃん」と甘え出したのだ。
しかも「前からお姉ちゃんがほしかったの」と甘えている。
少し前まで、心配になるくらいに病んだ言動をしていた妹とは同一人物かと疑ってしまうほどだ。
とはいえ、家族仲が良いことは嬉しい。
父隆が、なぜか悲しげに祐介の肩を叩き、「女性には逆らっちゃいけないんだよ」と意味深なことを言ったが、気にしないことにした。
もともと逆らうつもりはない。
そんなわけで、無事にソーニャとの初夜を迎えることができたのだが――とっても搾り取られた。
なにを、とは言わない。
だが、かつて異世界で尊厳を踏み躙られた過去を持つ祐介にとって、搾り取られようがカッサカサになろうが、愛のある行為はとても嬉しかった。
「ごめんね、みんな。――僕は勝ち組さ」
まだ眠っているソーニャを起こさないように、リビングに向かうとミネラルウォーターを収納棚から取り出して一気に飲む。
「――ふう。生き返った!」
カサカサだった祐介の肌が瑞々さと取り戻した。
乾物でももう少し時間がかかるというのに、さすが大地の勇者だった。
「今日は休みだし、ソーニャたんを連れて観光でもしようかな。でも、夏樹くんたちのことも気になるんだよね」
異世界から帰還してから会っていない親友たちを思う。
祐介をはじめ、異世界で戦ったみんなが例外なく大きな消耗をしていた。
それは、唯一帰還後に顔を合わせた夏樹たちでさえ例外ではない。
祐介も、かつて異世界で生活し、勇者として戦った経験がある二度目の異世界訪問だったが、精神面はさておき、魔力的にも体力的にも大きな消耗をしていた。
「回復具合は……八割くらいかな」
体力はさておき、魔力の回復は遅い。
魔力の器が大きいので満ちるまでに時間がかかるのかもしれない。
異世界で大地の勇者として覚醒したことで、基礎的な力はもちろん、限界値も大きく上昇した自覚はある。
だが、今後絶望の神のような強い神を敵にするのであれば、力に振り回されているだけの自分では不安が残った。
「――修行編が始まるかもしれないね。まったく気持ちが昂らない」
スマホを取り出し、画面を見ても夏樹たちからの連絡はない。
夏樹はきっと祐介を気にして連絡をしていないのだと思う。
「千手さんも今頃とらぴーとあーんなことやこーんなこともしているんだろうし、東雲さんも茨木童子さんとあーんなことやそーんなことをしているんだろうなぁ」
不思議だ。
今までなら血の涙を流して羨ましいと泣いただろう。
しかし、今では自分が一番幸せだと感じている。
「――異世界に勇者として召喚されて散々な目にあったけど、ダークエルフの可愛いお嫁さんと出会って今は幸せです」