作品タイトル不明
53「さすがにおこじゃね?」②
「ゆ、許して」
小島村は絞り出すような声を出した。
「許して、ください」
「なんで?」
「…………え?」
夏樹は真顔のまま純粋な疑問をぶつけた。
「真面目に、なんで許しを請うのか理解できないんだ」
夏樹は小島村に近づき、まっすぐ瞳を見つめた。
「お前さ、力を得て俺をどうにかしようって考えたんだよね。家族に酷いことしようって考えていたんだよね。失敗したから、許してとか言っているけど、成功していたらやりたい放題やっていたよね? その上で聞くけど……なんで許されるって思ってるの?」
「――ひ」
「ありないでしょう。どうせ失敗したけどね。お前が手を出そうとした人たちはお前より強いんだよ。わかる? その程度の力じゃ、百人いてもなにもできなかったんだよ」
夏樹は小島村の顎を掴んだ。
「お前は俺の逆鱗に触れた。一番、やっちゃいけないことをやろうとした。万死に値する。安心しろ、おふざけは無しで殺してやる。苦しめず、何も感じさせず、死んだことすらわからないように殺してやる。誰かに唆されたことを加味しての、慈悲だ」
「ま、まって」
「黙れ。言っておくが、お前の家族も殺す。親戚も殺す。お前の友人も、好意を持つ人も、全員殺す。殺して、殺して、殺し尽くしてやる。俺は必ず実行するぞ。お前とは違う。お前の親を殺す前に、耳元で息子のせいだと笑ってやる」
「や、やめ」
「――おめでとう、お前は選ばれた」
小島村が白目を剥いた。
完全に気絶した。
「おし!」
「お前……エグいな」
「勇者ですから!」
「関係ねえよ! あとそのきりっとするのやめろ! うぜえ!」
夏樹がいつもの調子に戻ったことに、一登はもちろん、ガープとマレーもほっとした顔をしていた。
「よかったよ、夏樹くん……ガチで殺すのかと思った」
「気持ち的には殺したいけどね。中学生数人を行方不明にするのはちょっと難しいだろうし、月読先生に怒られそう。めっ、て」
「めっ、じゃすまないきがするけど」
「それに殺すよりも苦しめたい!」
「うわぁ、とってもいい顔してるよ!?」
「照れるなぁ」
「褒めてないから!」
笑って誤魔化し夏樹はガープとマレーにお願いする。
「ってことで、よろしく!」
「やれやれ。俺たちを呼んだから何事かと思ったが、そういうことか」
「いや、ガープさんは普通にこいつらを運ぶのに人手が欲しかったからで、マレーさんはまじでラッキーって感じです」
「こ、この野郎!」
「いいじゃん! ガープさんのかっこいいとこ見てみたい!」
「……仕方がねえ、こいつらに呪いくらいかけてやる」
「……本当にできるんだ」
「俺も一応名のある魔族だからね! 人間呪うくら朝飯前だぜ!」
親指を立てたガープは小島村の頭に手を起き、何やら唱える。
「よし。これでこいつは興奮したら股間に激痛が走る呪いをかけたぜ! あっちのやつには絶対に絶頂できない呪いと、好意を抱いた相手を見るとアヘ顔になる呪いをかけてやろう!」
「――ガープさんの呪い怖っ!」
「じゃあ獏は毎晩恐ろしい夢を見るように術を施してあげるのねん」
「ちなみにどんな夢?」
「中学生には言えない夢なのねん」
「逆に気になるー! けど、まあいいや!」
「さすがなのねん」
こうして夏樹たちは小島村と仲間たちに呪いを施すと、月読命に連絡を入れた。
――言うまでもなく、めちゃくちゃ怒られた。