軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23「今度は天使が来たんじゃね?」①

「ふぁ……夢の中でも疲れた」

眠りから覚めた夏樹は、ベッドから起き上がると、うーん、と身体を伸ばした。

昨日はルシフェルとサタンが登場し、まさかのすき焼きパーティー。

未成年なので酒盛りには参加せず眠りについたのだが、夢の中で異世界の現状を見たり、月読先生が登場し月読命であることが判明するなど、寝ていても疲れる日だった。

ジャージとロンT姿のまま部屋から出て茶の間に向かう。

「酒臭っ!」

ビールを始め、様々な酒の匂いがして、夏樹は顔をしかめた。

丸テーブルの上には、ビールの缶や瓶が複数転がっている。どこからか追加で買ってきたのだろう、一升瓶まである。

母は楽しかったのか、座布団を枕にしてにこやかに寝息を立てている。

小梅は一升瓶を抱えてぐーごーと腹を出していびきをかいている。ルシフェルは茶箪笥に背を預けているが、缶ビールを握ったまま寝ていた。

銀子に至ってはジャージだからいいが大股びらきで大の字になって転がっている。しかも、テーブルに突っ伏して寝息を立ててるサタンの頭に、足を乗せてた。

異世界帰りの勇者でもできないことを平然となのか、偶然なのかやってのけている銀子にただただ驚くしかない。

「ようやく起きたか? もう八時半だぞ。朝食を用意してあるから、さっさと顔を洗って歯を磨いてこい」

「はーい」

ブロンドの髪を結った青年が、新婚の奥様が装備するようなフリルのあしらわれたエプロンを身につけて、フライパンや食器を洗っていた。

どうやら母たちが飲んだ後片付けをしてくれているようだ。

青年に感謝しながら、顔を洗い、歯を磨く。寝癖を水で直して台所に戻ると、青年がご飯と味噌汁、だし巻き卵、ほうれん草とベーコンの炒め物、納豆を用意してくれてあった。

「ほら、早く座れ。食べよう」

「うん。じゃあ、いただきます――うまっ!」

「いただきます――うまっ!」

まず口に含んだ味噌汁は、出汁と味噌の調和が素晴らしく、食事の邪魔にならないが、かといって主張がないわけではない。

つやつやに炊かれた白米と味噌汁だけで、食事が進むほど美味しかった。

さらに、丁寧に厚く巻かれただし巻き卵はまるでプロが作ったのではないかと思えるほど綺麗に形作られている。無論、味も絶品だ。味噌汁とはまた違う出汁の使い方と、少し砂糖が入っているところがいい。

ほうれん草とベーコンの炒め物は、油を敷かず、ベーコンの油とバターを使い炒めたのだろう。あっさり塩胡椒と思いきや、ブラックペッパーが少し効いていて美味しい。

納豆はスーパーで買ってきたもののようだが、ちゃんとネギを刻んでくれてあったのが嬉しかった。

「なかなかの出来だな」

「いやいやいや。めっちゃ美味いよ! お母さんのご飯も美味しいけど、めっちゃ美味いって」

「よせよ、そんなに褒められてもなんもないぞ」

絶賛する夏樹に、青年は少し照れたように笑った。

あっという間に食事を平らげた夏樹に、青年はなにも言わずにおかわりをくれる。

育ち盛りの夏樹は、あっという間に二杯目も食べ終えた。

「ごちそうさまでした!」

「おう。お粗末さまでした」

(ふう。土曜日の朝からしっかりご飯を食べたのは久しぶりだな。いつもは金曜の夜の残り物や、パンを簡単に食べていたから。いやー、それにしても美味かった。さてと)

食器を下げて洗い物に戻った青年の背中を眺めながら、そろそろ現実に戻る時がきた。

「――ところで、どちらさまですか!?」

夏樹の問いかけに、青年はエプロンを装備したまま泡だったスポンジと茶碗を握り振り返る。

「しっかり飯を食ったから俺のことを知っているのかと思っていたぞ。その胆力、気に入ったぜ。ならば、名乗ろう。俺は大天使ミカエルの長男アルフォンス・ミカエル。SNSでお料理系女神を自称している北欧の神ノルン三姉妹をお料理三番勝負で下した、天使最強主夫だ!」