作品タイトル不明
33「焼肉には白米じゃね?」①
「肉だー!」
「いえーい!」
「うわーい!」
「えっと、俺までご馳走様です!」
夏樹は、森と片岡と、まだ夕食を食べていなかった一登を誘い四人で焼肉食べ放題にきていた。
いつるは誘ったが、「せっかくの友達の時間に他人が一緒するのは遠慮しておきます」と素っ気なく去ってしまった。
「俺までごめんね」
「なに言ってんの、一登は俺の弟で親友じゃん!」
「それに、三原も私にとっては幼馴染みなんだけど。しかも、まとも枠! 貴重な常識人枠だから! むしろ今更、幼馴染みいち抜けとか許さないから!」
「あ、あははは、森さんは相変わらずだね。学校でも会えば声をかけてくれて、いつも助かっていいます」
「……三原ってちょっと浮いているもんね。まあ、あの兄貴がいたら仕方がないけど」
「ちょっと、森さん」
片岡が小さな声で森を嗜める。
「あ、ごめん。そういえば……不謹慎だったよね」
「いえ、あれは自業自得なので。むしろほっとしたっていうか」
「え? なになに、何の話ー?」
「……由良、あんたわざと言ってるのそれともガチ?」
「ほえ?」
「あ、ガチだ。本当に、こいつネジが何本か外れているわよね。異世界で勇者やるとみんなこうなっちゃうの?」
森、片岡、一登が苦笑いをしているが、夏樹はなんのこっちゃ、と不思議そうな顔をした。
「とりあえず、乾杯しようぜ」
「そうね」
「はーい」
「えっと、うん」
四人がウーロン茶の入ったグラスを持った。
「えー、本日はお日柄もよく」
「由良、お腹すいたから早く」
「うっす! んじゃ、森さんと片岡くんがファンタジーに巻き込まれた記念でかんぱーい!」
「かんぱーい!」
「乾杯!」
「乾杯していいのかなぁ!?」
ファンタジーに巻き込まれたことを良しとするのかどうかは、悩ましい。
「……僕的には良しだったからいいけどさ」
「細かいこと言うなって! そうそう、片岡くんにちゃんと紹介しておくね。このちょっとチャラく見えるけど根は優しくて身も心もイケメンなのは三原一登くんです! おいどんの幼馴染みでごわす!」
「三原一登です。何度か話したことはありますよね、改めてよろしくお願いします」
「片岡慶です。由良っちの隣の席に座ってます! そうだね、何度か森さんと一緒にいるときに話をしたよね。これから改めてよろしくね!」
一登と片岡は初対面ではないようだが、改めて挨拶を交わす。
よき友人になってくれることを祈るが、心配はいらないだろう。
一登はもちろんだが、片岡も優しい少年だ。きっとすぐに打ち解けるはずだ。
「はいはい、お肉が来たわよー! とりあえずタン塩から焼くわね!」
「はーい!」
森が仕切りながら肉を焼いていく。
肉はもちろんだが、お米は欠かせない。
育ち盛り、食べ盛りの中学生にお米は必須なのだ。
「それで、由良はいつ異世界に行って勇者になったのよ?」
「ふえ?」
「あんたのそのヤバさって、異世界でいろいろ経験したからでしょう?」
「そうなんだよ! 聞くも涙、語るも涙の異世界だったよ! 基本人間はクズしかいないから! ったく、まさか始業式の日に勇者召喚されるとは思いもしなかったよ!」
「…………えぇ?」
「…………んん?」
「あー」
夏樹にとっては数年前。
地球ではまだ勇者召喚されてから一ヶ月も満たないことに苦笑してします。
「あれ? なんで、そんな変な顔をして硬直してるの?」
なぜか森と片岡は、ファンタジーを知ってしまった時よりも驚きに包まれた顔をしていた。
はて、と不思議そうな顔をした夏樹に、ぷるぷると森が震えた。
「…………由良。あんたのそのヤバさって異世界のせいじゃなくて元からだったのね」
「…………由良っち、きっといいことあるよ」
「よくわからないけど、なんか心外!」