軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21「深夜の家庭訪問じゃね?」③

「ご自分でマイナー神って言っちゃった!」

「もう私のウリですから。ところで、私のことをわかっていただけましたか?」

「…………」

実を言うと、あれだけしっかり名乗ってもらいながら、夏樹はまだわかっていなかった。

普段の名前と神の名前が一緒じゃん、とか思ってしまう。

うーん、と考える夏樹に、月読は肩を落として説明を続けた。

「伊邪那岐命に生み出された月を神格化した神――月読命です。姉は天照大神、弟は素盞嗚尊です」

「あー! あー! あー!」

「ようやくわかってくれましたか」

「確かにマイナーっていうか、姉と弟が無駄に目立っているから、なんていうか」

「自分でもわかっているので、もういいです」

月読命といえば、天照大神、素盞嗚尊と三貴子とされる神だ。

天照大神が太陽神、素盞嗚尊が海原の神、月読命が夜を統べる月神である。

ビッグネームもビッグネームだが、天照大神と素盞嗚尊のせいでちょっと思い出すのに時間がかかってしまった。

サタンとルシフェルと少し前に邂逅していたのも悪い。

「……なんでこーんな田舎で先生やっているんですか?」

「神だって、先生になりたいときがあるんです」

「そんなもんですか」

「ええ、そんなものです」

なんとなく月読の名を思い出せなかったせいか気まずさを覚えてしまう。

夏樹は話題を変えるように咳払いをした。

「さっきはありがとうございます。もう向こうの世界はこりごりなので」

「いえ、弟があなたに迷惑をかけましたので、このくらいはどうってことありません」

「弟さんって、素盞嗚尊さんですよね? 俺、面識ありませんでしたけど」

まさか、月読のように気づかずに会っていないよね、と不安になる。

月読は夏樹の心中を読んだように、苦笑してから「直接の面識はないはずですよ」と言ってくれた。

少しだけホッとする。

「実を言うと、現在『院』のトップは素盞嗚尊です」

「えー?」

「本来は、人間への過度な干渉は駄目なのですが、あの愚弟は少し煽てられると気をよくして『院』のトップになってしまったんです」

「あれ? それでも、別に迷惑をかけられた覚えはないですけど?」

「――三原優斗くんです。彼が強い潜在能力を持ち、そこから漏れる力で限定的ではありましたが魅了を行っていました。校内では、影響がないようにしていたのですが、力を隠蔽している私ではすべてを無効化できずにいました。すみません」

「そこですかー。いえいえ、別にあれがどうなろうといいんで」

「いえ、本来ならば力を封じるように下に命じろと私は言ったのですが、愚弟は基本的に戦う力に重きを置いています。本人の言葉を借りると、魅了なんてつまんねえ力を持つ奴も、そんな力に引っかかる奴も放っておけ、だそうです。そのせいで、君も苦労したでしょう。改めて、お詫びします」

(素盞嗚尊に詳しいわけじゃないけど、なんとなく言いそー!)

とはいえ、もう力を封じたし問題解決だ。

あとは、優斗が今までのしっぺ返しを食らうのか、それとも平然としていられるのか、彼次第だろう。

「私自身も、教師の範疇でしか人と関わっていませんので、力になれなくてすみませんでした」

「いえ、もう謝罪はいいんです。ただ、ひとつだけ教えて欲しいんですが」

「なんでしょうか?」

「松島明日香って優斗の影響のせいであんななんですか? それとも元からですか?」

「――残念ですが、元からです」

「うわぁ」

夏樹がなんとも言えない顔をすると、月読も苦笑した。

神として人と関わらないというスタンスは構わない。だが、ひとつだけ不思議なことがある。

「あ、もうひとついいですか?」

「もちろんです」

「じゃあ、なんで、今回は俺を助けてくれたんですか?」

「はははは。面白いことを言いますね。もう君はこちら側にズブズブじゃないですか」

「…………わかっていたけど、神様にそう言われるとちょっと落ち込んじゃうかも」

異世界から始まり、ルシファー、グレイ、ルシフェル、サタンと出会って、ここで月読だ。下手な霊能力者よりきっとズブズブなんだろう。

「お休みのところ、申し訳ありませんでした。私はそろそろ帰りますね。土日はゆっくり休んでください」

「ありがとうございます」

「あ、そうです。ついでにひとつだけ。土地神みずちの魂はちゃんと回収されました。きっといつか生まれ変われるでしょう」

「――水無月家の人たちに伝えていいですか?」

「もちろんです。ただし、私のことは内密にお願いしますね」

「はい!」

「そして、新しい土地神ですが」

「知っているんですか?」

にこり、と月読が微笑んだ。

「私の姉、天照大神が赴任しますのでよろしくお願いしますね」

「だーかーらー! ビッグネーム! もっと下から順序よく来て!」