軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

155話 初戦勝利と敵本隊

全力を出せ!

そんな事を言ったような覚えはある。

大丈夫、まだボケるような年でもない。

生まれ変わってから三年くらいしか経っていないのだ。

そういう心配は要らないのである。

だが、

自分が言った言葉を本当に自分が言ったのか?

と疑問に思いたくなるような出来事が目の前の大スクリーンに映し出されていたので、ふとそういう感想が零れ出ただけなのである。

目の前の大スクリーンには、テンペスト軍の大勝利が映し出されていた。

それは良い。

それは問題ないのだけど、内容が酷すぎた。

ポカーンとなるような程、一方的な蹂躙戦が展開されたのだ。

ゴブタがゴブタらしからぬ格好良さで、戦場を駆け巡り、戦車を潰して疾駆していた。

ガビルはガビルで、見た目から強そうな竜魔人のような姿に変身し、何だか異常に高いエネルギーで敵艦を一撃で粉砕するし。

それはガビルだけでなく、 飛竜衆(ヒリュウ) 達全員が変身したのだから笑えない。

ネタは『竜戦士化』だとすぐに気付いたが、暴走せずに使いこなせるとは思わなかった。

そして決め手が、空中で発生した爆発である。

何をトチ狂ったのか知らないが、空中で熱核爆発が生じ、帝国の飛行船部隊を巻き込み炎上したのだ。

この時点で、帝国側の航空戦力は維持不可能の状態に陥っている。

それを皮切りに、テンペストの大攻勢が開始された。

現代戦においても、戦車に対してはヘリコプターが圧倒的に有利となる。

同様に、上空からブレス攻撃を行う 青色兵団(ブルーナンバーズ) の 飛竜(ワイバーン) 達によって、帝国軍の地上戦力も多大なる被害を被ったようだ。

だが、それを順調に行う事が出来たのには、理由がある。

情報武官達の活躍があってこそだったのだ。

奴等は、強者を見抜く目でもあるのか、隊長や一般兵といった区分けではなく、目に付く者を血祭りに挙げていったのである。

実の所、 智慧之王(ラファエル) の解析によっても、

ヴェイロン、モス、シエン、ゾンダの四名が相手した将兵は、一般以上の強さを誇る強者であった事が裏付けられていた。

恐らくは、"異世界人"か、帝国の中の強者達が隠れ潜んでいたのだ。

それをアッサリと見破られて、行動を起こす前に始末されたというところだろう。

恐るべきは、強者を見分ける選別眼であった。

そんな中、帝国軍の後方に配置していた作戦行動司令部に異常が発生する。

大スクリーンに映し出すと、笑顔で佇むテスタロッサとウルティマ。

他に生存している者は確認出来なかった。

残存兵力の戦車数百台も動きを止めて、後詰の補給整備の兵士達も全員倒れている。

その数は、凡そ数万人規模であろう。

何が何だか判らないけど、何だか危険な事が起きたのだけは理解出来た。

智慧之王(ラファエル) が、

《解。大規模殲滅魔法" 死の祝福(デスストリーク) "の使用を確認しました 》

とか言っていた。

核撃魔法の一種で、魔死光線による生物を死滅させる魔法という説明を聞いて、

そんな危険な魔法を使うなよ! と叫びそうになってしまったのは仕方ない事だろう。

ともかく、その瞬間に勝敗は決したのだ。

そこで俺はその戦場での戦闘行為の終結を宣言しようとしたのだ……が!

その時は、既に止める必要は無くなっていた。

未だ戦場に残っていたであろう帝国軍の数万の兵士達は、次の瞬間に全滅する事になったのだ。

四重複合魔法(カルテットスペル) : 魔物達の聖域(アークサンクチュアリ) の発動によって。

モスを筆頭とし、4柱の 上位魔将(アークデーモン) は戦場の四方に散っていた。

そして、 四重複合魔法(カルテットスペル) を発動させたのである。

強者を先に始末したのは、この大規模魔法を邪魔されないようにという用心からだったようだ。

この辺りが、単体で簡単に大規模殲滅魔法を発動させる事が出来るテスタロッサ達との格の違いと言うヤツだろう。

だが、それは比べる対象が悪いのであって、彼等が弱いというのとイコールでは無い。

魔物達の聖域(アークサンクチュアリ) とは、その名の通り、魔物への影響はまるで無い。

しかし、魔素に慣れ親しんでいない人間には、致死効果を発揮する程に影響を及ぼす。

今回のように、魔法結界を張っていた魔法使いが倒れ、戦闘力だけを強化されただけの強化人間では、 抵抗(レジスト) する事は無理な相談だったのだ。

恐ろしい事に、抵抗出来なかった者から肉体の分解が開始して、あっという間に魔素へと変換されていった。

たった数分で、残りの生存者の全てが、魔素に転じる結果となってしまったのだ。

こうして、帝国軍との第一次遭遇戦は終了したのである。

というか、第一次遭遇戦で相手した帝国軍は全滅した。

文字通りの意味で、全滅である。軍事的解釈では無いのが恐ろしい。

無茶苦茶だと思う。

俺が全力を出せと言っただけで、こんな結果になるとは思わなかった。

そんな俺に対し、

「というか、だな。俺の作戦も全く意味が無くなるじゃねーか!

何なんだ、あの女共! それに、あの情報武官ってヤツらは!

リムル様の直轄だと言ってましたが、説明して貰えますよね?」

ベニマルが良い笑顔で振り向いてくる。

そりゃあ、まあ……ねえ?

作戦も何もあったものじゃなかったよ?

だけどな、ベニマル。

説明を受けたいのは、お前だけじゃないんだ。

寧ろ、俺の方が説明を受けたいと思っているんだよ!

そんなこんなの言い訳にもならぬ心の思いを口に出せる訳もなく……

「あれはディアブロが拾って来た、新しい仲間だ。

敵軍に魔王クラスの能力者が居たら不味いと思って、配置したんだけど……

ちょっと頑張り過ぎちゃったみたいだな。

まあ、ディアブロが今後は教育してくれるだろ」

ディアブロに押し付けて、事無きを得る。

というか、悪魔達があそこまで無茶をするとは思わなかった。

奴等、クール過ぎる。

何の躊躇も無く、敵軍を殲滅してのけるのだから。

ただし、

「クフフフフ。遣り過ぎるとは、少し調子に乗っているかも知れません。

後で 教育して(シメテ) おきましょう」

笑顔でそう述べるディアブロに、程々にな! と言うのは忘れなかった。

そんなこんなで事情説明を終えて、第一次戦闘の損害を確認する。

戦闘開始から僅か2時間も掛からずに、戦闘は終了している。

多数の怪我人が出てしまった様だけれど、現在は全員回復している。

魔物の国(テンペスト) で作った 中位回復薬(ハイポーション) を各10個づつ持たせていたので、大抵の傷は直ぐに治せたようだ。

また、最初に俺が死んだと思った者達も、実際には部隊長クラスに所持させていた 完全回復薬(フルポーション) を即座に使用したお陰で、一命を取り留めていたらしい。

ベニマルの指揮の下、囮の役を見事に果たしてくれたと言うわけである。

通りで、ベニマルの動揺が少なかったわけだ。

結果としては、回復薬を多大に使用したものの、人的被害はゼロだったと言う事である。

考えられない程の大勝利であった。

ただし、被害が全く無い訳でも無かった。

ガビルと、その配下の 飛竜衆(ヒリュウ) 達。

特殊スキル『竜戦士化』により、肉体に多大なダメージを受けたようだ。

このスキルは、 竜人(ドラゴノイド) に匹敵する強靭な肉体を強制的に造りあげる。ただし、効果は30分しか持たない上に、二日に一回の発動しか出来ないのだ。

その理由は、使用直後に無理をした反動がやって来て、24時間は身動きも出来ない酷い状態になるからである。

まあ、全力を出して勝利したからいいものの、使い所を間違ったら自爆する事になるスキルなのだ。

今回、ガビルが調子に乗った反動であるそのペナルティは、ガビルだけでなく 飛竜衆(ヒリュウ) 達全員が受ける事になったのである。

その程度で済んで良かったのだ、と思って貰うしか無いだろう。

そして、帝国側の被害だが……

捕虜は居ない。何故ならば、全員死亡しているからだ。

その数、24万人。

俺の中に魂が捧げられて、正確な数も把握している。

この感覚が、配下から魂を集めるというヤツなのだろう。

戦闘開始から暫くすると、猛烈な勢いで魂が蓄積されていくのを感じたのだ。

一万人分集めたら魔王種から覚醒魔王へと進化した訳だが、果たして二十四万人分だとどうなるのか?

答えは、変化なし! であった。

真なる魔王に覚醒した時点で、俺の進化も最大に到達したと言う事だろう。

そりゃそうだ。

そうでなければ今頃ギィなんぞが、人類が滅亡する勢いで殺しつくして、魂を刈り取っていそうである。

これ以上に進化しないと直感で悟ったからこそ、自身が覚醒して以降の殺戮を手控えているのだろうから。

ただし、自身の進化以外の事には利用出来るようであった。

《告。獲得した魂が規定量を超過しました。

現在、魂の系譜に連なる配下二体に対し使用可能です。

対象となるのは、以下の個体名の魔物達です。

ランガ、ベニマル、シオン、ガビル、ゲルド、

ディアブロ、テスタロッサ、ウルティマ、カレラ、

クマラ、ゼギオン、アダルマン

魔王覚醒の資格を有する者は、以上となります。

規定量[魂:10万個]を使用して、配下の進化を行いますか? YES/NO 》

とんでもない事を言い出す、 智慧之王(ラファエル) さん。

どうやら、魔王覚醒の資格がある者へ規定量の魂を与えると、覚醒させる事が可能なようだ。

しかも、自分が覚醒する量の10倍ときた。

これは今までに誰も知らなかった訳である。

知っていたとしても、勝手に魔王に為った後に、仲間にする方が安上がりだからだ。

ギィあたりは知っているのかも知れない。

だからこそ、 魔王達の宴(ワルプルギス) のような上位者の集いを行い、仲間にする価値がある者を選別しているのだろう。

それだけでは無く、他に理由があるのかも知れないけど。

ひょっとしたら買いかぶりで、知らないという可能性もあるな。

10万人分の魂とか気軽に言うけど、一つの大都市を皆殺しにするようなものなのだ。

そんな事は中々に出来る事では無い。

後気になるのが、"魂の系譜に連なる"という言葉だ。

これは、恐らくだが、"名付け"による魂の繋がりの事だろう。

名前を付けると魔物が進化する。何気なく乱用していたが、これはかなりの危険を伴う事を最近理解した。

大量の魔素を消費するので、自身の弱体化に繋がるのだ。

なので、余剰に生じた魔素を保管しておき、それを使用するようにしている。

そんな事が可能なのは、俺に 暴食之王(ベルゼビュート) の胃袋のような便利スキルがあったからだ。

このようなスキルが無いならば、自分に貯めておける魔素を用いないと駄目な訳で、誰でも簡単に"名付け"が行えないのは理解出来る話であった。

だからこそ、魂の繋がりがある配下を持つ者の方が少ないのだ。

俺だけに与えられた特典である可能性も否定出来ないのである。

という事で、NOと言っておいた。

余りにも危険な予感がするし、選ぶにも誰を選べばいいのか悩むからだ。

資格ある者の選別にも疑問がある。

魔素量(エネルギー) だけなら、ソウエイにも資格がありそうなのに。

良く判らないので、ともかく一旦は放置しておくのが良さそうである。

しかし、20万人以上が死んだのか。

大虐殺だ。

なのに、心は痛まない。

既に魔王になる時に、自分の手で1万人殺している訳だし、言い訳をする気にもならない。

殺した者にも家族が居たとか、考え出せばきりがない。

しかし、送り出す家族に罪が無いのか? そう考えるならば、止めなかった責任があるだろう。

戦争を行ったら、必ず死者が出るのだ。

世論が戦争へと向かうならば、それに反対しなかった責任は負わねばならないだろう。

法治国家だろうが、帝政国家だろうが、それは変わらない。

無知は罪。

知らなかったは、言い訳にならないのだから。想像力の欠如もまた、罪なのだ。

身内が死ぬ覚悟も無く戦争に入り、後から文句だけ言うのはナンセンスだと思う。

民間人にまで砲火を向けるのは、人としても国家としても間違っているが、侵略して来た軍を全滅させたからと言って、文句を言われる筋合いは無い。

何故ならば、我々もまた、全滅する覚悟を持って望んでいるからだ。

配下の魔物が負傷しただけで動揺した俺が言うのも何だけどね。

感情と理性は別物、つまりはそういう事だろう。

そして、戦争はまだ終わっていない。

帝国軍の本隊と思える、総数70万の陸戦部隊が、ドワーフ王国とジュラの大森林の国境沿いから南下して、 魔物の国(テンペスト) へ向けて侵攻中なのである。

感傷に浸る暇などないのだ。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

開戦から一週間経ち、遂に帝国軍の本隊が俺の領土に侵入した。

ゴブタ達には無事な戦車の回収に、壊れた飛行船の残骸回収を命じていた。

復帰したガビルも、ゴブタに協力して作業させている。

慌てて戻って来させる必要は無いと、ベニマルが指示を出したのだ。

確かに、これだけの大勝利ならば。

油断は決してしてはならないけど、此方にも第二軍団が残っているし、ディアブロもやる気だ。

情報武官として、ゲルドにもカレラが付いている。

それに、管制室にはテスタロッサ達も戻って来ていた。

帝国軍の本隊に強者が居たならば、その状況次第ではまた出撃して貰う事になるだろう。

だが、他の幹部もやる気になっている。

シオンも戦場に出たがって、

「あの悪魔共、目立ちまくって!

私が行って、真なる強さとはどういうモノかを見せ付けなければ!」

などど、悔しそうに言いつつ出て行こうとしていたけど、

「お前は俺の護衛じゃなかったのか?」

という俺の疑問に慌てて理性を取り戻したようだった。

今は大人しくなっているけど、いざとなれば出撃命令を出してもいいだろう。

迷宮最奥に居る以上、ここまで敵軍が攻めて来るには時間が掛かるのだし。

まあ残った戦力では、帝国軍70万に対して数は少ない。

しかし、質では同等だろうし、幹部連中だけでなく、末端の兵士までやる気十分である。

俺の命令は未だに有効なようで、全員全力を出すべく士気旺盛なのであった。

どうするべきか、それが問題だ。

無視されたが演出がてらの警告も行ったし、既に開戦の宣誓も終えている。

いきなり不意打ちを仕掛けても、卑怯だと謗られる云われも無い。

しかし、少ない数での不意打ちは効果が薄いし、ここは核撃魔法の出番だろうか?

いや、正々堂々と一応警告を発するべきだろうか?

皆はやる気満々で、俺に更なる魂を捧げるとか、大張り切りなのだ。

魂を集めて何が出来るとか知らないだろうに、何故にそんなにと疑問に思う程である。

悪魔は、魂に刻まれた感情の残滓を好物にしているようだけど……

別に俺はそんなものは欲しくないんだけどね。

しかし、70万人か。

七名覚醒させられるな、とか考えてしまう自分が怖い。

先ずは、自分達に犠牲が出ないように、上手く戦争に勝利を齎せられればそれで良いのだが。

一番良いのが、迷宮内に誘い込む事だ。

迷宮内ならば、自軍の損耗をゼロに出来る。

というか、迷宮内の魔物を戦力換算可能なので、一気に軍勢が膨れ上がるのだ。

それこそ、質はともかく数だけならば70万に対抗可能となるだろう。

ベニマルの作戦では、 魔物の国(テンペスト) 前面に第二軍団を配備し、徹底的に守りを固める。

その間に、敵情報を確認し、強者の存在を割り出す作戦だ。

実際の所、現代戦では数の力で戦況が決まるけど、この世界では強者一人の力で戦況を引っくり返せるのは、第一次遭遇戦でも実証済みである。

脅威となる人物の割り出しを優先するのがセオリーだと言っていた。

うーむ。

確かに、普通に核撃を行っても、魔法結界で防御されるので無駄なのだろう。

ただし、" 死の祝福(デスストリーク) "だけは防御出来ないと思うけど。

悪魔達、情報武官だけで特攻させて、敵軍を殲滅させれば?

そう一瞬考えた。が、それを行うと、森林へのダメージも凄まじい事になってしまう。

何より、万が一防御された場合、貴重な最高戦力をムザムザと失う事になると言われたのだ。

大軍への防御は万全を期すのが普通であり、聖結界を使用出来る者も従軍するらしい。

モス達が、最初に倒した強者の中にも、そうした結界を発動させている者が居たそうだ。

大規模殲滅魔法は、それを防ぐ手段を潰してから使用しないと意味が無いとの事。

そこらは戦術の素人である俺よりも、ベニマルの方が詳しいのだ。全て任せている以上、俺はドッシリと構えていればいいのである。

結局、警告は無しで行く。

旧ファルムス王国方面まで移動してから南下して来る帝国軍本隊だが、当然狙いは 魔物の国(テンペスト) だった。

万が一、旧ファルムス王国方面に進軍を開始したならば、即座に背面から攻撃を仕掛ける予定だったが、その心配は杞憂となる。

現在、ファルムスは、ヨウムが纏め上げて新王国を樹立した所だった。

影で援助を行っているが、まだ戦争をする余力は無い。そんな中でも、監視協力だけは行ってくれている。

出来るなら被害を出したくないと思っていたので、一安心だった。

ちなみに、ドワーフ王からも援軍の必要を問う申し入れがあったのだが、問題ないと返答している。

放置し、そのまま素通りするのを許可して貰ったのだ。

決着は俺達でつければいい、皆の意見はそういう意思で纏まっていたからである。

ドワーフ王は、監視協力だけでもと言って、情報を逐次流してくれた。

だがまあ、その必要も本当は無かったのだが、好意を受け入れた形である。

監視魔法で行動を逐一観察出来ているので、こういう時は本当に便利なのだ。

一応、ソウエイの手の者が実際に行動監視を行っているので、幻覚等により間違った映像が映し出されている心配も無い。

そんな感じで状況をモニターしつつ、第二次戦に向けての備えをして待機する。

聖騎士が侵攻して来たルートと同じ道になるので、道中に迷宮入り口が存在する。

仮に、帝国軍が迷宮を無視し 魔物の国(テンペスト) へ全軍を向けたならば、迷宮内で有志を募って背面を討つ事も可能だろう。

その場合は多大な被害を覚悟せねばならないが、挟撃が可能なので数の上での不利を多少でも補う事も出来るだろう。

ここまで来ると相手次第。

出来るなら、迷宮へと半分程度の軍団を差し向けて欲しいものである。

俺の願いが通じたのかどうかは不明だが、結論としては願った通りの展開になった。

迷宮を素通りしてテンペスト首都へ向かって来た部隊が20万名程。

迷宮近辺に陣を張った敵方の本隊が50万名。

恐らくはテンペスト首都への侵攻状況を確認しつつ、順次迷宮攻略へと侵攻させるのだろう。

迷宮周辺都市が消えている事に驚いたようだが、躊躇せずに迷宮攻略は行うようである。

強欲な事だ。

どちらか一方のみに集中される方が、俺達にとっては都合が悪かった。

というか、迷宮に食いついてくれていれば問題ないけど、首都攻略に全軍を充てられれば苦戦は免れなかっただろう。

前哨戦というか、正面からの囮軍を侵攻させたのも、情報が筒抜けになっていた以上、彼等にとっては意味の無い戦力の喪失となっている。

分ける必要が無いのならば、戦力分散は基本的には愚策だと思う。

素人考えだけど、各個撃破の対象でしかないと思うのだ。

「勝ったな」

俺の呟きに、

「ああ……俺達の勝利だ」

と、ベニマルがノリ良く答えてくれる。

実質、戦術上では勝利が確定した。

後は、力技で敗北しない限り、俺達の勝利は間違いない。

「アホが迷宮に向かってくれて良かった」

「そうだな。だが、リムル様が餌を撒いてくれていたからな。

上手く食いついてくれて何よりだ」

「まあね。

ユウキの目的が何か知らないが、仲間割れを起こすには餌を撒くのが一番。

どうせ、帝国内の撹乱を狙ってそうだと思っただけなんだがな。

まあ、人の欲望を刺激すれば、迷宮を無視する訳にはいかないだろうし。

最悪は、首都が灰燼になってから迷宮内決戦ってとこだろうけど」

「余程でなければ、首都も無事に勝てるだろ。

状況次第では、俺も出るよ」

そうベニマルが言った時、

「その必要は無いでしょう。

リムル様、ベニマルが出る前に、私も出陣して宜しいですか?」

と、シオンが出だした。

まあ、俺の近衛として身辺警護も重要だが、管制室は一番安全な場所にある。

転移で直ぐに戻ってこれるだろうし、暴れすぎという理由で謹慎中のテスタとウルが俺の傍に控えている。

まして、ヴェルドラも一緒に観戦しているのだし、近衛が常駐する程の危険は無いと思えた。

問題ないだろう。

「ゲルドの部隊だけでは厳しいだろうし、お前の部隊の実戦経験も必要だろう。

許可するから行って来い。ただし、無理はするなよ!」

「はは、有難うございます!」

シオンは満面の笑顔になり、ベニマルにドヤ! 的な顔をしてから、管制室から出て行った。

ディアブロも俺に一礼し、満面の笑顔で出掛けて行く。

ディアブロを止めるのは困難だろう。

何しろ、一番やる気になっていたのだから。

ベニマルは肩を竦めて、出撃は諦めたようだ。

そして、俺と一緒に残って観戦組に混ざる事になったのだ。

総指揮官が前線に出るのも可笑しな話なので、当然と言えば当然なんだけどね。

こうして、帝国軍本隊70万との決戦が開始されたのであった。