軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

69_とっても増えてた魔力量

(鑑定用水晶を割ってしまった……!!)

あまりの衝撃に硬直していると、セルヒ様とオーランド様が目を見合わせている。

その顔があまりにも真剣で、これは深刻な事態なのだと血の気が引いた。

どどど、どうしよう!?鑑定用水晶、それも魔塔にあるものなんて、絶対にすごく高価で特別なものだよね!?

弁償……だよね!?

だけど、皆目見当もつかないこの水晶の値段が、私に払える額だなんてとうてい思えない。

かくなる上は……人体実験の被験者になるしか……!!!

「わ、私!体で払いますから……!!!」

「ルッッッ!?!?!?」

セルヒ様が妙な声を出して固まってしまった!

「わー!セルヒ、気をしっかり!ルーツィア、セルヒが死ぬから本当に軽率にそういうこと言うのやめてくれる!?」

「ええっ!?で、でも、じゃあ、どうすればっ……私、お金もないし、できることもないし、もうこの体を差し出すくらいしか……」

「ぐっ」

「セルヒーー!?」

大混乱の私たちの前に、フワフワがかけより私をふわふわの尻尾で包み込む。

『む!ルーツィアのピンチか!?我が守る!』

「キュンキューン!」

「あわわ、フワフワも魔獣ちゃんも、大丈夫だから……!」

「フワフワだけでなく、魔獣ちゃんさんもルーツィア嬢のために立ちはだかっている……!?なんて美しい光景なんだ……!!!縛るのはいいけどなんで私のこと横に転がしたんですか!?縦で、縦で見たい!」

「あー、僕の手にはもう負えないよ……」

◆◇◆◇

「結論、ルーツィアの魔力はとんでもなく増えている」

やっと皆が落ち着いたのを見計らって、オーランド様が仕切り直す。

どうやら鑑定用水晶は少しずつ経年劣化するものらしい。よく考えればたくさんの魔力に触れるものなのだから、それも納得なのだけれど、本当に慌ててしまった。

ということで、割れたこと自体は問題ないのだとか。次の水晶ももう用意されていて、弁償の必要もないと言ってくれた。

(よかった、本当によかった……!)

とはいえ、本来であればあと2、3年はもつはずだと見繕われていたらしく、私の魔力がとても増えていたから寿命が縮んだことは間違いないらしい。

どう考えてもこれほど短期間に魔力量が増えたのは実が持つなんらかの効果が関係しているだろうということだったけれど、それよりも。

「それから、多分だけど、特殊魔力の中になんかよく分からないさらに特殊な魔力が増えてるっぽいんだよね」

オーランド様が気にしているのは、私の魔力の質が変わっているように見えたことだった。

「そんなことがありえるのか?」

「セルヒも言っていただろう?『ほんの少ししかないものが増えることはあっても、一切ないものが生まれるのはそれ以上に稀な現象だ』って。つまりすごく稀だけどありえないわけじゃない」

なんだか、ふわふわしていて現実感がない。私に何が起きているんだろう?

「まあ、今更すぎるからその実を食べるなとは言わないけど、もしも少しでも異変を感じたらすぐに報告してくれ」

懸念されたのは、瘴気におかされた魔獣ちゃんが出す実だから、実にもその影響が出ているのじゃないかということだったけれど、もしもそうならばさすがにオーランド様やセルヒ様が実を見た時点で分かるということだった。

私が「もう実は食べない方が良いですか?」って聞いた瞬間の魔獣ちゃんがあまりにも悲しそうだったから、これからも食べていいってお許しをもらえて本当に良かった。

それに……私の気持ちとしても食べないように我慢するのは難しいなと思っていたから、そういう意味でも良かったよね。

食いしん坊で恥ずかしいけど、実が美味しすぎるのが悪いと思う。

アルヴァン様は実を出す魔獣がこれまでに存在した記録はないか調べるといそいそ去っていった。

セルヒ様とは、一日の終わりに体の異変がないか、時間がある夜は必ず面談することを約束して、その日はようやく終わったのだった。

自室で一息ついて、今日のことを振り返る。

(魔力量がすごくあがったってことは、私のやっていることは無駄じゃないってこと。この調子で頑張っていれば、いつか魔獣ちゃんと契約をすることも許可してもらえるかもしれない)

さすがに今日はまだ駄目だと却下されてしまったけれど、ほんの少しは希望がでてきた。

最近、魔力譲渡や回復薬の常用で、少しずつ魔獣ちゃんの体調も良くなってきてはいるように思うけれど、やっぱり瘴気の影響が完全に消えることはなくて。

急がなければ命が危ない、なんて状況ではなさそうだけれど、やっぱりこのまま辛い思いをさせ続けるなんて絶対に嫌。

リゼットに聖なる魔法で癒してもらうことができないなら、私にできるのは契約して魔力を繋げることくらいだもん。

実を食べることを許可してもらえたように、一緒に過ごす中で魔獣ちゃんが害のある存在ではないと認められてきているし、その正体も引き続きアルヴァン様が調べてくれている。

このまま契約を許された時に、私の力不足でストップがかかるなんてことがないように、もっともっと頑張らなくちゃ!

そう決意を新たにしながら、ベッドに横になると、魔獣ちゃんがぴょんっと近づき、もぞもぞと私の腕の中に納まった。

フワフワは足元で私にぴったりくっついてくれている。

「そういえば魔獣ちゃん、今日は怖い思いをさせちゃってごめんね」

「キュウウ~?」

「ほら、瘴気だまりに近づいたときに、すごく怖がっていたでしょう?あの後体も辛そうだったし、これからはもっと気を付けるからね」

「……」

あら、魔獣ちゃん、もう寝ている。

「ふふ、今日は疲れたよね。フワフワも魔獣ちゃんも、おやすみなさい……」

その夜、私は夢を見た。

夢の中で、私はリゼットみたいな聖女で、魔獣ちゃんをあっという間に治してしまうのだ。

(いいなあ、聖女、私も聖女なら、色んな人の役に立てるのに……聖女なら……)