軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

59_無力な私にできること

「ど、どうしてですか……!?」

私が、弱いから?……いつも一緒にいられる私が契約するのが一番いいと思ったんだけれど。

ひょっとしてそんなことしてもあまり効果がないかもしれない。それでも、試せることは試してみたかったのに。

悶々としている私に、オーランド様は続ける。

「もしもそれで少しでもこの魔獣の具合が良くなるなら、私が契約しても構わないのに、そうしなかったのはちゃんと理由があるんだよ」

「あ……」

たしかに、そうだよね。私が思いつくようなこと、オーランド様やセルヒ様たちが思いつかないわけがない。

ましてやアルヴァン様なんか、すぐに契約したがるはずだもの。

「この魔獣には謎が多すぎる。種族さえいまだに分からない。回復薬を使っても追いつかない不調にここまで抗っている時点で、もしもこの原因が瘴気ならば、この小さな体でとんでもない魔力量を秘めている可能性が高いんだ。……なんせ、この私でもこの子の魔力量が全く分からないからね」

オーランド様によると、魔力量が自分よりも極端に少ない場合、相手が魔獣や魔物であっても大体の魔力量がなんとなく分かるらしい。

それなのに、魔獣ちゃんの魔力は分からない。

種族による特性の可能性もあるから一概には言えないみたいだけれど、ひょっとするとかなり魔力量が多いかもしれないってことみたい。

「違うかもしれない。だけどそうかもしれない。わからないことは恐ろしいことだ。万が一この子の魔力量がとんでもなく多いのに、ルーツィアが契約をした場合……」

「最悪、ルーツィアの命が危険にさらされるかもしれない」

難しい顔をしたセルヒ様が言葉を引き継ぐ。そんなまさか、と思ったけど、オーランド様も頷いていた。

私が、死ぬかもしれない?

「魔獣が元気な時ならいいんだけどね~!このまま契約すると、ルーツィアの体が魔力量に耐えられない可能性があるし、ギリギリ耐えれるくらいだった場合は、その不調を全部引き受ける形になってしまうかもしれない。つまり、瘴気にのまれる可能性もあるんだよ」

そんなこと、考えもしなかった。

魔獣ちゃんが魔力量の多さで瘴気に抗えているだけの可能性がある以上、私の魔力量じゃ、それを受け止めることすらできない。

だから死んでしまう危険性があると言うことだった。

「聖魔力持ちなら蓄積されていない入ったばかりの瘴気は体内の聖魔力と相殺されていくから、命を落とすことまではないかもしれないけど。それも可能性の話だね。とにかく、危険なことは決して許可できないよ」

「……はい」

私はなんて無力なんだろう。私にリゼットみたいな聖魔力があれば、魔獣ちゃんを助けてあげられるかもしれないのに……。

はっ!いけない!また良くないことばかり考えてしまっているわ。魔獣ちゃんと仲良くなってから、何度もこんな風に思ってしまっている。これじゃいけないよね。皆に心配かけてしまうし、こんなことを考えても私に聖魔力が芽生えるわけじゃないもの。

私は、私にできることを考えなくちゃ。

◆◇◆◇

「魔獣ちゃん、おはよう!」

「キュキュ~!」

毎朝一番に魔獣ちゃんに挨拶をして、健康状態をチェックすることが、私の最近の日課になっていた。

私にもできることはないかって、いっぱい調べてみた。

そうして色んな文献や資料を見たり、魔塔の魔法使い様に聞いたり、アルヴァン様に講義してもらったりして、今はできることをコツコツやっているところなんだよね。

たとえば、これもそう。

魔獣ちゃんの手を軽く握って、肉球をもみもみ……肉球マッサージ!

「魔獣ちゃん、気持ちいい~?」

「キュフウウン……」

「ふふ、気持ちよさそうだね」

うっとりした声で鳴き、溶けてしまいそうにぺしゃんこになっている魔獣ちゃん。

実はこの肉球マッサージ、ただ気持ちいだけじゃない。これで私の魔力を魔獣ちゃんに渡すことができるのだ!

最初にそれに気づいたのは偶然だった。

ただただ、肉球マッサージで血行が良くなって、健康にもいいかなって、それだけのつもりだったんだよね。

それなのに、それを見ていたフワフワがびっくりし始めたのだ。

『な、なんだその魔力譲渡の方法はっ?ルーツィア、体はきつくないのか?』

「えっ?魔力譲渡?」

『気づいていないのか……』

多分、ほんの少しの量だったんだと思う。いつのまにか魔力を渡していたみたいだけど、フワフワに心配されるまで全然気づかなかった。

でもたしかによく見ると、私の体から魔獣ちゃんの手の方に魔力が流れているのがうっすら見えて。おまけに、見るからに魔獣ちゃんの顔色が良くなったのだ。

こんな方法があるなんて……!

たしかに、昔読んだおじい様の本の中に、身体的接触で魔力譲渡するお話もあった気がする。絵本のようなもので、本当に出来ることだなんて知らなかった。

(ひょっとして、子供だましの夢物語みたいに書かれてた内容、全部本当のことだったのかも……!?)

そこから私は必死にいろいろ思い出そうとしてみた。

たとえば、魔力量をうんと増やす方法、その効率をあげる方法。

健康になる方法とか……。

知識を増やすだけじゃだめだよね。実際にやってみなくちゃ。効果がないものもあるかもしれないけど、その中のどれかが少しでも効果がある可能性があるならやるべきだもの。

そうやって毎日、「どうにか魔獣ちゃんと契約しても耐えられる体づくり」を目標に、ひっそり努力を続けていた。

昼間は魔塔のお勉強と訓練、それにお仕事。

夜は体づくりと調べもの。忙しいけれど、すごくやる気に溢れている。

──その日も、聖魔力以外に瘴気を減らしたり、浄化したりする方法はないか調べていた時だった。

側で眠っていたはずの魔獣ちゃんが、とてとてと近寄ってきて、私の袖をくいくいお口にはさんで引っ張り始めたのだ。

「キュウキュウ!」

「ん……?魔獣ちゃん?どうしたの?」

「キュッ!キュウウ~!」

なんて言ってるんだろう?なんだかとっても何かを訴えかけてくるんだけれど……?

『ルーツィア、今日はご飯を食べていないだろう!チビはルーツィアを心配しているんだ』

「あ……そういえば」

フワフワに言われてハッとした。そういえば、本を読むのに夢中ですっかり忘れていたわ。

思い出した途端、お腹がくううっとなる。

でも、今から食べ物を取りに行くのも……朝まで我慢する?

どうしようかな考えていると、魔獣ちゃんが私の膝の上によじ登り、ぷるぷると震えはじめて──。

「えっ!?」

「キュッキュッキュ~~!」

──魔獣ちゃんがグッと体に力を入れると、ポンッ!と小さな音を立てて、何かが飛び出してきた!

それが私のおでこにあたり、転がっていく……。

何かの……実?

水色のツヤツヤとしたその実を拾い上げてみる。

これ、今、魔獣ちゃんのおでこから飛び出してきたよね……!?