軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22_魔法を使うのに、ずっとずっと憧れていたんです。

あれから数日経ったけれど、私は予定通り魔塔の色んな魔法使い様のところへ日替わりで通って、お仕事を見学させてもらっていた。

今日はセルヒ様に連れられて、今までの魔法を使った何かしらの研究や実験とは違って、魔法使い様たちの訓練場にお邪魔している。

そもそも魔塔全体に魔力防御が張られていて、例えば実験に失敗して魔法を暴発させたりしても、滅多なことじゃ部屋が壊れたりはしないらしい。

その上でさらにこの訓練場は広いドーム状になった場所で、この空間一帯に特に強い防御壁が張られているんだとか。見えないから、よく分からないけど。

それより、他の部屋と同じように扉をくぐったら、まさかこんなに広くて魔塔全体より大きいのでは?と思ってしまうくらいの空間が現れるなんて、そのことの方がびっくりだわ!

なんと、空間を広げる魔法を何種類か組み合わせて作っているんだとか。魔法ってすごい。

そんなわけで、今日は魔力を使った実験などではなく、それぞれの魔法使い様たちが自分に使える数種類の魔法を使っているところを目にしているわけだけれど。

私はとあることに気がついた、気がする。

(あ、まただ。うーん……あ、ほらやっぱり)

魔力には人それぞれ色がある。

だけど、属性魔法を使っているのを見ていると、どうも魔法の属性に応じて、色が変わるみたいなのだ。

例えば、あの男の人。

魔力は紫色だけど、炎の攻撃魔法を使うと、炎が形になった瞬間に元々の魔力の紫色を包み込むようにして、別の色が発生してるわ。

他の魔法使い様たちのことも、じっと見つめる。しばらく見つめていた結果、私の中で、やっぱり属性ごとに出てくる色は同じみたいだわという結論になった。

たくさんの魔法を見て好奇心が刺激された私は、訓練所の隅っこで見学しながら、こっそり自分でもやってみることにした。

(実は、最近夜にセルヒ様に付き合ってもらって、魔力の使い方を教わってるんだよね)

とはいえ、まだちゃんとした魔法を使えたことはないんだけれど……。

まず、セルヒ様に教えてもらって練習している通り、体の中の魔力を感じながら、循環させていく。準備運動みたいな感じだ。

もっと慣れればこれをしなくても手や指を使うように当たり前のように魔力を動かせるようになるらしいんだけれど、私にもそんな日が本当に来るのかな?って思うくらいには普通に難しいのよね。

(たしか、こうやって魔力を動かしながら、魔法を顕現させるのよね。……どうやるんだろう?)

そこまではまだ習っていない。だけど、魔法使い様たちがすごい魔法を使っているところをたくさん見ていると、根拠もなく自分にもできそうな気がしてくるし、そうなるとやってみたくなる。

セルヒ様に聞いてみたいけれど、今は訓練場の奥の方のスペースで別の魔法使い様にお願いされて魔法を教えていらっしゃるのよね……。

だけど、私は今すぐやってみたいっ。

何かヒントはないかと考えて、ふと、リーステラのお屋敷で読んだ沢山の古書を思い出した。

そうだよね、とっても古い書物ばかりだったから、この間ちょっとだけ見せてもらった魔塔の魔法書とは全然内容が違うことに気がついて驚いたのだけど、それでも当時はその書物で魔法を勉強していたわけで。やり方が古いからって言って、間違っているわけではないんだもの。別にできなくっても全然いいんだし、試しにやってみよう!

ちょっと見せてもらっただけの魔法書の内容はあんまり覚えていないけれど、一人きりで、誰にも構ってもらえなくて、それしかなくて何度も何度も何度も読んだお爺さまの古書の内容はもはや暗記しているレベルで覚えている。

ええっと、確か、そう、こんな感じで……。

しばらくあれこれやってみていると、ついに手のひらがほんのり暖かくなって、そこからキラキラが少し混じった白い魔力がふわっと立ち上り、だけどすぐにパッと消えた。

あ、あ、惜しい!気がする!

だって魔力が出てきたってことは、魔法の顕現の一歩手前ってことだよね?

ちなみに今試しているのは炎の魔法だ。この訓練所でやってる人が多くて色んな人の炎魔法をたくさん見れたし、やってる人が多いってことはやれる人が多いってことで、つまり他の魔法より簡単なんじゃないのかなって思ったから。

古書の内容を何度も思い出しながら、ひとつひとつの手順を丁寧に積み重ねるのを意識する。

繰り返していくうちに、手のひらにポッ……と小さな炎が浮かび上がった。

(で、できたわ!できた!!……あっ!)

本当にできてしまったことが嬉しくて興奮したせいで、魔力が乱れてすぐに消えてしまった。

うーん、魔法を使うってとっても難しいわ!こんな小さな炎を出すのでさえ、全神経を集中させてやっとだもの。

(だけど、楽しい。へへ……)

だって、魔法は憧れだった。ずっと使ってみたかった。夢の中で大魔法使い様になったこともある。そんな風に実際夢にみるほど、魔法を使うのは私の夢だった。

魔力なしだとされて、使えないって思っていたから、余計に。

だけど今、夢がほんの少しだけ叶ったんだわ。

こうなったら、他の魔法も試してみよう!

引き続き、さっきと同じように古書の内容を思い浮かべながら、炎以外の魔法にも挑戦してみることにする。

これもものすごく難しかったけれど、自分なりに色の変化もイメージしながらやると、次第にうまくいき始めた。

すごい!私すごい!色のイメージを取り入れたのは我ながらいいひらめきだったわよね!!

嬉しくて、胸が高鳴りすぎて、息が苦しい。ドキドキするし、ワクワクする。

色んな属性を試して見て、全部なんとか成功した。とはいっても、片手のひらにおさまるサイズの極々小さい魔法だけれど。

魔法使い様たちからしたら、こんなの魔法にも入らないレベルだと思うけど、私にしてはとんでもないことだ。もはや偉業だわ。今日のこの瞬間はルーツィア人生史に深く刻まれました。

残るひとつ、光属性についても試してみよう。

リーステラに数冊あった古書の中で、光魔法だけは専門書があったのよね。他の属性魔法と、少しだけ発動の仕方が違って面白くて、それも何度も読んだ。

それにしても、光魔法だけ専門書まで持っていたなんて、お爺さまは光魔法が好きだったのかもしれない。それなら、なおさら使えるようになりたいな。

気合を入れて臨んだけれど、びっくりするほどあっさりと光魔法は顕現した。

ピカっと強い光が、両手から溢れるくらいの大きさで現れたのだ。さっきまでの片手サイズより大きいの出たっ!!

あまりに簡単にできてしまった上に、予想外に強い光だったために、驚きすぎてすぐに消えてしまった。他の魔法で試していた分、ちょっとコツを掴んでいたのかも。その上でとびきり気合を入れてやったから、きっと他よりちょっとだけうまくできたんだわ。

一瞬呆然として、そんなことを考えていたけど、すぐにじわじわと喜びと興奮が湧き上がってきた。

(そ、そうだ、セルヒ様っ!セルヒ様に見てもらおう!)

たったこれだけのことで何をって感じではあるけれど、セルヒ様はとっても優しいし、ここ数日で思ったのだけれどどうやら褒めて伸ばすタイプのようなので、また褒めてくれるかもしれない。

『すごい!すごいよルーツィア嬢!頑張ったんだね!』

『えへへへへ……』

セルヒ様に褒めてもらう想像をして、ちょっぴりにやけながら、セルヒ様に声をかけようと顔を上げる。訓練場の奥の方にいるんだけど、大きな声で呼んでもいいのかな?それとも、こっちにきてくれるまで大人しく待ってた方がいいのかな?ああ、でも早く見てほしいなあ!なんて思いながら。

すると、声をかけるまでもなくセルヒ様は私の方を見ていた。

(えっ……)

驚いたことに、セルヒ様どころか、訓練場にいるたくさんの魔法使い様たちが、みんなみんな私を見ていた。

そしてその全員が、なぜか信じられないものを見るように、目を丸くしていたのだ。