軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18_簡単なことしか分かりません。でも簡単なことって、意外と忘れがち。

ディカルド様とエリナ様の魔法は、綺麗に合わさることなく、ディカルド様の魔力にエリナ様の魔力が飲み込まれるようにしてパッと消えた。

「ああ~やっぱり駄目か。僕とエリナは魔力量が近い上に魔法の使い方も似ているから、一番上手くいきやすいと思うんだけどなあ」

ガシガシと頭をかきながらぼやくディカルド様。

その後、もう一度同じことを試してみたものの、やっぱり魔法は綺麗に混ざり合うことなくすぐに消えてしまった。

「やってる感覚としては、どうかすれば上手くいきそうに思えるのだけどなあ」

うーんと首を傾げるディカルド様の側に、魔法使い様達が集まっていく。どうやらこれから、改善点や気になる点などについて皆さんで話し合うらしい。

輪のようにディカルド様を囲む魔法使い様達の少し後ろに、私もこっそり混ざってみる。

ディカルド様は火魔法、エリナさまは水魔法を得意とされているから、そもそも属性の相性が悪いのではないか、他の魔法を使ってみてはどうか。

やはり、少しも違わずぴったり同じ魔力量でないといけないのではないか。

今まで複合魔法を得意としていたのは双子の魔法使い様らしく、そもそもそれくらい血や魔力回路が似通った相手でなくては不可能なのではないか。

そんな風に、色々な意見が交わされていくのを、そっと見つめるだけの私。

これまでもこうやって失敗を繰り返しては相談を重ね、ディカルド様を中心に、エリナ様以外の魔法使い様と試してみたり、属性を変えてみたり、色々と試行錯誤は繰り返しているらしい。

だけど……。

(うーん、そういうものなのかしら??)

もっと簡単に考えてはダメなのかしら。だけど、そう思うのは、私が魔法について何も知らないからなのかもしれないわよね。

魔塔の魔法使い様は、魔力量が多かったり、稀有な魔法を使えたり、普通の魔法使いとは一線を画す存在だ。王宮魔法士団の魔法使い様だって、そういう場所に所属していない普通の魔法使い様だってとってもすごいのに、そんな人たちの中でも飛び抜けてすごい存在なわけなのよね。

だから、そんないわば魔法の専門家たちに、素人の私が何かを言うなんておこがましくてとてもじゃないけれどできるわけがない。

そう思って、私はじっと黙って魔法使い様達のお話を聞いていたのだけれど。

「ルーツィアさん?君は、何か気がついたことはないですか?」

ディカルド様の言葉とともに、魔法使い様達の目が一斉に私に向く。別に責められているわけでもないのに、突然たくさんの視線にさらされてぶわりと冷や汗が出てきてしまった。

私、今まではどちらかというとあまり存在を認識されていないのではないかと感じることが多かったから、初めて気がついたけれど、注目されるのってすごく緊張しちゃうのね……!

「え、えっと……特に、ありません……」

声が詰まりそうになりながらもなんとかそう絞り出したのに、ディカルド様はさらに私を見たままで。この場の中心人物であるディカルド様が私を見ているから、他の魔法使い様達も当然私に視線を向けたままになるわけで。

「なんでもいいんですよ。気づいたことがないなら、ただの感想でも構いません。僕たちの考えは行き詰まってしまっているから、第三者のなんでもない一言がヒントになることもあるので」

どんどん緊張していく私に気がついているのかいないのか、にこりと微笑むディカルド様。ひょっとすると、セルヒ様に少しでも私を参加させてほしいとお願いされているのかもしれない。それなら、本当にただの感想でも何でもいいから、何か言った方が良いのじゃあないかしら。

だから、すごいとか、勉強になりますとか、そういうことを言おうと思ったのだけど。

「ディ、ディカルド様は、黒だから……新しい色には、なりにくいのじゃないかなって」

私の口から焦って出てきたのは、言おう思っていた感想とは全然別の言葉だった。

(し、しまった!焦りすぎて、思わず言ってしまったわ……!)

生意気なことを言って!と睨まれてしまうかもしれない。そう思って、顔があげられなくなる。

だけど、ディカルド様はそんな私の気持ちをよそに、いつの間にか私のすぐ側まで近寄ってきていた。

「黒?どういうこと?もう少し詳しく聞かせてくれる?」

「うう……」

すると、怯む私と詰め寄るディカルド様に向かって、他の魔法使い様の声がかかる。

「ディカルド様!なにもそんな魔法のことを全く知らない人にまでそうやって意見を求めなくてもいいではないですか」

パッと思わず顔を上げると、ディカルド様を止めてくれているのは、私に魔道具の使い方を教えてくださった女性魔法使い様だった。

(あああ、やっぱりこの方、とってもとっても親切だわ!うう、私のことを助けてくれるなんて……好き……)

けれど、ディカルド様はそんな制止など全くお構いなしだった。

「でもすごく気になるから、もう聞かずにはいられないや。ねえ、絶対に馬鹿にしたり怒ったりもしないから、どうかあなたの思ったことをそのまま教えてくれない?」

思わず見てしまったディカルド様の目はキラキラと輝いている。興味深々と言ったその様子に、物腰が柔らかくて穏やかな印象だったディカルド様も、やっぱり魔塔の魔法使い様なんだわと、なんだかそんな当たり前のことを考えてしまった。

もうこれは、言わないままではとてもじゃないけれど終われそうにない。

(もうこの際、分かり切ったことだったとしても別にいいわよね。だって、私はさっき親切な魔法使い様が言ってくれたように、魔法に対しては全く何も知らない素人なんだもの)

そう思った私は、しどろもどろになりながらも、なんとか自分の思ったことを伝えることにする。

「えっと、ディカルド様の魔力は黒だから、他の色と混ぜても新しい色にはなりにくいんじゃないのかなって、思っただけです……うーんと、絵の具だって、他の色に黒を混ぜても、その色の明るさが変わるだけで、別の色にはならないじゃないですか?」

ディカルド様の魔力は黒くて、エリナ様の魔力は藍色だから、一度目はエリナ様の魔法がディカルド様の魔法の黒に飲み込まれて、二度目はほんの少し藍色がかった黒になっただけだった。

多分、ディカルド様たちがやろうとしているのは、例えば青と赤で紫にしたり、黄色と青で緑にしたり、そういうことじゃないのかなって……思ったのだけど……。

ディカルド様はポカンとした顔で、ただただ私を見つめていた。

……どうしよう、ひょっとして、全然的外れなことを言ってしまったのかもしれない。

違う、ポカンとしているだけかと思ったけれど、よくよく見ると微かに口が動いている?

不思議に思って耳に意識を集中させてみると、ディカルド様はぶつぶつと何かを呟いているみたいだった。

「──そうか、僕は黒だから、僕が相手では混合魔法はよほどではない限り難しいのか。一番魔力が安定しているから、僕以外の組み合わせはほとんど試していなかった。他の色でも、あまりに量が違えば飲み込まれるばかりで色は変わらない、ということか?なんてことだ。こんな単純な……」