軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第24話「この俺にモテ期が!? いや......そんなわけはないか」

発端は、エリクだった。

月曜日の朝、登校したら廊下でエリクが妙に深刻な面持ちをして待ち構えていた。

「レイン、少しいいか......?」

「何だいきなり」

「お前、今朝、正門から入ってきたよな」

「まあそうだな、それがどうかしたのか?」

「その時、後ろを見たか」

「そんな後ろを確認する理由なんて.......」

「……振り帰ってみろ」

言われて振り返ってみると.......

廊下の向こうに、女子生徒が十数人おり、 全員がこちらを見ていた。

「……なんなんだ、あれ」

「お前についてきた連中だよ」エリクは深刻な顔のまま言った。「正門からずっと、一定の距離を保ちながらついてきている」

「なんでそんなことを......」

「なんでだと思う」

「……皆目見当もつかないな」

エリクがそれはもう長いため息をついた。今まで聞いた中で一番長いため息だったと感じさせるほどに。

「お前の、先週の魔鳥の件と、冥境の門印の話が一気に広まったんだよ。上位魔物を一声で追い払った死神紋章持ちで、本当は神格的な名前の紋章を持つ男で、地脈も川も全部直してたのも実はこいつだったって——学園中の話題になってる」

「みんな単純なんだな」

「何なんだその感想は——」

「俺は何も変わってないぞ」

「お前が変わってなくても、周りの評価が変わったんだよ!!」

エリクが珍しく声を上げると、廊下の向こうの女子生徒たちがどよめいた。

「しっ、声が大きい!」

「お前が落ち着きすぎなんだよ!!」

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一限目が終わった休み時間、廊下に出たら人が集まっていた。

「あの、レイン・ノクスさんですよね.......?」

一年生の女子生徒、四人くらいが俺の周囲を囲んだ。全員の頬が少し赤い。

「そうですけど」

「先週の魔鳥の件、見ていました!! 本当にmすごかったです!!」

「大したことはしてないぞ」

「大したことしてないって——あれで!?」

「まあ、感知と流れを整えただけだからな」

「……あの、よかったら、今度一緒にお昼を——」

「あ、俺は昼は屋上で食べてるから......」

「一緒に行ってもいいですか?」

「……まあ、狭いがいいだろ」

「やった!! ありがとうございます!! すぐに行きます!!」

周りの三人も「私も!!」「私も行く!!」と言い出した。

エリクが隣で「お前、断れよ」と囁く。

「断る理由がないし、断ったらかわいそうじゃないか?」

「理由を作れ!!」

「なんでそんな.......」

「あの二人が怖いから!!」

「あの二人……?」

「後ろを見るな!! さりげなく、サッと見ろ!!」

俺はさりげなく後ろを見ると、廊下の端にセレフィーナとアイラが並んで立っている。

セレフィーナは微笑んでいた。何と美しい微笑みなのだろうか。しかし目が、笑っていない。

アイラは腕を組んでいた。これまた美しい笑顔だ。だがしかしこめかみに、うっすらと青筋が浮いている。

「……あ」

「気づくのが遅い!!」エリクが小声で叫んだ。

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昼休み、俺が屋上に来た時にはセレフィーナとアイラがすでにいた。

二人の間の空間が、妙に広い。

俺が来ると同時に、一年生が四人ついてきた。

「……来ちゃいました!!」

にこにこしていたセレフィーナの微笑みが、一ミリ単位で固まった。

アイラの眉が、一センチ単位で動く。

「あの......」一年生の一人が俺に近づいてきた。「隣に座っていいですか......?」

「あ、全然いいよ」

「やった!!」

「.....レイン」

セレフィーナが静かに呼ぶ。

「どうかしたか?」

「今日の弁当、こちらに座って食べませんか」

「あ、私の隣もいいよ!!」アイラが即座に言った。

「私が先に言いましたよね?」

「ほぼ同時だったもん!!」

「アイラさん......諦めの悪い女性は男性から受け入れられづらいのですよ」

「ぐっ......! でも、同時だった、!!」

一年生たちが「なんか……すごい空気……」とひそひそし出す。

エリクが屋上の隅で「最近俺.....胃薬を結構飲むようになったんだよね。何でだろう.......まあ、理由は明白か。今日もまた俺の胃が悲鳴を上げてるよ」といつものように嘆いていた。

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弁当を食べていると、今度は別の二年の女子生徒が来た。

「ノクスくん、先週の地脈修復の件でレポートを書きたくて——少し話を聞かせてもらえますか」

「あ、それなら全然いいよ」

「やった!! じゃあ今日の放課後、一緒に図書室で——」

「レイン」

アイラが俺の腕を掴む。

「放課後、一緒に演習場で特訓しようと思ってたんだけど」

「えー、俺別に特訓したいことないしな」

「私が教えてもらいたいの!!」

「剣術は俺より——」

「細かいことはいい!! とにかく放課後は私と一緒!!」

二年生が「え、あ、じゃあ別の日で——」と引き気味になる。

「いや、別にお前らが先でいいぞ。レポートならこっちの方が優だろ」

「レイン!!」

「アイラ.......そんなに腕を引っ張ると俺の服が伸びちゃうだろ」

「引っ張ってない!! 掴んでるだけ!!」

「……どう違うんだそれ」

「全然違うもん!!」

セレフィーナが「アイラさん、少し落ち着いてください」と横から口をさす。

「落ち着いてる!!」

「落ち着いてい」

「落ち着——」

「私も放課後、レインに確認したいことがあるので、あなたに予定を埋められると困るのですよ」

アイラの動きが時が止まったかのように固まる。

「セレフィーナも!?」

「別に悪いことではないでしょう?」

「なんで!!」

「冥境の門印の写本の続きについてですよ」

「……それは確かに大事だけど、大事なんだけど!! でもさー!!」

「でも?」

「……むぅぅぅ」

アイラがフグのように頬をぷくーっと膨らませて、明らかに不服であることを示してくる。

二年生が「また別の日にします……」と小声で言って、そっと去っていった。

あいも変わらず、俺らの被害者は「なんでこの鈍感男にはモテ期が来て、この超ハイスペ男子の俺にはモテ期が来ないんだー!!!」という悲痛な叫びを口から溢しているのであった。