作品タイトル不明
第091話 到着
俺達は海を見たり、本を読みながら海の旅を楽しんでいた。
そのまま数日間、船で生活していると、陸地が見えてくる。
「そろそろですかねー?」
本を読んでいるエルシィが顔を上げ、窓の方を見た。
「多分な。ウェンディ、町とかが見えるか?」
窓に張り付いているウェンディに聞く。
「小さな漁村が見えていますね。エルディアの町にあったような大型船ではなく、小型の漁船が並んでいます」
もうイパニーアに入っているな。
「となると、もうすぐか……今日中には着くな」
本屋で買った地図を見ながら頷く。
「何ていう町に着くんですか?」
「ペインっていう港町だ。そこまで大きい町ではないが、駅があり、そこから王都に行ける」
イパニーアの歩き方っていう雑誌にそう書いてある。
「じゃあ、次は列車旅ですね。王都を目指す感じで良いですか?」
というか、王都への直通便しかないっぽい。
まあ、王都にさえ行けば、どこでも行けるだろ。
どの国もだが、王都を中心に鉄道網が整備されていると思う。
「とりあえずな。王都は長居しない方が良いと思うし、適当に観光して別の町って感じかね?」
「ポードパターンですね」
そうなるな。
「その都度、ギルドなんかで情報集めだな。なあ、一応、確認するけど、イパニーアからの留学生っていたか?」
「いませんね。ニーナちゃんに……あとはランスからの留学生はいましたけど。先輩の学年は?」
「俺も一緒だ」
カルロがいたし、ランスからの留学生はいた。
ランスは同盟国なので留学生も数人いるのだ。
「まあ、留学生自体がそんなにいませんでしたしね」
「だな。イパニーアで知り合いに会うことはないだろう」
「だと思います」
ニーナには色々と案内してもらったし、至れり尽くせりだったけど、あんなことは滅多にないか。
俺達はいつでも出られるように片付けや準備をしながら到着を待つ。
そして、15時を過ぎたくらいに港町が見えてきた。
「あれだな」
町から内陸に向かって鉄道の線路が伸びているし、間違いないだろう。
「やっぱり漁船が多いですねー」
エルシィが言うように港には多くの漁船があり、ここからでも網を持った漁師の姿が見える。
「ニーナがイパニーアも魚介が名産って言ってたしな」
肉料理も名産らしいけど。
俺達がそのまま窓から眺めながら待っていると、港に到着した。
「降りるか」
「はい」
エルシィがウェンディを抱えたので立ち上がり、部屋を出る。
そして、タラップを降り、久しぶりの陸地に降り立った。
「おー、やっぱり久しぶりの大地は良いですね」
エルシィが言うように揺れていないし、確かな大地を感じる。
「さて、夕方までにはちょっと時間があるし、ギルドで宿屋の情報を仕入れるか。それで今日は休もう」
「そうしましょう。ちょっと待っててくださいね」
エルシィがそう言ってウェンディを渡してくる。
そして、近くにあった露店のおばちゃんのところに早足で向かった。
「ホント、フットワークが軽いな」
「良いことです」
まあな。
「――失礼」
ん?
声がしたので振り向くと、そこには黒髪の若い男性が立っており、こちらを見ていた。
男は姿勢が良く、すらっとしており、服は普通の町人のようだが、腰には剣があった。
「俺か?」
「はい。すみませんが、冒険者ギルドの場所をご存じないでしょうか?」
聞かれる方に回ったか。
「すまんが、俺はこの町の人間じゃない。でも、ちょっと待ってくれるか? 今、連れがちょうど冒険者ギルドの場所を聞きにいっているところだ……あ、戻ってきた」
エルシィがおばちゃんとの話を終え、戻ってくる。
「せんぱーい、聞いてきましたよー……ってどちら様?」
戻ってきたエルシィが男性に気付き、首を傾げた。
「冒険者ギルドの場所を知りたいんだと。わかったか?」
「ええ。あっちです」
エルシィが町の方を指差す。
「そういうわけだ。ついでだし、案内しよう」
男性に提案する。
「ありがとうございます」
男性が綺麗な礼をしたので一緒に町に向かって歩いていく。
「えーっと……旅人か何かか?」
無言で歩くのも気まずいので声をかけてみた。
「はい。そんなところです。御二人は船に乗ってこられたんですか? あ、私はフリオと言います」
「ああ。ターリーから来てな。俺はレスターでこっちがエルシィだ」
自己紹介されたのでこっちも自己紹介する。
「外国から来られたんですか。旅行か何かですか?」
「ああ。新婚旅行だな」
「それは良いですね。可愛らしい奥様で羨ましいです」
どうも……
「フリオはこの国の人間か?」
「ええ。王都の出身です」
王都の人間がなんでここにいるんだろう?
「王都はやはり大きいのか?」
「ええ。周辺諸国と比較しても引けを取りませんよ。それに有名なメインズ神殿とその周辺広場は一度訪れた方が良いと思います。朝から夜まで市が開かれており、色んなものが売っておりますし、飲食もできます」
それは旅行雑誌にも書いてあったな。
やはり現地の人間もおすすめのようだ。
「料理も美味いのか?」
「美味しいですよ。王都はここからそこまで離れていないので海産物も新鮮なまま届きます。それに畜産にも力を入れておりますので肉料理も豊富です。ぜひ楽しんでください」
へー……
「そうさせてもらうわ」
俺達はそのままエルシィの案内で歩いていき、剣が交差する看板がある冒険者ギルドまでやってきた。