作品タイトル不明
第086話 じめん無効
昼食を終えると、片付けをし、立ち上がる。
「じゃあ、行ってくるわ」
「ああ。採れるだけでいいが、20個もあれば十分だ」
20個ね。
「わかった」
俺達はこの場で別れ、森の中に入った。
そして、奥までは行かずに浅いところで赤い花が咲いている木を探す。
「木を探す魔法はないか?」
一応、ウェンディに聞いてみる。
「さすがにないです」
だろうな。
「花ねー……あるかな?」
「さあ? どうでしょうかね?」
「あっ! ありましたよ!」
エルシィが上を見上げながら指差す。
すると、数メートル上に赤い花が咲いていた。
「あ、ホントだ。しかし、高いな……」
想像以上に高い木で気付かなかった。
「エルシィさん、よく気付きましたね」
「基本、見上げる方だからね」
「あ、なるほど」
エルシィは小柄だからな。
「しかし、どうやって採ろう」
「落ちてもいませんよね?」
木の下を見てみるが何も落ちていない。
「エルシィ、木登りとかできるか?」
「できないこともないですけど、あの高さは無理ですね」
まあ、無理だわな。
「では、私が行ってきましょう」
浮いていたウェンディがふよふよと上昇していく。
「気を付けろよー」
「このくらいの高さなら大丈夫ですよ」
「心配だなぁ……」
俺達はちょっと不安になりながらウェンディを見上げる。
すると、ウェンディが花のところまで上昇した。
「うんしょっ、よいしょっ」
ウェンディが木の実を引っ張っているのが見える。
しかし、木の実はしっかりとくっついているようで取れそうにない。
「魔法で切れ」
人形ではちょっと無理だ。
エンジェルアタックもエンジェルパンチも弱かったし。
「そうしまーす」
ウェンディはミニカッターを使い、木の実を採る。
そして、両手で木の実を持ちながら降りてきた。
「これで1個です」
ウェンディが木の実を渡してくれる。
木の実は確かにニーナの店で買ったものと同じだった。
「よくやった。20個は採れそうか?」
「ちょっと少ないですね。ただ、上から見たらあっちの方にもありましたのでそれで余裕です。では、2個目を採ってきます」
ウェンディは左の方を指差して説明すると、ふよふよと上昇していく。
相変わらず、俊敏さはゼロだ。
「切ったら落とせばいいからなー。キャッチくらいはできるからー」
インドアの俺でもそれくらいはできる。
「わかりましたー」
ウェンディは上まで行くと、木の実を採取し、落とした。
なんか猿蟹合戦を思い出したが、ちゃんとキャッチし、木の実を回収する。
そして、10個を超えたあたりでゆっくりと降りてきた。
「お疲れ」
「ウェンディちゃん、頑張ったねー」
「これくらいなら楽勝です。私、大天使なんで」
うんうん。
木の実を採る天使なんか聞いたことないが、よくやったぞ。
「あっちだったか?」
さっきウェンディが指差していた左の方を指差す。
「はい。あの木です」
ウェンディが教えてくれるが、木が多すぎてわからない。
「案内してくれ」
「こっちです」
ウェンディがふよふよと浮きながら進んでいったのでエルシィと並んで歩いていく。
「森デートです」
「無人島デートじゃないか?」
それだと遭難したみたいだが。
「人がいっぱいいますけどね」
着いた時から海賊もどきがいたから無人島感がないんだよな。
「やっぱりデートは家――っ!」
急に足元の感触が消えた。
「――きゃっ!」
エルシィの声と共に視界が真っ暗になる。
何が起きたか把握できず、体が重力に引きずられる感覚に襲われた。
そして、嫌な浮遊感がした直後、ドスンと鈍い衝撃が背中を突き抜ける。
「痛っ!」
「痛いですぅ……」
真っ暗だが、地上には青い空が円形に見えている。
かなり深い穴に落ちたようだ。
幸い、柔らかいクッションのような土だったが、これが岩だったらぞっとする高さだ。
「エルシィ、大丈夫か?」
うっすらとだが、隣にエルシィがおり、尻餅をついているのが見える。
「大丈夫です……太ももをちょっと打った程度です」
大丈夫そうだな。
「なんかあったらすぐにエリクサーを飲めよ」
「はーい……」
「大丈夫ですかー?」
上からウェンディの声が聞こえてくると、思ったらウェンディがゆっくりと降りてきた。
「大丈夫だ。落とし穴か何かか?」
「落とし穴ではないと思いますね。単純に穴が空いていましたから井戸か何かじゃないですかね?」
古井戸か?
いや、ここって無人島じゃないのか?
実は昔は人が住んでいたとか……いや、そんなことはどうでもいい。
「高いな……」
「御二人はちょっと登れそうにないですね」
無理だ。
「ウェンディちゃん、運べる?」
「さすがに無理です。ちょっとカルロさんとニーナさんのところに行ってきます。軍の方々がいますので助けを呼んでもらいましょう」
それがいいな。
船だし、ロープならいくらでもあるはずだ。
「頼む」
「では」
ウェンディが浮上していく。
「待つか……本当にケガはないか? こういうのは興奮してケガに気付かないこともある」
アドレナリンがどうのこうの。
「大丈夫です。それよりも先輩、あれ……」
「ん?」
エルシィが横の方を指差したのだが、なんかちょっと先に四角い光の線が見える。
「何だ、あれ?」
「さあ? ここ、井戸じゃなくないですかね?」
枯れているだけかもしれないが、水もないしな……
「ちょっと行ってみよう」
「足元に注意ですよ」
「わかってるよ」
俺達は立ち上がると、慎重に歩いていった。