作品タイトル不明
第070話 木材加工(錬金術)
新しくエアカッターを覚えた俺達は倒れた木のもとに向かう。
「まずは枝打ちか」
このままではただの倒木だ。
「そうなりますね」
「それもエアカッターか?」
「さすがにそれは危ないと思いますよ。過剰ですし、別の魔法を使いますか? 枝を切るならフレイムソードやアイスソードなんかありますよ」
ふむ……それらにも興味があるが、結局は剣で枝を切っていくようなものだ。
体力もないし、剣を握ったことがない俺達錬金術師には重労働のように思える。
「ちょっと待て。エアカッターを改良すればいい」
枝を持つと、人差し指で枝の根元に触れる。
そして、さっきよりもかなり魔力を落として、エアカッターを使うと、特に音も出ずに簡単に枝を切り離すことができた。
「なるほど。威力を落とせば簡単なエアカッターができるんですね」
「さすが先輩! ミニカッターと名付けましょう!」
エルシィの名付けセンスはスルーするが、これなら疲れないだろう。
「やってみ?」
「「はーい」」
後輩2人は同じように枝を持ち、人差し指を枝の根元に当てる。
そして、ちょっとだけ魔力を込めると、簡単に枝を切ってみせた。
「これは楽だね」
「だねー」
魔法って便利だわ。
「あなた方は本当にすごいですね。錬金術師は魔術師にもなれるんでしょうかね?」
「魔力コントロールが得意だからこういう応用が得意なだけだ。純粋な魔法の撃ち合いなら手数が多く、魔力の高い魔術師には勝てない」
「レスターさんの場合はそれも凌駕してそうですけどね。とにかく、これで枝は簡単に落とせそうです。じゃんじゃん落としてください。私もお手伝いしますので」
ウェンディはそう言うと、地面に落ちている枝を拾い、一生懸命、森に運んでいく。
そして、森の中にぽいっと捨てた。
「じゃあ、やるか」
「そうですね」
「頑張りましょー」
俺達はどんどんと枝を落としていく。
そして、枝をすべて落とし、落とした枝を森に捨てると、綺麗な1本の丸太ができあがった。
「これが7万ゼルか?」
ニーナに確認する。
「そうなりますね。ここから皮を剥ぎ、乾燥させれば10万ゼルくらいにはなります。さらに加工して、防腐処理をすれば20万ゼルですね。いえ、もっといくかもしれません。おじさんは多分、低く見積もっていると思うので」
ふむふむ。
いくらになるか楽しみだな。
「じゃあ、皮剥ぎか……同じようにやればいいな」
「そうですね。手分けしてやりましょう」
俺達は3人で手分けをし、ミニカッターで皮を剝いでいく。
ウェンディも手伝ってくれ、剥いだ皮を森に持って行ってくれた。
そして、すべての皮を剥ぎ終えると、綺麗なベージュ色の落ち着いた木材の色が出てきた。
「やっぱり硬いな」
軽くノックをするみたいに叩くと、確かな感触が手に残る。
「曲げにも強いので船としては最適なんですよ」
良い木なんだな。
これで家具とかを作っても良さそうだ。
「ウェンディ、乾燥は?」
「攻撃魔法じゃない方ですよね?」
「ああ、それで頼む」
なんか怖いわ。
「でしたら簡単です。中の水分を抜けばいいんですからね。水魔法は大気中の水蒸気を集める魔法です。それをこの丸太に使えばいいんですよ」
なるほど。
それならすぐにできそうだ。
「あ、レスター先輩、水分を抜きすぎないようにお願いしますね。ちょっとは残してください」
魔法を使おうと思い、丸太に触れた俺をニーナが止めてくる。
「それもそうだな。調整する」
すべての水分を抜かないように調整しながら水魔法を使う。
すると、丸太の上空にかなりの大きさの水球が浮かんだ。
軽く見積もっても数百リットルはありそうだ。
「こんなに水が入っているんですね」
「すごいわね」
2人が呆然と水球を見つめる。
「木だからな」
俺は水球を動かし、森の方で地面に下ろした。
「お見事です。では、次ですね」
「そうなるな。ニーナ、加工だが、どうすればいいんだ?」
「あ、ちょっと待ってくださいね」
ニーナは持っているカバンから紙束を取り出した。
「何だそれ?」
「おじさんから借りてきた船の部材の注文票です。えーっとですね。この丸太の大きさですとこれと……あ、余った分でこれもできるかな? この2枚が良いんじゃないでしょうか?」
ニーナが見せてきた2枚の注文票は絵と共に木材の寸法や角度なんかが書いてある設計図だった。
1枚目は斜めに反った大きめの板であり、もう1枚は1枚目の半分くらいの大きさの板だ。
ただ1枚目の方が形がちょっと複雑だった。
「これに書いてある通りに加工すればいいのか?」
「はい。手分けをしてやりましょう」
それなら早いか。
「じゃあ、半分にカットするからこっちの小さい方をお前とエルシィでやってくれ。多分、2枚くらい作れるだろ」
2枚目の注文票を指差す。
「そうしましょう」
「はーい」
2人が頷いたのでエアカッターとミニカッターの中間くらいのミドルカッターで丸太を縦に割るように切った。
すると、エルシィが切った丸太の片方をさらに横に切り、2つにする。
「じゃあ、やるか。ミスするなよ」
「わかってますよー」
俺達はそれぞれの木材に触れる。
「あのー、加工ってどうやるんですか? 火で炙ります?」
ウェンディが聞いてくる。
「そんな時間のかかることはしない。ここまでになればあとは錬金術でどうとでもなる」
「なるんですか? なるんですね……」
俺達は丸太を錬成し、一瞬にして設計図通りの木材の形に加工した。
「錬金術の錬成には合成、化合、分解、変化などのいくつかの手法がある。これは変化だな。物質の性質自体は変えていないが、形を変化させるものだ。容量が大きいとかなりの魔力を使うが、これくらいならできる」
「すごいですね……錬金術師が職に困ることはないし、儲かるというのも頷けます」
俺もすごいと思う。
「簡単にできるって言えるのは先輩だけですけどね」
「この大きさだと、魔力をかなり使っちゃいましたよ」
「ねー。疲れた」
「うん。疲れた」
そうは言うが、お前らもちゃんと作れているだろ。
「あとはこれに防腐剤とオイルだな」
「これも錬金術ですか?」
「塗るだけだが……まあ、そっちの方が早いな。エルシィとニーナは少し休んでろ。俺がやっておく」
魔力消費が激しそうだ。
「じゃあ、採取でもしようかな。良い薬草や毒消し草が採れるんだよ」
「あ、私もやるー」
2人は森の方に歩いていく。
「元気ですね……」
「ウェンディ、魔物が来ないか見張ってやってくれ」
「わかりました」
ウェンディもふよふよと飛びながら2人のあとを追う。
「さて、やるか」
1人でさみしいなと思わないでもないが、これも仕事だと思い、作業に入った。